愛媛のご当地アイドル、ひめキュンフルーツ缶の研究生として活動してきた2人組によるラウド系アイドル・ユニット。通称:フルポシェ。メンバーは東しおりさんと寺谷美奈さん。
メロデス~メタルコア~ピコリーモを取り入れたサウンドで全国に攻勢をかける。2013年に1stミニアルバム『疾風迅雷』をリリースし、翌年には47都道府県ツアーを完遂。
2015年2月には待望の1stフルアルバム『The Crest Of Evil』を発表。その後、寺谷さんの脱退があったものの2018年に復帰。オリジナル2人体制で活動中。2022年12月に活動10周年が認められて”ご当地アイドル殿堂入り”を果たす。
本記事では1stミニアルバム『疾風迅雷』と1stフルアルバム『The Crest Of Evil』について書いています。
アルバム紹介
疾風迅雷(2013)
1stミニアルバム。全7曲約31分収録。みかん県発のラウド系アイドル・ユニット。メタルコアやメロデスをベースにピコリーモをしっかりと取り入れながら、本格派のサウンドを作り上げています。
As I Lay Dyingの「Nothing Left」を彷彿とさせるイントロから、チャラいシンセを交えて加速する#1「暴虐-PARASITE-」。鋭いリフ、勢いを乗算するようなツーバス、下っ腹に効くビートダウンを交えながら、興奮をあおってきます。
イン・フレイムスやチルボドらメロデスをお手本にしただろう#2「超絶-FANTASTIC-」も痛烈。女性ツインヴォーカルはあんまりKAWAii要素は押し出さずに、メタル・サウンドを女性歌手が歌っているように演出。アイドルポップ的な要素はあえて削っている。
ミッドテンポで進む中で荘厳なコーラスやアコギ、ピロピロのギターなどアイデアを放り投げた#4「煩悩-IMITATION-」、近年のピコリーモ勢に触発されただろう#5「幻惑-CHOCOLATEBITS-」、#6「空色-SOLUTION- 」といった後半の曲でも破壊衝動を上塗り。
ヘヴィなリフを活用しているものの、荘厳なシンセやツインヴォーカルでアニソンチックに落とし込まれた#7「流星-CRIME-」だけは少し感触が違いますが、全体を通すときらびやかで激しいサウンドに仕上がります。
ANCHANG、オレンジに負けない愛媛の心がこの作品にはあったぜ。
The Crest Of Evil(2015)
1stフルアルバム。全13曲約55分収録。ほとんどの楽曲の作詞作曲をWhen My Life is Overの元メンバーである遠藤元気氏やALFREDの山下智輝氏が手がけている。
ブックレットのSpecial Thanks欄には、島紀史氏(CONCERTO MOON)やKEN’ICHI氏(ex.SEX MACHINEGUNS、現LOKA)の名前が記載。
これまでのリリース群で北欧メロデス~メタルコアを軸に攻勢をかけてきた彼女達。全て新曲で構成された13曲を収録した本作でもその路線は継続。聴いているとチルボドやIn Flames、Unearthといったバンド名がやっぱり浮かんできます。
イエテボリ風のリフ、消臭力が必要なクサいギターソロの刺激は強い。#2「蒼天-Paradox-」では猛烈メタル運動会で興奮とお涙頂戴。#8「闇-Happiness-」に関してはX JAPANのドラマティックさがあり、BABYMETAL「紅月」辺りを意識してそうな印象もうけます。
シンセによるキラキラ感を搭載してエレクトロコア~ピコリーモもきっちりと流用。それらを統合して、直球でガツンとくる作品に仕上げています。
#5「饒舌-DieOut-」は一番その傾向が強いフロア型の曲だし、#6「唯我-Vainglory-」や#11「狼煙-Action-」辺りも今時のピコ・メタ(ル)・チャラ感バッチリの楽曲といえるはず。
東しおりさんと寺谷さんの歌唱も初期の作品から比べると安定。前年に47都道府県ツアーを完遂したこと、ラウド~メタルサウンドの理解が手伝い、芯の強い声を聞かせるようになっています。
本作のラストを飾るダークなシンフォニック・メタル調の#13「静寂-Lacus-」ではその進化を一番に感じ取れる。しかもこの曲はクワイアとかストリングスも入ってて、製作陣の挑戦という意味合いも強い。
Janne Da Arcっぽい#3「偉人-CleverDick-」みたいなひねりもあるし、最近のV系ヘヴィロックのメソッドを使った感ある#11「殲滅-Effect-」も周到に用意している点も良いですね。
前作に続いてメタル・ハート度の高い楽曲を揃えて押しまくるのは、そういった牙城を崩したい意図があってのことだろう。『疾風迅雷』から『質実剛健』へと練り上げた作品からは、”エヒメタル・レジスタンス”の轟砲が鳴っています。