もはや説明不要なぐらい、日本を代表するロックバンドであるELLEGARDEN。細美武士(Vo,G)、生形真一(G)、高田雄一(B)、高橋宏貴(Dr)の4人から成り、1998年12月末に千葉県で結成されました。
2001年にミニアルバム『ELLEGARDEN』でインディーズ・デビューを果たすと、積極的なライヴ活動とコンスタントな楽曲制作で着実に人気を伸ばしていきます。
2004年リリースの3rdスタジオ・アルバム『Pepperoni Quattro』で火が付くと、4th『RIOT ON THE GRILL』、5th『ELEVEN FIRE CRACKERS』の発表で不動の人気を得ます。
しかしながら、2008年9月をもって活動休止。その後は各自ソロでの活動が続く。
2018年に10年ぶりに驚きの再結成。以降はいくつかのイベントやフェスにて活動しており、各自のバンドと並行しながらELLEGARDENは続いています。22年12月に16年ぶりのフルアルバム『The End of Yesterday』を発表。
本記事ではフルアルバム6枚とミニアルバム2枚を紹介しています。
全アルバム紹介
ELLEGARDEN(2001)
バンド名を冠した初リリース作品となる5曲入りミニアルバム。自分は、3rdアルバム『Pepperoni Quattro』辺りからエルレを聴いており、さかのぼって本作を聴いたときはかなり驚きました。
オルタナ系ギターロック路線で、彼等にもこういう時代があったんだと。メロディアスで軽快な疾走曲よりも、テンポを抑えた曲を本作で揃えています。
突き抜けるような爽快感みたいなものはあまりないです。しかしながらアメリカナイズされた、またメロディアスで切ない感性が染み込んだバンドの特徴は発揮されています。
特に#1「The End Of The World」で顕著。また、ミドルテンポのバラード#3「花」が荒削りながらの感情表現がいいスパイスとなっているというか。
#5「ナイフ」も切なくて染みる良曲です。ちなみに#1は、1stフルアルバムにシークレット・トラック扱いで別バージョンが収録されている。
DON’T TRUST ANYONE BUT US(2002)
代表曲であり名曲の#8「風の日」を収録した全11曲入りの1stフルアルバム。1stミニアルバムの延長線上にあり、まだオルタナティブ・ロック/エモ色強めです。
大地をしっかりと踏みしめるように進むメロディアスな楽曲群で、胸を締め付ける。初期の持ち味です。
駆け出しのバンド感が強かった前作に比べ、随分と地に足の着いた音を鳴らすようになっています。また、Jimmy Eat WorldやWeezerといったUSバンド達の影響が表れていて、エモっていう言葉が似合う音楽性でもある。
#2「サンタクロース」や#5「指輪」といった切ない哀愁で満たす曲は、初期の彼等らしさを存分に感じさせます。静かな幕開けからメロディの大輪を咲かせる#9「Middle of Nowhere」も味わい深い。
しかしながら、逆に疾走系チューンからは、まだまだ荒削りといった印象を覚えたりも。そういった曲がもたらす興奮より、聴かせる曲で魅了するのが本作の特徴。
全フルアルバムの中で、メロディが特に際立っている作品ですね。初期の方が味があったと言われるのもうなずけます。
My Own Destruction(2002)
1stフルアルバムから半年ほどの短いスパンでリリースされた2ndミニアルバム。これまでの哀愁ナンバーを#3「右手」や#6「おやすみ」で披露しつつ、パンク/メロコア路線への傾倒が目立つようになっています。
要するに”これまで” と “これから”の両面をみせた作品と言えますかね。後のベストアルバムに収録される#1「(Can’t Remember)How We Used To Be」で勢い良く突っ走り、#2「Under Control」にて軽快に加速。
キャッチーなメロディと疾走感が魅力の#4「Mouse Molding」まで心地よく耳に飛び込んできます。本作以降に彼等の中で主流となっていく音楽性が幅を利かせるようになりました。
一方でこれまでの哀愁オルタナ系の曲ともバランスが取れているので、後期の作品から入った人も聴きやすい。
インパクトが強いのが#5「Jamie」。当時の洋楽バンドのエモさを存分に取り入れるも、切なさと昂揚感が同居する名曲です。
BRING YOUR BOARD!!(2003)
11曲収録の2ndフルアルバム。本作からアルバム全体を通して、世間がイメージする”エルレ・サウンド”が展開されています。
キャッチーなパンク/メロコア路線に大きくシフトし、カラッとした初夏の海岸沿いのような気持ちよさがある。
#1「Surfrider Association」~#2「NO.13」~#3「ジターバグ」において、これまでになく勢いを全面に押し出したスタートダッシュには、変化を強く感じるところです。
英語詞(もちろん、一部の曲で日本詞採用)であるとはいえ、わかりやすさとノリやすさがアピール・ポイントとなっています。当時に流行っていた青春系パンクスの薫りが多少あるけど、やはりそれとは別の洗練がある。
彼等らしいメロディは随所で息づいていて、アコースティック・ギターの響きが新鮮な#6「Insane」や終盤でじっくりと聴かせる#10「金星」辺りは、初期に似た味あり。
まだまだ蒼いなあと感じる作品ではあるけれど、ELLEGARDENの音楽の流れをつくったとして重要な1枚だと思います。やっぱり「ジターバグ」は好きですし、どんな時に聴いてもスカッとさせてくれるんで。
Pepperoni Quattro(2004)
タイトルにイタリア語を使用した全10曲入り3rdフルアルバム。週間チャートで17位を記録した本作にて、本格的に人気に火がつき始めました。
