【アルバム紹介】ANCHOR『深層』 自身の音楽で抗う日常や社会。

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深層(2016)

 結成から17年かけての全8曲入りの1stフルアルバム。硬さと冷たさを感じるアルペジオとしなやかに叩き出すリズムを案内役に、日常への抗いや社会への反骨を叫び、感情を解放するポストハードコア。速度は抑え気味で徐々に昂揚感を伴っていく構成を取っており、ポストロック/シューゲイザー成分をブレンドしたギターが空間に音を広げます。

 3分から長くても4分台の尺で曲は完結。また、くぐもった音質は不穏な空気とヒリヒリとした緊張感を増長させている印象。自分たちを飾ったり、盛ることとは無縁で、カジュアルさとも無縁です。そして、その場しのぎの美辞麗句を並べることもしない。

 人間の影の部分を背負い込み、建前のない言葉で光と自由に向かって剛直に突き進む。音楽的にはいわゆる激情と言われるスタイルのハードコアでありますが、前述した姿勢や人間味が表れた音像に惹かれるのでしょう。

 エモーションがピークに達する表題曲#8「深層」は繊細な旋律、偽りのない想いを綴った詞が悲痛に響きます。説教臭く感じる部分もありますが、自身と向き合うこと、他者との関係性、閉塞感を打ち破るための前進の大切さを問いかける。

 彼等は決して華やかな足跡を残してきたわけではありません。しかしながら、新潟という地でどっしりと身構え、国内外の数々のバンドを迎え撃ってきた芯の強さを感じさせる内容に仕上がっています。

 自身の音楽で抗う日常や社会。そんなANCHORの苦闘の叫びは、恐ろしいまでの力を持って体内に響いてくるのです。

お読みいただきありがとうございました!
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