【アルバム紹介】Codeine、スロウコアの先駆者

 アメリカ・ニューヨークで結成された3人組、主に1989年~1994年まで活動し、スロウコア/サッドコアの先駆的存在として名を馳せます。活動期間中にフルアルバム2作、EP1作を残す。それらは30年経った現在でも後続に影響を与え続けている。

 本記事は1st『Frigid Stars LP』、2nd『The White Birch』、EP『Barely Real』の3作品について書いています。

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アルバム紹介

Frigid Stars LP (1990)

 1stアルバム。全10曲約41分収録。SUB POPからリリースされたスロウコア/サッドコアの開祖による傑作です。

 当時のオルタナ・ムーブメントから反れていき、寂寥感を漂わせながらもシンプルなサウンドが聴き手を魅了。疾走という言葉をはるか彼方に捨て、ひたすらゆっくりとアンサンブルを重ねていきますが、これが静かに薬のように効いてきます。

 冒頭を飾る#1「D」からどこか混沌としており、慎重なアプローチによってそっけなくも引きずり込まれる。ベースもドラムもわりと重いリズムを刻んでいるし、ギターも硬質かつヘヴィ。そして物憂げなヴォーカルは渋い味わい。これらによって作品は全編に渡って抑性されたトーンでつづられています。

 のんびりと地平線をなぞっていくような#4「New Year’s」の心地よさは格別だし、アコギとピアノが加わることで哀切がピークに達するラスト曲#10「Pea」による締めくくりも良い。

 決してガツンとくるタイプではないですが、聴きこむほどに深い陶酔に誘われる禁断の果実。#6「Cave-In」はCave Inがバンド名に拝借したことでも知られています。

Barely Real(1992)

 1st EP。全6曲約24分収録。己が開拓したスロウコアを変わらずに踏襲しており、殺風景の中をゆっくりと闊歩している生気のなさがにじみでる。タイトルは直訳だと”かろうじて本物”ですが、自分たちを皮肉っているようにも思えますね。

 #1「Realize」や#3「Barely Real」はバンドらしくわびしげな表現と間を”魔”にする遅効性がキまっています。容赦なくスロウでハイライト・シーンを設けない。それこそがCodeineかなと。

 本作においてトピックと言えるのがゲスト・ミュージシャンの参加。#2「Jr」にはBitch MagnetのJohn Fineがギターを重ねており、#5「W」ではデヴィッド・グラブスがソロピアノの教鞭をふるうことで異質さを演出。特に#5は終末感と狂いを作品に書き加えているかのようであり、不気味な静けさが際立っています。

 また#6「Promise of Love」はカバー曲のようですが、ポストロック的な静と動のスイッチングが見事に機能したもの。1stアルバムから地続きとはいえ、EPの中で拡張された音楽性が示されています。

The White Birch(1994)

 2ndアルバム。全9曲約43分収録。ドラマーのChris Brokaw脱退後にツアー参加していたダグ・シャリンが正式参加し、また前EPに引き続いてデヴィッド・グラブスが2曲で参加。

 多少の浮き沈み/メリハリは感じられるようになってはいますが、相変わらず低体温の演奏によるスキマをたゆたう音楽です。船場吉兆の女将より弱々しいボソボソ声によってさみしげな境地に達し、ディストーションは荒く歪んだ景色を映し出す。ノるとは無縁にどことなく湧きあがってどことなく消えていく感覚。

 それにジャケットもあいまってCodeineは”冬の音楽”というイメージをさらに強烈にしています。当時はまだ若いにも関わらず壮年のような気持ち的な枯れと諦観みたいなのが強いのも特徴。

 #2「Loss Reader」や#6「Tom」辺りは歌なしの初期モグワイのようであり(実際にモグワイは影響を公言している)、対比の美学を控えめに表現している様はSlint『Spiderland』と距離の近さを物語ります。

 ダイナミクスの魔法はあっても余白を慈しむ。それこそがCodeineの妙味。たまに復活はしていますが、解散から30年経とうとCodeineは静かだが大きな影響力を持ち続けています。

What About The Lonely?(2013)

 RECORD STORE DAY 2013で発売されたライヴアルバム。

Dessau(2022)

 90年代初期のスタジオ録音を収録した未発表アルバム。

プレイリスト

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