MONO、envy、downyの3バンドを中心に新しいフェスティバル「After Hours」が立ち上がりました。昨年にもプレ的な形で開催されてましたが、本格開催は今年からとなります。スキのないぐらいに徹底されたメンツを呼び、タイムテーブルが被りまくろうが、アーティスト主導でフェスの意志を明確に提示。ちょっと違うけれども「leave them all behind」というイベントが立ち上がった時の興奮が蘇りました。出演バンドは似ているし。
まさかAlcestの名古屋公演と被ると思ってませんでしたが、チケットを先に買っていたこともあるし、これからの期待を込めてAfter Hoursに足を運びました。
タイムテーブルはこんな感じ。主催が上手くバラけさせようとするも、どうしても被ってくる悩ましいもの。自分は黄色枠で囲ったところを予定してましたが、無事にフルで観ることができました。
すぐに入場規制になってしまうことが多かったので(特にO-NEST)、「はい、入場規制、入場規制・・・涙」みたいなことにならなかったので、上手く立ち回れたなあとは思います。以下から見たアーティストの感想を書き連ねます。
ROTH BART BARON
あえてMONOではなく、観たかったROTH BART BARONにトップバッターを託しました。どこかでライヴを見なければと思っていましたが、こういうフェスで体験してこそ映えるアーティストなんじゃないかなと感じまして。ステージにはメンバー2人にサポートを加えた3名が位置取り。音源でも聴いたように郷愁を運ぶ牧歌的なメロディとそよぐファルセットが心地よい。といってもかなりエモーショナルな熱が伝わってきたし、老若男女を巻き込める楽曲なのは魅力。春だからといい演奏を始めた「春と灰」ではしんみりとするように響き、「電気の花嫁」では彼等の力強さが浮かび上がります。最後の曲が終わった後には、三船さんがマイクを客席に向けて一緒にコーラスを促し、会場全体がひとつになって歌う。それはまるでAfter Hoursという宴を歓迎するかのようでした。
heaven in her arms
「先輩から大切なステージをもらいましたが、僕らは僕らの世代で勝負していかなきゃいけない」と途中のMCで力強く語ったKentさん。僕自身、実に6年ぶり(CELESTEとのツアー以来)にみるhihaです。セットは全て新作『白暈』からで、このAfter Hours ’17のステージから新たなスタートを切るというのもあったかもしれません。MV公開中の「月虹と深潭」を皮切りに、「幻夢」以外の6曲を披露。過去曲はいろいろ聴きたかったのですが、その潔さに彼等の決意を感じます。新作ではブラックメタル寄りの激化をしつつ、アルペジオが主として紡ぐ儚さが際立っていました。ライヴではアグレッシヴさの方が勝っていましたが、長尺でありながらも加速する激と物悲しい叙情の起伏は、人々の心を突き動かします。ラストに演奏した「終焉の眩しさ」の後半に激流のごとく溢れ出すエモーションはたまらなかった。
‐‐‐setlist‐‐‐
01.光芒の明時~月虹と深潭
02.枷~円環を綯う
03.赦された投身
04.終焉の眩しさ
STORM OF VOID
downyを15分ほど覗きに行ったりもしましたが、戻ってきて彼等です。envy、Turtle Island、FC FIVEの面々を要する3人組。音源を聴いていても鼓膜を蹂躙するかのような極太重音が進軍してきますが、実際に体感するとイカツさが違う。増強剤でさらに固く太く音で、5ive辺りを彷彿させるゴリゴリマッシヴ感があります。そして、その音に拍車をかけるように迫力のあるメンバーの体格(弦楽器2人が無差別級)。ヘヴィロックの異型という印象が余計に強まりましたね。後半はゲスト・ヴォーカルが2人入ってましたが、それよりも3人のアンサンブルでどこまでも岩石を頭上に降らせて追い詰めていく感じが凄まじい。ラストの「Silent Eyes」ではエグいギターリフに触発されたかのようにモッシュでGO!した輩も。1stアルバム制作中とのことで期待値がグーンと上がるステージを体験できて嬉しく思います。
tricot
サブステージでRay Yamadaさんがゆらゆら揺らすように歌声を届けた後に、tricotのみなさま登場。「downyのロビンさんから電話をもらって出演させてもらってます。ロビンさんが顔で選んでないってわかってもらえるようにがんばります」とか仰ってましたが、バッチリと伝わりましたよ。変拍子旅行とツアータイトルにつけたこともあるぐらいにひねり入れてるけど、ノリやすさや熱も十二分に伝えてくれる。何よりもラインナップに足りなかった女性的な彩り、ロックバンドとしての彩り、メジャー・バンドとしての彩りを彼女たちなりに加算してましたね。初っ端の「E」や定番の「99.974℃」などカッコ良かったのであります。終盤は客席に乗りだしてメンバーがダイブしていた(笑)。以前から海外を飛び回り、今年のArcTanGentにも出演する精鋭の力をみせてもらいましたよ。5月に出るというとんでもなくカッコイイアルバム(本人談)を是非ともチェックしたいところ。
