マサチューセッツ出身のインストゥルメンタル・ポストメタル2人組。ギター、ドラムという編成のみで漆黒のスラッジメタル系インストを轟かせている稀有なバンドです。
主に00年代に活躍し、3枚目のフルアルバム『Hesperus』から13年ほどはリリースがありません。とはいえ、残した3枚のフルアルバムと2枚のEPにおける重音は他の追随を許さないレベル。そこにサイケデリックの要素を加算。
作品によってはISIS (the Band)のJeff Caxide が加勢しており、最少人数で脳が強烈に歪むようなサウンドを生み出しています。ちなみにイギリスのアイドル・グループとは全く関係なしです。
以下、残した5作品ついて書いています。重い音楽が聴きたいとなったら、推奨したい存在です。
アルバム紹介
5ive (2000)
マサチューセッツのヘヴィ・インストデュオ、5iveの1stアルバム。ISIS(the Band)のベーシスト、Jeff Caxideが参加しています。初作はスラッジメタル一本勝負という形で、黒い大河が氾濫。
というのもメロディをほぼ放棄していて、まるで媚びる部分がない。岩石をも粉砕する激重リフによる威圧的な仕様。地を捲りあげ、そのまま宇宙まで吹き飛ばすハイパーな音塊があまりにも強烈です。
この頃から2人でやってるなんてにわかに信じがたいもので、Electric Wizardと並ぼうとせんヘヴィさを誇ります。静パートも少々で、歪みまくりのファズ・ギターがずっと空間を圧縮・充満している感じ。
本作以降は、ポストロック/ポストメタル/スペース・ロック的な要素が少しずつ注入されていきますが、ストイックに激ヘヴィ・激スラッジで戦う姿勢が本作ではとにかく印象的。戦術・メッシ、戦術・レブロンジェームズばりの命綱であり、潔さがあります。
執拗に反復されるリフで圧殺される9分超の#1「Burning Season」、小鳥のさえずりに癒されたのもの如き音圧で脳髄をかち割る#2「Orange」サイケ/ドゥーム色が追加された#4「Jules Vernes’ Dream」と並ぶ。
そして、空間が軋むほどのド迫力の音圧が11分にも及んで繰り広げられるラスト#6「Cerrado」で締めくくり、言葉を失うほどの脅威の音があなたを崩壊へと導く。ヘヴィ決定盤。
Telestic Disfracture (2001)
2ndアルバム。6曲1時間8分と長尺になったのは、17分にも及ぶ#3「Shark Dreams」、並びに3トラックに分かれているものの組曲といっていい#4~#6「Synapse X 3」という33分の曲を収録しているからです。
ヴォーカルトラックの収録(#1、#2)。曲のさらなる長尺化。スペーシー&サイケデリック要素の大幅増量、静パートの効果的導入。前作と比べて、かなりテコ入れされてます。
だからといって聴きやすくはなっておらず、尻込みするほどの重音仕様。ギターは悪く歪み、ドラムはやたらと硬質な響きの基で曲は組み立てられています。声は楽器的な用い方ですが、呪術的でラりってる印象が強い。
長尺曲は、いずれもスラッジメタル+サイケデリック+ジャムのような成り立ちで、反復と展開を擁しながら延々と宇宙へと進行を続けます。
イタリアのUfomammutよりも早くスラッジメタルとHawkwindの配合的な音と構成を取り入れていたのかと思うと驚きがあります。常軌を逸した重さがあり、狂わされていく三半規管があり、この世から解脱する音楽が表現されているわけです。
本作の経験があってこその次作のポストメタル重要曲「The Hemophiliac Dream part 1」に連なっていきます。1stと比べても随分と踏み込み、実験的な装いもありますが、危険な沼地であることには間違いありません。
The Hemophiliac Dream (2002)
