Janne Da Arcのヴォーカリストとして活躍したyasuのソロプロジェクト。JDAが活動休止となった2007年に始動し、メインプロジェクトとして活動は続く。
ラウドミュージックからJ-POPや歌謡曲の交錯に、エロティシズムや愛を注入した音楽スタイルで絶大な人気を誇っています。
2012年に発表した3rdアルバム『2012』ではキャリア初のチャート1位も記録。2015年には4thアルバム『L -エル-』が発売となりましたが、フルアルバムは今のところここまで。
また他アーティストのカバー曲集となる『Recreation』も好評で、現在までに4枚リリースされています。現在は様々な症状の悪化により2017年から長く活動休止中。復活が待たれます。
以下、4作品の感想を書いています。ちなみにわたしはJanne Da Arc、Acid Black Cherryのライヴはそれぞれ1本ずつみています。
アルバム紹介
BLACK LIST(2008)
2007年1月のJanne Da Arc活動休止後、5月には本プロジェクトが始動。デビューシングルを7月に発売し、4枚のリリースを経ての1stアルバム。
カジュアル化していったジャンヌ時代とは対照的に、こちらではバリバリにメイク復活。それと共に歌詞も初期の感じで包み隠してない(#8「Black Cherry」が特にそう)
特筆すべきはその豪華な演奏陣でしょう。YUKIやAKIHIDE、SHUSEに淳士を軸に、手数玉の異名を取る菅沼孝三にDAITA、三柴理、SUGIZOまで実力派で固められたバックは否が応でも期待したくなる。加えて、盟友のkiyoも華を添えています(敬称略、ご容赦ください)。
アルバムのコンセプトは「七つの大罪」。元々ソロプロジェクト始動時から『BLACK LIST』をコンセプトに掲げ、それを元にシングルを製作してきたとyasu氏は語っているそう(wikipedia参照)。
音楽的には初期Janne Da Arcのエッジの効いたハードロック、メロスピ的な要素、晩年の大衆ポップなロックのいいとこどり。歌詞が過激さとR-18になるだけで、イキイキとするのかこの方は。
序盤の曲がとにかく強烈。#1「sins」でヘヴィなギターリフに、流麗なピアノとストリングスの調べがドラマティックに聴かせる。#2「少女の祈り」#3「SPELL MAGIC」などはもろ初期ジャンヌを踏襲した疾走曲でアがります。
メロディの良さもさることながらヘヴィ&ハードなアプローチを取り戻したのは、初期ジャンヌが好きな自分にとっては嬉しい限り。不思議とyasu氏がエロティシズムを表現すると曲が締まる気がします。
さらにはバンドからかけ離れた表現をしたかったという#6「Bit Stupid」、DEAD ENDに影響を受けたという#7「楽園」も作品には並ぶ。
#4「Scar」や#12「Prologue End」といったバラードが愛を持って泣かせに来て、シャッフルを取り入れたジャジーな#8「Black Cherry」はソロならではの腕の見せ所をしっかりと体現。
Janne Da Arcっぽくないことをしたいという想いはあるでしょうけど、その薫りや雰囲気は消えることなくいい意味で残る。ABCの持ち味を存分に見せつけたデビュー作。
Q.E.D.(2009)
約1年半ぶりとなる2ndフルアルバム。「人は人を裁けるのか?」がコンセプト。ブラック・マリア事件(実際の未解決事件であるブラック・ダリア事件をモチーフとした)」という架空のストーリーがアルバム上で展開されます。
前作同様にオープニング曲から壮大なスタート。ですが、中身は彼らしいハードなS曲とポップなM曲の応酬。お得意のエロス成分は1stよりも控えめに感じますが、ヘヴィかつアグレッシヴな曲だけなら本作の方が多い印象はあります。
#2「code name【JUSTICE】」や#8「I’m not a ghost」、#10「黒い太陽」と作品に陰りを落としつつ、心も体も仕留めてきます。
#5「眠り姫」や#9「優しい嘘」などの聴き入る曲は流石の精度。しかし、JDA活動休止の不安をかき消した『BLACK LIST』ほどの衝撃は無いかなあというのが本音。コンセプトがもともと難しいというのも関係していると思います。
シングルで発売された#3「Jigsaw 〜ジグソー~」が英詞になって収録されたり、他曲の歌詞表現がシリアスになっていたり、コンセプトに沿った作りはされています。
元々、テーマにしていることが重いので、曲自体も自然とそういった痛みを伴うようなものになったということ。ただ、#6「チェリーチェリー」のように抜いた変化球のような遊び玉も投げてくるのは、おもしろい。
