2014/04/14 いいにおいのするAlcest JAPAN TOUR 2014 with Vampillia @ 名古屋池下CLUB UPSET

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ポストブラックメタルの旗手として世界に大きな潮流を起こしたAlcest(アルセスト)。彼等が完全にシューゲイザー/ポストロックに振り切った4thアルバム『Shelter』を引っ提げて、約1年半ぶりに来日した。今回も関西のブルータル・オーケストラのVampilliaと共に全国を駆け廻り、アコースティックでお届けする寺公演を含む7公演が予定されている。名古屋の前日の東京公演では、この2組に加えて日本のポストハードコアの重鎮であるenvyも出演し、各々が強烈な個性をぶつけ合った。

そんな中、心配されるのは名古屋とかいう辺境地の客入りであるし、同会場で行われたDeafheavenやTorcheの惨劇は決して繰り返してはいけない(苦笑)。ただ、今日もBorisやEarth、Deafheavenがライヴしてた時みたいにフロアはかなり狭くなっていた。とはいえ、パッと見た印象でしかないけど、Deafheavenの時の3~4倍ぐらい人が入ってて驚き。いつもはどこに隠れているんだ(苦笑)。自分は最前で見ていたんだけれども、”振り返れば人がいる(客入り良さそうと思えるぐらいに)”の状態ではあった。だからか翌月に行われるAlcest友人のDeafheavenくんのライヴ集客にも少し希望が持てた気がする。ちなみに会場内のBGMは、先日に発売されたばかりのVampilliaのプレデビュー盤となる『the divine move』が延々と流れていた。

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個人的にはThee Oh Seesとのツアー以来、約1年ぶりに見るVampilliaが先行。20分押しで出てきたと思ったら、ベースの人が「どうも~ミッチーで~す。今から『the divine move』の中で一番気に入ってる曲やりまーす!」と元気よく宣言。しかしながら、SIAM SHADEの『1/3の純情な感情(2011のさいたまスーパーアリーナ LIVE Version)』をiPhoneで流し、口パクで振りだけやるというアホなスタートに会場は笑いに包まれる。でも、おい、ちゃんと「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ」もやれや(笑)。

そこからはライヴでの割と定番化した流れへ。まずはヴァイオリンとピアノを基調としたクラシカルな趣が強い”静のVampillia”が生まれ、徐々にギターやドラム等が顔を出しながら”動のVampillia”へと変遷していく。10分を過ぎた辺りで、毛むくじゃらの衣装をまとってフロアからステージに進出した、きこりヴォーカルが出てきてからは、一層混沌とする場内。今宵は7人体制でドラムは竜巻太郎氏のみとはいえ、美しさやポップネスを奏で、それとは正反対の騒々しさやメタリックな音圧を振り回しながら特有のサウンドを会場に轟かせている。音楽的には多種多様なジャンルが煮込まれたアヴァンギャルドな形とはいえ、ここまで情報量を込めて色彩豊かに表現できるのは、そうそういないわけで。中盤ぐらいにやったと思う「Circle」はライヴで何度か聴いているにしろ(多分)、やっぱり強烈であるなあと実感。

140414_6 その上であの悪ふざけとユーモアが加わってやりたい放題に暴れ倒すVampilliaらしさは健在である。タブーなきバンド故のおもしろさというところか。きこりヴォーカルは、ステージとフロアを何度も行ったり来たり、最前の柵に足掛けてアピールしたり、コインロッカーの上に昇り出すなど、会場全体をステージと見立ててとにかく目立って見せる。終盤では、コラボ曲だからやらないと勝手に思っていた彼等の代表曲「endless summer」を披露。冷涼としたピアノの音色から激と美を伴って展開されていくこの曲、語りの部分でアドリブ入れてて「小さい頃のコンプレックスが天然パーマで、おかしな髪型にならないために小学校6年間帽子を被って寝てました」と完全に笑いの方向に持っていくという(笑)。そりゃあ「雨の日は学校を休みました」とか言われるとさすがに堪えられなくて笑ってしまった。でも、こんな事を言ってるとPTAから”子どもに聴かせたくない音楽”に認定されてしまうかもしれないな(苦笑)。

140414_7「endless summer」終了後には、メンバーが一旦はけていき、ミッチー氏がひとりステージに残されている形。またここで恒例のおふざけMCが入る。「あんな曲で終わるつもりは無い。アンコールが欲しいなぁ(ボソリ)」と強制アンコールを起こし、いよいよラスト曲へ。初めて聴いたと思う、ポストロック調のエピックで壮大な楽曲が会場を包み、クライマックスはやっぱりビッグバンのように爆発して終了した。約40分ほどだったけど、しっちゃかめっちゃか騒いで、フロア全体を熱くする彼等らしいステージを十分に堪能することができた。すぐさま「こっちで売ってるぜぇ」みたいなことを言って、ステージを下りて物販の売り場に立つミッチー氏はさすがだった。


