【アルバム紹介】epic45、情感豊かな楽曲群と静謐で清らかな世界

 1995年に結成されたポストロック/エレクトロニカ系ユニット。ロブ・グローバーとベンジャミン・ホルトンはスタッフォードシャー州で育ち、13歳のころにバンドを結成。その後はメンバーの増減はありましたが、最終的にこの2人で歩みを続けている。本記事はフルアルバム3枚とミニアルバム1枚の計4作品について書いています。

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Against The Pull Of Autumn(2004)

 2ndアルバム。全12曲約55分収録。この頃はまだバンド編成でした。ギターが牧歌的な音色を響かせ、シンセが鮮やかに煌いて、消え入りそうな淡い歌声と打ち込みの音が美しく空間を流れていく。そこにエレクトロニカ・シューゲイザー風味の味も混ぜ合わせて、とっても心が落ち着く穏やかなサウンドを構築している。ピアノやチェロ等の絡みもまた音色を豊かにしており、より生命感を感じさせてくれるのが味わい深い。

 そんな感じの儚く美しいポストロックです。インストと歌入りが半々に収録されており、いずれも平均点の高い曲が並んでいます。清らかで透き通った音がひたすら体の内側から浄化をよびかけるよう。

 美の結晶ともいえるこの作品が残す感動は確かなものです。穏やかな時を過ごしたい、または癒してもらいたいって時には重宝しそうな一枚。中でも一際異彩を放つ11分に及ぶタイトルトラックの#9は、寂寥感をつのらせるピアノが切なすぎる序盤から、徐々に徐々にギターが恵みの光を差していく様がとても美しい。

may your heart be the map(2007)

 3rdアルバム。全12曲約46分収録。本作から2人組として再出発。影響をもろに受ける形でバンド然としたテクスチャーは薄まり、繊細な音響系のアプローチへと変化。かなりアンビエントよりにシフトしています。

 その変化はHeliosのようだと感じたり。楽曲も前作以上に聴きやすさを重視して3~4分のコンパクトなつくりが多くまったのも特徴です。薄く広がっていくノイズの上をアコースティックギターの美麗な旋律が彩り、消え入りそうな淡い歌声とエレクトロニカが絶妙なバランスで絡む。

 聴いているとジャケ通りの緑の桃源郷が目の前に浮かびます。また、曲のタイトルを見てもお分かりの通り、春夏秋冬の季節の流れを感じさせる辺りも本作の肝。透徹とした美しさを終始保っており、その辺りが相変わらず琴線に触れてきます。淡々としているようで非常に温かみのあるところも良く、癒しの効果は本作でも高いです。

In All The Empty Houses(2009)

 ミニアルバム。全6曲約28分収録。本作でも大きな路線変更は無し。ノスタルジックな生音とエレクトロニカの融合による温かい世界が広がっており、今までのファンなら確実にその音に癒されます。

 アコギの甘美な旋律がスッと寄り添うように鳴り響き、グロッケンやシンセに柔らかなエレクトロニクスが空間に眩い光を潤しながら、打ち込みのビートとゆったりとしたドラムが心地よく熱を高めていく。その静謐ながら磁力のあるサウンドを基盤に、耳元で優しくささやくような歌が、リリシズムとメランコリーに一層の拍車をかけ、夢のような異郷へと手招きする。そんな穏やかにセンチメンタリズムを刺激するような曲が本作でも目白押しだ。

 アコギと電子音が優しくムーディな雰囲気を演出する#1、幼少の頃のセンチメンタルな憧憬が浮かぶ#2、アンビエント寄りの#3といった前半を通過し、絶妙な透明感とドリーミーな世界観が、儚い余韻と琴線を擽る後半へ向かっていく。#6の切なすぎる味わいは特に感動モノです。情感豊かな楽曲群は、鮮やかに色づくエメラルドグリーンの風景を不思議と脳内に浮かびあがらせます。

Weathering(2011)

 4thアルバム。全11曲約53分収録。「Weathering = 風化」をテーマに掲げ、見事な筆使いで人々の胸に収められた遠い過去の風景から、季節の移ろい、移り変わっていく街並み等を繊細に表現。ポストロック~フォークトロニカ~アンビエントとこれまで培ってきたサウンドで地盤を強く固めています。

 冒頭の#1からラストの#11まで絶妙な郷愁とメランコリーが溶け込んでおり、胸をゆっくりと焦がす。ただ、安らぎを与えるだけではありません。遠い記憶をも蘇らせる様な磨かれた叙情性、誠実に聴き手に語りかけてくれるような温かさと優しさが秀逸。

 本作では唄の力というのがこれまで以上に表立って効力を発揮しています。また、さりげないノイズのたゆたいや教会のチャペルの音にすらリリシズムを感じさせる。詩的でノスタルジックな風景を描く音による柔らかなデッサンは、さらに巧みになり、静かな情熱と共に聴き手に奇跡のような優しい時間を提供してくれる。

 

お読みいただきありがとうございました!
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