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作品紹介
人工島(2024)
1stアルバム。全8曲37分収録。2022年に東京で結成された2人組で木原氏(Ba,Gt,Vo)、相良氏(Gt,Vo)から成ります(出典:BELONG Mediaのコラム)。音楽的にはシューゲイズやドローン、サイケを基調としたもので懐かしさと新しさの両方が同居している。
打ち込みのリズム上をわびしげな歌が乗り、穏やかな物腰で接してくるギターとJesuやNadja付近を思わせる分厚いノイズが交錯します。加えて#2「4番線」に代表されるようなサンプリング(同曲では列車のアナウンス)、#3「秘密」の昔ながらの感触がする電子音、#5「汽水域」ではくゆるのおりとさんがゲストVoとしておそらくボソボソとしたセリフ読みで参加。
このような情景を喚起する心配り、清濁を用いた空間描写の巧みさが聴き手の意識に引っかかります。前述のコラムでは坂本慎太郎氏から大きな影響を受けていることを語っているのですが、彼等が氏に感じている”いつ聴いても邪魔にならない気持ち良さ”は自分たちも表現できているのではないかと。
しんみりとした歌ものから轟音支配へと移行する#4「夕立」は心と鼓膜の遠近感がバグリそうですし、#6「街」はピントを合わせずにサイケデリックな空気感で満たそうとする(微妙に割礼っぽい)。そして#7「星を待つ」では待っている間に破壊の光景が繰り広げられそうなほどノイズの壁が立ち上がります。CDやBandcampではささやかさな合唱曲として響く#8「月光」がボーナストラックとして収録。
電球はシューゲイズ的な言われ方が先行されてはいますが、音量信仰によらないコラージュの絶妙さがある。日本人的なわびさびの精神もさることながら、モノクロの写真と風景画を漂っているような感覚が心地よい。