“5ive’s Continuum Research Project”としてリリースされた2曲入りEP。再び ISIS(the Band)のベーシスト、Jeff Caxide が参加。5ive史上屈指のぶっ飛べる作品でして、約23分と14分の2曲を携えた本作では圧倒的な轟音と共に宇宙を拝めます。
序曲「The Hemophiliac Dream part 1」ではUFOmammutのように宇宙と交信するような電子音を飛ばしながら徐々に音圧を上げ、7分を超えるとようやくスラッジ大津波の第一陣に飲み込まれる。まさしく”モグワイ ミーツ スラッジメタル”の大爆撃。
5iveらしい激重リフの応酬と重いリズムが呼応して出来上がるヘヴィな音の激流は、他の追随を許しません。再びの静寂を取り戻して意識が我に返ったかと思うと再び襲いかかる激しい轟音とグルーヴに全身が痺れる。気づけば口あんぐりの放心状態・・・。もはや5iveのピークとも思えるぐらいの秀曲を作り上げてしまいました。
さらに「The Hemophiliac Dream Part 2」では電子音メインにリミックスされたサウンドで巧妙に昂揚感を煽ってきます。
このリミックスの首謀者はどうやらJames Plotkinらしく、静かな電子音のエフェクトが神経の一本一本を驚くほど刺激してきますが、極端に歪んだ轟音が8分過ぎから噴出して悶絶。そのままスペーシーな音響と共に宇宙の彼方へと散っていく様には感慨深ささえあります。
極めて強い衝撃と中毒性と恍惚感を持ったEP。未知のトリップ感をあなたに。
Versus(2006)
のっけから我が総帥Justin K. Broadrickのリミックスから始まり震撼を告げる4曲入りEP。内訳は新曲が2曲(#2「Reso-1」、#3「Soma」)にジャスティンが「Soma」を2曲リミックス。
新曲群に耳を傾ければ稲妻を思わせる轟音が幾度となく猛威を震う凄まじさ。2人という最小精鋭(ギター+ドラム)でありながらあまりにも完璧な重低音がキまり、豪快に地底を揺らし、空間を歪ませていきます。
時には叙情性、時にドラッギーなギターを効果的に挟みながら、彼等のスラッジ/ポストメタルは威力を増して、聴き手の昂揚感と恍惚感を肥大化。ミニアルバムとはいえ、この威力は半端ない。
ひたすら天空まで重低音が上昇していく#2のかっこよさに悶絶し、ジャスティン先生が激烈な轟音が火を噴く#3を原曲の重さを損なわぬまま、浮遊感溢れるエレクトロニクス紀行へと変貌させた#4も凄まじい限り。このコラボレーションはまさに鬼に金棒。
ド迫力の音の壁だけでなく、眠る潜在能力がカリスマの手によって見事に引き出されたことを証明した作品です。
Hesperus (2008)
2枚のEPを挟んで7年ぶりとなる3枚目のフルアルバム。ゲストなしの完全デュオ編成で制作されたようです。引きずるようなギターの音色から、ドラムの合図で一気に爆音をぶちかます#1「Gulls」でひとまずの挨拶は終了。ひたすらに反復しながら過剰供給されていく音に絞め殺されそうです。
本作は完全インストゥルメンタル。また、楽曲自体はややコンパクトになっています。ただ、ラストの組曲#6~#7「News」は20分に及び、譲れないところは譲ってない。
スラッジメタルからの影響が色濃い重さがある中で、本作はBPMが少し速くなっているところがポイント。以前のねちっこい反復というよりは、少しスポーティな感触を持つようになっています。ただ、バンドの持つ重さがあるので、武蔵丸が早歩きでどすこいしてくるようでありますが。
一方でポストロック的な静寂パートの美しさもしっかりと抽出。所々ですっと深層心理に訴えかけるメロウなフレーズが効果的に働いています。こんな優しさ持ってなかったのにという変貌も。
でも、そこから重爆音が炸裂していくので、一気に全神経が持っていかれるのも無理はありません。
タイトル通りに大海に投げ出される#2「Big Sea」の衝撃。それにメロウなパートと重音パートが入り乱れた組曲形式#6~#7「News」に完膚なきまでに叩きのめされます。震撼必至の一枚。5iveは本作からが一番入りやすいです。