
2021年頃から始動していたと思われるUKのポストメタル4人組。2025年6月にデビュー作品となる『Dust Eater』を発表。同年8月のArcTanGent Festival 2025に出演を果たした。
本記事は1stアルバム『Dust Eater』について書いています。
作品紹介
Dust Eater(2025)

1stアルバム(もしくはEP)。全4曲約32分収録。本作は4年の歳月をかけて断続的に制作されており、”悲しみと変容についてのレコード“とリリース直後にInstagramの投稿に記しています。7~10分までの長尺曲を4つそろえ(曲順は楽曲が完成した順に並んでいる)、ポストメタル/アトモスフェリック・スラッジの威圧と抽象に覆われる。
音像は2nd~3rdアルバムぐらいのMouth of the ArchitectにAmenraの精神的な痛みや苦悩が加わったような感じでしょうか。ドゥーム/スラッジ寄りのゆったり進行、音も感情も2トン車両のごとき重みを携え、ヴォーカルはデスメタルの影響下にありそうな咆哮をあげ続ける。しかしながら、閉塞感に赦しを与えるメロディックなパートを適切に配置。#2「The Dusteater」は冒頭の柔らかな旋律の施しからAmenra「A Solitary Reign」に近い雰囲気へと向かっていきます。
その上で言葉にしろ演奏にしろ、吹き込まれるのは悲しみ。Echoes And Dustのインタビューによると、ギタリストのAdam Campbell-Trainが体験した娘の死の影響は最終曲に限定されるそうですが、ヴォーカルを務めるAlexの苦悩も強く反映されている模様。彼が書いた1~2曲目の詞は、俺が全不幸を背負ったみたいな自暴自棄や希死念慮といったものが明らかに感じ取れる内容です。
#3「Existence」は認知症家系で父になることへの不安を言葉にし、”病気が私たちの記憶を曇らせる“という詞と共に濁流のごときサウンドが押し寄せる。そして最終曲となる#4「On Being and Nothingness」。元々はインタールードとして制作されていたそうですが、前述の影響で10分超の大曲へ。序盤のアコースティックとシンセサイザーの絡みがしんみりとした雰囲気を湛え、喪失を体験したが故に募った感情が楽曲中盤で一気に崩壊。極限状態から放たれる音はとにかく重くのしかかってくる。
人が抱く悲しみに等級はないにしても、ハンカチだけでは拭いきれない慟哭が伝わってきます。親族を亡くす悲嘆に暮れている人が表現を果たした。そのことで乗り越えたと簡単に言えませんが、聴き手もまた胸を締め付けられる想いになる作品です。