そして、ラストの#12「20+∞Century Boys」で”夢を持たない事より 夢のために泣いて傷つく方がイイって” と高らかに歌う。yasu氏の背中を押してくれる優しさ、プライスレスでございます。
1stアルバム『BLACK LIST』の完成度に本人が満足しているようで、やり方を変えるしか無かったとyasu氏は語っています。わたしとしても1stアルバムほど衝撃は受けませんでしたが、本作のクオリティはもちろん高い。
『2012』(2012)
3rdアルバム。Janne Da Arc時代も成し遂げられなかったキャリア初のオリコン1位を記録。喉の治療からの復活となったシングル「Re:birth」から5カ月連続シングル最終章「イエス」まで、シングルを7曲収録しての全16曲。
サポート・メンバーはHIRO、SHUSE(共にLa’cryma Christi)、淳士(SIAM SHADE)、YUKI(DUSTAR-3)、AKIHIDE(BREAKERZ)などの実力派を起用。
”エロス”をコンセプトにエッジの立ったロック、メロディアスなポップスを展開。本作はこれまで以上に勝負をかけた一作となっています。「GAIA」をダークかつ幻想的に仕立てた#2「Fallin’ Angel」で彼等の世界に引き入れると、#3「In The Mirror」から立て続けの疾走曲3連発でノセにノセてきます。
#4「ピストル」のオブラートに包み切れずに表現されている感じ、林保則さんらしい(笑)。Janne Da Arcと付かず離れず。差異はほとんど感じないんですだけど、本家のあの曲みたいって感じさせつつも、ABC風にアップデートされています。
#5「少女の祈りⅢ~『2012』ver~」のヘヴィかつ鋭い疾走感(歌詞に関してはツッコまない)。アルバムの核といえる#6「Re:birth」における、冒頭のアルペジオから90’sヴィジュアル系の薫りを漂わせ、切なさ全開になるサビ。ハードからメロディアスに幅広く振れながらバラエティに富んだラインナップが揃う。
メッセージ性の強い叙情的なバラード#10「その日が来るまで」、ジャズっぽく小洒落た感触を押しだしたV系歌謡#13「蝶」辺りは大きな存在感を放っているように思います。
ストリングスを交えて壮大なアレンジを施した上に、テーマである『生きる』意味を強く訴える眩くポジティヴな#15「シャングリラ」に背中を押される人も多いことでしょう。
シングル詰め込みすぎだろ!と数多の人がツッコミを入れてますが、それぞれがアルバムのひとつのピースとしてしっかり機能しており、作品を通しても充実した内容に仕上がっています。
ABCの名刺代わり/入門編盤として推したい作品です。
L -エル-(2015)
約3年ぶりとなる4thフルアルバム。エル(ジャケットの女の子)という女性の波乱の人生を綴ったコンセプト・アルバムです。全14曲をかけてその物語が描き出されていきます。
本作は100pにも及ぶストーリーブックが同梱されていて、パッケージとしてかなりこだわった作り。2016年冬に実写映画化され、広瀬アリスさんが主演を務めました。
冒頭から#1「Round & Round」~#2「liar or LIAR?」~#3「エストエム」からギア全開。サディスティックにアダルトにハードロッキンに畳み掛けてきます。特に重厚でスピーディな#3「エストエム」は、ライヴでも重要な役割を担う1曲となりました。
Janne~ABCの変遷を辿っている人からすれば、楽曲自体にこれまでと大きな変化はないと感じるはず。ただ、お馴染みのメンバーの他にもLeda神やROLLY(寺西)氏が参加していることでアンサンブルに広がりがもたらされています。
バラバラな個性をみせた4枚のシングルは要所でストーリーに深みを寄与。彼女の人生に大きく関与した男性・オヴェスからの視点を描いた#5「L-エル-」という曲を含め、コンセプトとのリンク度は高く、14の曲を通じてエルの波瀾万丈の人生が浮かびます。
ここまで曲と物語の相互補完関係が強いのは、彼が今まで発表した作品の中で一番かも。ストーリーブックにある挿絵によって、イメージし易いことも大きい。
ピアノとストリングスの静かな響きの上で美しい歌声が重なるバラード#13「LOVES」、小さな幸せを掴んだかのように華やかなエンディングを飾る#14「&you」と続き、エルの物語は幕引き。
波瀾万丈とはいえ、最後は愛と歓びのある終わり方を選択するのはyasu氏らしいですね。
どれを聴く?
Acid Black Cherryはどれから聴けば良いの??
ヒット・シングルを多数収録して、ポップもロックも詰め込んでいる3rdアルバム『2012』がオススメです。