2003年に名古屋で結成。2007年のフジロック・ルーキーステージに無所属で出場したことでも話題となった、エモーティブ・ナード・メタル・バンド4人組。
メタル全盛~グランジ世代には懐かしくもあり、若い世代には新選と受け止められるサウンドに、Musician’s Musician的な演奏とキャッチーさのある歌とを両立させた類い稀なバンド。
31KNOTSやMARITIMEなどの海外勢とも共演を果たす。本記事は彼等の3作品を追ったものとなっています。
アルバム紹介
The More You Tangle,The More We Heavy Metal(2006)
1stアルバム。スタートの#1「郷愁YEAH」から他のバンドとは一線を画す強さを感じ、鋭角的で骨太のリフがぶったぎり、エモーショナルな叫びが魂にぶつけられます。
ヘヴィメタル、オルタナ、グランジ、ストーナー・ロックなどなどを絶妙に配分して構築したサウンド。鍛え抜かれたアンサンブルが生む重厚さと爆発力。
そこにブッチャーズやイースタン・ユース辺りも思い浮かべてしまうような感情のこもった歌(日本詩というのも特徴)が重なり、身体も心も熱くします。
さらに一筋縄ではいかない複雑な展開をどの曲も持っていますが、それを力強くしなやかな進行で真っ直ぐに響かせる技量もあり。メタル、グランジ方面からインディ、ポストロック方面に舵切れる巧さには唸ります。
ところどころで思いっきりマニアックな嗜好を発揮してる中で、ここまで曲として昇華している点は素直にすごいと思います。
入り組んだ展開の中で歌と演奏の絶妙なコンビネーションが急所を何度も鋭くつくような#4「1535」、熱っぽい中で清々しさすら感じさせる#5「キレイな女には振り返る事を誓うよ」は特に本作で好みの曲。スクリームも交えつつ、より重厚なアンサンブルが冴える#7、焦燥感に駆られてリフで切りまくっては思いっきり突っ走る#10も良し。
全体を通すと、何より日本語ロックの新たな形を1stアルバムとはいえ、提唱している。まさにDOIMOIでしか成し得ない音がここには広がっています。
Dialectic And Apocalypse(2009)
2ndアルバム。内臓にガシガシと響く重量感が渦巻く中でも、ストレートな熱情が伝わってくる好盤。
特徴としては、ラウド・ヘヴィネスの化身ともいえるぐらいの重くメタリックなリフと、変拍子を激しく使った複雑なリズムによる極太のサウンドを基調。グランジ・オルタナ寄りのダウナーな黒い重低音に、いかにもなメタル因子も所々で散りばめられており、圧迫感と破壊力は脳髄にまで強烈に響く。
ただ、相反するように風通しの良いしなやかなメロディが曲に温かみを、日本詩をエモく歌い上げるヴォーカルが暑苦しい熱情をもたらしています。だからか予想以上にストレートに胸に突き刺さってくる。
熱い疾走曲からポストロック風の美麗なフレーズ、低血圧に捻くれたうねりを見せる曲まで多彩なパーツも魅力的で、懐の深さを示しつつ、聴きやすさもしっかりと完備。
曲からもメタル的な要素よりも、エモ暑苦しさの方が目立っちゃっている。和の風情が生きているのも実によくて、一時期のlostageを思わせるぐらいの和洋折衷な感覚が好印象です。ゴリゴリの重低音にやるせない感情や蒼いメロディが乗る#1「オリンピック」は本作でも随一のかっこよさを誇っています。
10曲30分弱のコンパクト設計ながら演奏時間の2倍以上の濃度・密度を感じます。ヘヴィメタルからグランジ・オルタナを主成分とし、エモ・ポストロックにそのほか周辺ジャンルまで咀嚼し血肉としている強靭な1枚。
Materials Science(2012)
3rdアルバム。HR/HM~グランジ、ストーナー・ロックにオルタナやエモまでを飲み込んで鍛え上げた強靭なサウンド、胸の内側にじわっと広がる伸びやかな感情的な歌が理想的な邂逅を果たす“DOIMOI流サウンド”。本作も実に彼等らしい濃い密度。
メタラーが喜ぶようなフレーズをぶっこんだり、トリッキーな揺さぶりをかけたり、#6「バベルの祈り」では大胆なデス声を轟かせたりと色々と仕込みを入れつつ、隙のない構成が光ります。
その上でとても真っ直ぐな印象を受けるのは、情緒豊かな歌や美しいメロディが核となっているから。それは迸る情熱とともに1stや2ndの頃よりも存在感を増しています。
ドゥーミーな序盤から哀愁の旋律が滲む#1「帆影」から、続くリード曲#2「円群」では彼等らしい重さと切なさを共立させたサウンドの中で、蒼く熱い歌が何よりも魅力的に響く。
また1st、2ndから2曲再録されているのも特徴。1stアルバムからは「キレイな女には振り返る事を誓うよ」が#4「誓い」としてかなりメタリックに再録。Helmetばりの鋭くヘヴィなリフとエモーショナルな歌を軸にして熱を帯びていく。
2ndアルバムからは#7「オリンピック」が再録。ゴリゴリの重低音の中でサビを中心にいい意味での抜けの良さを感じさせるあたりは流石です。全体を通してもヘヴィかつ変則的であるにも関わらず、巧みに配されたキャッチーさがツボ。嵐吹き荒れるラストの#11「遺跡」に至るまでインパクトはとてつもなく大きい。
なお、Gtの杉山さん(SCSIDNIKUFESINでお馴染み)による“Materials Science 全曲セルフ解説”が公開されているので、必読。マニアックさとキャッチーさと熱量を詰め込んだバンドの最高傑作。