THE NOVEMBERS
Borisとのツアーで共演していた時以来、2年半ぶりに観ました。『Rhapsody in beauty』、『Hallelujah』と直近2作でガッチリとハートを掴まれましたが、この日はロックンロール寄りの攻めのノベンバだったでしょうか。ダウナーで内省に響く「永遠の複製」から冒頭のベースリフから引っ張られる「1000年」で一気にギアが上がる。前のめりな疾走感と凝縮した塊をぶつけるようなシャウト。それでいてどの曲にも自身の美学がピシッと筋を通してある。妙に哀感と艶やかさを持った歌を聴かせるミドルテンポの「愛はなけなし」も演奏。ただ、全体的通してアグレッシヴなプレイで会場を鼓舞していたのが印象的です。downyを思わせる妖しい蠢きをみせる「鉄の夢」はかっこ良かったし、ラストの「黒い虹」も痛快。「楽しい夜を!」という言葉を残してはけていきましたが、どんどんと風格が出て頼もしいバンドになっているのを実感するのでありました。
envy
1番のお目当ては彼等でした。すし詰め状態になるぐらいの入場規制だから他の方々もそうだったのでしょう。去年の4月1日にあんなことが起こり、どうなるのかわからないまま行方不明になっていたenvy。昨年に続いて今年もゲスト・ヴォーカルを迎えて楽曲を披露する形はそのままでした。hihaからレンタル制度でもあるのか(2年前はドラマーも借りてたし)最初の2曲ではkentさん、後半はkamomekamomeの向さん。そして、驚くことに新曲ではバンドの音頭を取るギタリスト・河合さんが歌うという選択を取っています。そういえばメンバーの立ち位置がそれぞれ変わっていて、上手と下手の面々が入れ替わり。それも新鮮でしたね。
現時点での最新作からの「彼方の足音」からライヴ・スタート。ギター、ベース、ドラム、いずれもenvyの変わらないサウンドですぐにこみ上げてくるものがありました。1年半前の「leave them all behind 2015」ぶりに彼等を見たのですが、変わるものと変わらないものを受け止めるようにライヴを自分自身は消化したかな。河合さんがヴォーカル(ヴォコーダーっぽいので声加工してたり、叫んだり)を取った曲では、光や別れをテーマにしているそうで、今までと違ったバンドの持つ温かさや優しさを表現。何よりenvyが「これから」をみせてくれたことが嬉しい。そして、ラスボスのように登場した向さんを迎えての「暖かい部屋」では、曲の持つ包容力に後押しされるように感動が増幅。しかも向さんがアウトロで感極まって泣いていたし。最後は昔の仲間と昔の曲を演奏すると話し、「さよなら言葉」で大団円。また走り始めたんだなあと、それが感じ取れたのが何よりも良かったです。
‐‐‐setlist‐‐‐
01.彼方の足音 with kent(heaven in her arms)
02.左手 with kent(heaven in her arms)
03.光(新曲)
04.新曲(別れをテーマにした曲)
05.暖かい部屋 with 向達郎(kamomekamome)
06.さよなら言葉 with 向達郎(kamomekamome)
Boris
L’Arc~en~Cielと同期の25週年、BorisがO-WESTのトリを飾ります。このフェスに来てる人達ってこういうのが1番喜ぶんじゃない?と考えたかどうかは知りませんが、地響き眼球ゆらゆら系ドローンでデトックスでございます。大量スモークとレーザーのような照明が視界に茶々入れ、轟音が全神経を麻痺させるほどに響く。昨年に観た『PINK』ツアーとはまるっきりモードが違っていて、25周年はこういう感じでいくのかと思わせたもの。しかも今回はノイズE難度の新技、アコーディオンWataを披露。ただ、アコーディオンの音もよくわからん音になってましたが・・・。本編ラストはおなじみの「決別」で陶酔。アンコールでもモードを切り替えることなく、そのままの鬼ドローンで「Vomitself」が人々を発狂させる。外人カップル(特に女)が奇声を何度も上げ続けるほどに強烈で、After Hours 17の締めに相応しいステージを披露してくれました。
O-EASTのトリを務めたtoeは、「グッドバイ」にて土岐麻子さんがゲストで歌ったと終了後に見た。う、うらやましい(かつてのフジロックで観たんだから!と強がろうw)。
ある人にとってはオールスター感謝祭だし、ある人にとっては意識高い系だし、ある人にとっては全く知らない人達の出るフェスだし、って感じにはなると思いますがこんなフェスティバルが1年に1回あったら嬉しいじゃないですか。第1回の時点で呼べるところは呼んだ感もありますが、今後も拡大しながら続いていって欲しいと願っています。リストバンドが紙製で、雨降ってこともあってボロボロだけども良い思い出。