少し青臭さの残った前作をよりアメリカナイズドさせ、爽快で明るさを持った仕上がりへ。
ライヴ定番曲である冒頭の#1「Supernova」からエルレ節炸裂であります。心地よい疾走感とメロディでラッシュをかけるこの曲から一気に持っていかれます。
さらにはバンド屈指の名曲#2「スターフィッシュ」の素晴らしさ。売れ線といえばそうかもしれませんけど、日本語詞を主とした真っ直ぐな表現が胸にジーンと響きます。
#3「Make A Wish」や#7「Pizza Man」の思いっきり駆け抜けるようなスピード感、#5「バタフライ」のように重厚な楽曲での攻め。アルバム通して一層パワーアップしていると実感します。
そして、ポップの配分が上手いと感じるし、英詞にも関わらず日本人として親しみやすい距離感に落とし込んでいる。
和の情緒を醸し出すミドルテンポの#10「Good Morning Kids」での締めが、切ない余韻を残すのもまた良いです。
RIOT ON THE GRILL(2005)
前作の成功でさらに多くのファンを掴み、週間チャート初登場3位を記録した全10曲入り4thフルアルバム。2ndから続く路線の完成形といえるパワーと勢いが興奮をもたらしてくれます。
英詞・演奏ともにそつがなく、これまでの作品と比べても邦楽-洋楽のボーダーレス化が進んだような説得力を持っているように感じます(日本語詞があるとはいえ)。
高速パンクではっちゃけること必至の#1「Red Hot」を皮切りに、メロディアスでドライヴ感のある曲がズラリ。
#4「Marry Me」、#7「TV Maniacs」、#10「BBQ Riot Song」等の疾走チューンでは、ライヴでのピット大運動会のイメージが浮かぶもの。
細見さん自身も”前作と違い、ストレートに楽曲制作した”と話しています。曲に勢いを与える生き生きとエネルギッシュな表現、真っ直ぐに響いてくる細美さんの伸びやかな歌声。
前作と比べてもよりシンプルな表現が目立つけど、経験と成熟によって旨味が上手く引き出されています。これで擦り切れるような切なさが際立つ、シングル#5「Missing」を完備しているんだからいい意味でズルい。
さらに前向きで力強いサウンドの#8「虹」に涙腺が緩む。バンドとしてのひとつの到達点。
ELEVEN FIRE CRACKERS(2006)
発売初週で20万枚以上を売上げ、オリコン初登場1位を記録した全11曲入り5thアルバム。
突き抜けるような疾走感は変わらずにありますが、骨太なアンサンブルによる重厚感が増し、初期にも通ずるシリアスな風情とオルタナティヴ・ロック色が戻ってきました。
4thでの成功を受けてのロック色をさらに高めています。チャートを賑わせた#3「Space Sonic」や#8「Salamander」といったシングル曲はキラー・チューンとして申し分なし。
今までにない騒々しいパワフルさとスピード感を持ち合わせた#6「Gunpowder Valentine」には驚かされ、快速メロコア#11「Marie」も気持ちいい。本作ではこの”強さ”や”重さ”というのがキーでしょう。
それに絶妙な位置に配置されている#5「Winter」、#9「高架線」といったバラード調の曲がキラリと存在感を放ち、非常にアクセントとして効いている。こうして極上のメロディが次々と湧いてくる辺り、やっぱりエルレですよね。
とはいえ、ここ2年で一気に注目度が高まって大人気バンドの仲間入りしたことに、メンバー自身は戸惑い・葛藤が大きかったという。
しかしながら、それを打ち破る強烈なエネルギー、さらにガッチリと心を掴む訴求力に満ちた作品に仕上がっている。最高傑作に挙げたい作品。なお、本作がエルレの中で一番売上枚数が多く、45万枚を超えているんだとか。
The End of Yesterday(2022)
6thアルバム。全11曲約40分収録。16年ぶりのフルアルバムは、全曲をアメリカ・ロサンゼルスで制作。最先端のUSロック・サウンドを手掛けるプロデューサー/エンジニアのZakk CerviniとRobbie Hiserを招聘しています。
時代の流行り廃りに回収されることなくELLEGARDENを貫いていますが、過去をなぞるだけではない年季の入った表現に磨きがかかっている。端的には”噛みしめるアルバム”です。
活動休止前には無かった大人びた哀愁を色濃く漂わせています。明快なポップパンク調や骨太のアタック感は堅持しつつ、日本語詞は増加。
#3「ダークファンタジー」や#6「瓶に入れた手紙」がしんみりとした情緒で彩り、#8「チーズケーキ・ファクトリー」が宝物だった日々をストレートなメロディに乗せてよみがえらせる。
過去曲でいうなら「虹」や「高架線」といった方向性が近く、より成熟した形で表れています。ミドルテンポで湿っぽい雰囲気の先行曲#1「Mountain Top」を頭に置いている辺りで、彼等の覚悟は決まっている。
年相応の変化で片付けられない葛藤が染みわたる歌詞にしても、エルレの新しい音楽を届けていく決意が見て取れる。
力任せや勢いではない”今のエルレ”。本作を聴いて、エルレ無双だったあの頃から”思ってたんと違う”という人は少なくない。
ですが、本作がしっくりくるのは、聴き手であるわたしも16年分大人になっているからでしょう。手堅いという言葉に収めたくない妙味が詰まっています。
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16年ぶりのオリジナルアルバム『The End of Yesterday』と共に是非チェック!
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