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そして、みなのお待ちかねのAlcestの登場である。最新作『Shelter』の冒頭を飾る神聖なコーラスと共に幻想的な世界へと連れていかれるインスト「Wings」に乗せて、ステージを覆っていた幕が開かれると、続くように『Opale』でライヴはスタート。甘美なシューゲイズ、独特のロマンチシズムに磨きをかけたそのサウンドに早くも酔いしれることになる。続く3rdアルバムからの「Summer’s Glory」でも郷愁を誘う様な美しい旋律の数々が胸を打つ。途中では手拍子までも巻き起こったが、会場もこうしてAlcestの音を浴びれる事を待ちわびていたのだと実感する。

140414_17 思えば前回の来日時は、3rdアルバム『Les Voyages De L’ame』発売に伴ったものとはいえ、1st~3rdから代表曲を満遍なく選出したライヴだった。しかしながら、今回は完全に4thアルバム『Shelter』を主役に据えたものとなっており、半数をそこから選出。完全にシューゲイザー/ポストロックへと舵を切った作品として、現在でも賛否両論を巻き起こしているが、個人的には武器であるメロウさに拍車がかかってるように感じ、Anathemaにも似た”光”の要素が強くなっていてアリであった。その上でしっかりとロックバンドっぽい強度やシューゲイザーの恍惚感が、ライヴでしっかりと反映されている点は良かったと思う。「Voix Sereine」の美しさ、「Shelter」の温かさはスタジオ音源以上に胸に響くものがあった。

ちなみにNeigeの格好を見てみると、GrimesのTシャツ(サマソニにも出演経験あるカナダの宅録インディ女子)とジーンズにコンバースっ ぽいス ニーカーというブラックな方とはかけ離れたラフな装い。もはやインディーロックを目指す彼にとって、これが仕様になっているのかもしれない。ただ、個人的には衣装は黒で統一して欲しかっところ、「世界観が崩れる~」的な事を考えるとね。ただ、Neigeのこなれてきた「アリガトウゴザイマス」を聴くと、そんな些細な事はどうでもいいなあと許したくなってくる不思議。

意外なところでは、「Là Où Naissent Les Couleurs Nouvelles」や「Sur L’Ocean Couleur de Fer」が披露されたことか。前者で言えば、ノスタルジックな音像を育みながらも光と闇、天使と悪魔が見え隠れしてブラックメタルな絶叫も入ってくる。定番の「Percees de lumiere」以外でこういったブラック要素が濃く出た曲(はっきりいえば、絶叫なんだけど)はやらないと思ってたから意外だった。後者は2ndアルバムの最終曲を飾るものだが、美麗なツインギター&ツインヴォーカルが、月光に淡く照らされた夜のような感傷的なムードを生みだしていて、十分にハまっていた。全体を通してのアクセントとしても、この曲は機能していたように感じる。

140414_15 そして、ライヴはいよいよ最終局面へと向かう。そのイントロが鳴り響くと、この日1番といえる歓声が巻き起こった「Percees de lumiere」は、再び鼓膜が切れるような絶叫がイケナイ感情を呼び覚まし、多くの人がヘドバンや手を振り上げたりしていて大いに沸いていた。実際にライヴで一番の盛り上がりをみせたのはここだろう。そして、Neige「今日の最後の曲だ」→ 客「NO!NO!」なんてやり取りも挟み、1stアルバムからの大名曲「Souvenirs d’un autre monde」を演奏。メランコリックな旋律と轟音シューゲイズを浴びて、夢見心地の気分へ。あまりにも感動的に本編は締めくくられたのであった。

アンコールは『Shelter』という光の物語の完結の意味合いを持つだろう「Delivrance」。天上へと帰っていく様な幻想的なサウンドに揺られつつ、最後にはポスト系音楽の様式美と化しているノイズとの戯れもNeigeは忠実に再現し、幕を閉じたのであった。まさしくAlcestが奏でる楽園、別天地、そう表現したくなるような約80分の見事なライヴであった。


‐‐‐setlist‐‐‐
‐Wings‐
01.Opale
02.Summer’s Glory
03.L’Eveil Des Muses
04.Là Où Naissent Les Couleurs Nouvelles
05.Voix Sereines
06.Shelter
07.Autre Temps
08.Sur L’Ocean Couleur de Fer
09.Percees de lumiere
10.Souvenirs d’un autre monde

–encore–
11.Delivrance

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物販購入物。Tシャツはこの1種類のみで、他に大きなフラッグが販売されていた。また、CDはもちろんのこと、1枚3000円だったけどLPも充実していて1st~4thまで販売していたと思う(いずれもColor Vinylらしい)。終演後には、Alcestメンバーによる交流会もあり、CDやLP等へのサインや写真にも気軽に応じていて、神秘のフェアリー・ランドを目指すよりも、ファンとの距離を大事にするメンバーの姿がそこにはあった。

ちなみにわたくしは、4/18に行われる京都の法然院のスペシャル・セットを見に行く予定でいます。

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