
2016年に活動を開始したカリフォルニアのスクリーモ/エモ・バイオレンス4人組。Open Mind / Saturated Brainによるインタビューを参照すると、バンド名のNuvolascuraはイタリア語で”暗い雲”を意味。これまでに3枚のフルアルバムをリリース。
本記事は2025年7月にリリースされた3rdアルバム『How This All Ends』について書いています。
作品紹介
How This All Ends(2025)

3rdアルバム。全10曲約23分収録。覚悟を問う音。それを一番に感じました。息もつかせぬギターリフの応酬、変則的な展開、Erica Schultzの全身全霊という言葉が似つかわしい叫び。1曲平均して100秒前後という短さの中で電光石火とタメの急加減速、それに目まぐるしく抑揚をつけており、(リアル)スクリーモとマスコアがタッグを組んだかのようなスタイルで熱量高く迫ってきます。
その鮮烈さを出足の#1「if portals were linear; you’ll die soon enough」から示し、#6「cordiform projection」ではConvergeを思わせるパートもある。クリーン・ヴォーカルを取り入れた#4「figment of reality」、不穏なノイズ・パートが2分前後続く#5「if it all」など過去作からの変化はありますが、全体を通してエネルギーや勢いは維持。10曲23分の中に必然だけが詰まっている印象すらあります。
またIDIOTEQの記事によると、#2「and in the end, we threw it all away」はEricaが乳がんの診断から回復後にもつきまとう不安や恐怖をつづったものだという。3LAさんリリースの国内盤は歌詞対訳付きですが、激しい音楽に感情を委託する部分はあっても、自己と世界を見つめることから書き記された言葉は痛いほどに重い。
#3「why we never returned to the moon」の最後の一節は、”too hard to live in a world where torture is entertainment(苦悩を娯楽とする世界は辛すぎる)”は特に印象的。Tortureが”拷問”という意味を持つことを考えると、自分自身と世界情勢の両面を捉えたダブルミーニングなのかなと深読みもできる(“拷問を娯楽にする世界は辛すぎる”となるので)。現在のところBandcampにてFree Palestineの一文を入れていますし、バンドのスタンスは伺えます。
そしてラストを飾る6分超の#10「polar destinies」。環境活動家であるジュディー・バリやダリル・チャーニーの関連作品(主にはこの作品とYouTubeに記載あり)に影響を受けた歌詞を基に、大きな起伏を持つ同曲もまた強いメッセージが込められています。見過ごせない状況になっていく世界に対し、有効な手立てはおそらくない。ただ、Nuvolascuraの音楽には行動を促す熱がある。
