
ドイツのオルデンブルグを拠点に活動するインストゥルメンタル5人組(かつては4人)。2016年から活動。2017年に発表した初期EPはいわゆる激情系ハードコア/リアルスクリーモ・バンドでしたが、ヴォーカルが脱退したために完全インストへと移行。Moment Of Collapse Recordsに所属し、これまでにフルアルバム3作品を発表している。
本記事は2026年2月にリリースされた3rdアルバム『Years That Answer』について書いています。
作品紹介
Years That Answer(2026)

3rdアルバム。全8曲約42分収録。リリースはMoment Of Collapse Records、 マスタリングはMagnus Lindberg(Cult of Luna)。アルバムタイトルは、アメリカの作家であるゾラ・ニール・ハーストンの『彼らの目は神を見ていた』の一節、”There are years that ask questions and years that answer:問いを投げる年もあれば、答える年もある”から採られています。
本作よりシンセサイザー奏者が加入しての5人体制。Moment Of Collapseに所属していることからもわかる通りに、Brueckenはヘヴィなポストロックと表現できるインスト・バンドです。ただし、前作までのIf These Trees Could Talk寄りの静動クレッシェンド構造からは離れており、本作は重さと繊細さを丁寧に接続しながらスマートな展開で聴かせる。近いタイプでいえば2020年のpg.lostだったり、最近だとBarrensだったり、同じドイツの大御所であるLong Distance Calling(アルバムごとに作風は違えど)だったりが挙げられます。
豪胆な迫力はブラストビートもかます#4「Dissolving」でみせたりもしますが、決してどこかのバロメーターが突出した感じではありません。Lookmagのインタビューでは2017年以来となるヴォーカル・パートの復活、シンセサイザー奏者の追加について語っており、これまでのサウンドと調和を図りながら新たな可能性を追求したかったと語っています。その最たる例としては冒頭を飾る#1「Periapsis」。エレクトロニックな意匠を効果的に働かせがらもヘヴィなサウンドと対峙し、終盤には”When I’m gone release my soul”と控えめなヴォーカルがこぼれてくる。
”気候危機、戦争、権威主義的傾向に形作られる現代において、バンドは希望をいかにして守り続けるかという核心的な問いを投げかけます(参照:リリースインフォ)”との中心的なテーマを本作は掲げています。それにBrueckenはBandcampにてあらゆる差別に反対するという声明を発表している。先行シングルのひとつである#2「Questions We Raise」のMVでは”私たちは希望をどこに向けるべきでしょうか?“を始めとした問いかけが、力強い推進力を持つリズムと共に次々と投げかけられます。
”私たちにとってこのアルバムは、恐怖や圧倒されるような感覚との対峙であるだけでなく、希望や共感、行動するための内なる空間を開こうとする試みでもある(出典:Lookmagのインタビュー)”。その発言を特に実感するのは9分を超えるラスト曲#8「Signs of Spring」。内省を促す穏やかさ、現実の過酷さを思わせる荒々しさといったバンドの特性を踏まえながら、後半における合唱団とのコラボレーションを含めた壮大なサウンドが聴き手に活気をもたらすように鳴り響く。先の見えない世界情勢においても希望の灯は決して絶やさそうとしない、Brueckenの表現の結晶。
