【作品紹介】IAN『Come On Everybody, Let’s Do Nothing!』

 2000年代初頭にUKの音楽シーンで活躍していたという面々がパンデミックの最中に集まって結成された5人組。イースト・ロンドンを拠点に活動。音楽的にはポストロックとポストメタルの両面に強い磁場を持っている。

 本記事は2025年10月にリリースされた1stアルバム『Come On Everybody, Let’s Do Nothing!』について書いています。

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作品紹介

Come On Everybody, Let’s Do Nothing!(2025)

 1stアルバム。全5曲約45分収録。Bandcampのリリースインフォによると、2000年代初頭のUKパンクシーンの面々による新しいバンドになるそうです。25年に及ぶキャリアを持つベテラン勢が集まっているわけですが、その音楽性はポストメタルと室内楽的なサウンドが組み合わさったイメージが近い。

 ツインギター、ベース、ドラムに加えてチェロ専任メンバーを要しており、引き合いに出されるのはNeurosis、Amenra、Godspeed You! Black Emperorといったバンド。一聴しただけでその妥当性は感じるもので、7分以下の楽曲はないという長尺が基本。インストが大半を占めてゆっくりとしたテンポで進行。静と動、軽と重、浮と沈の対比を用いながら前衛的な作風を保っています。ヴォーカルはこの界隈らしい悲と怒を内包した咆哮型ですが、全体の15%を満たすか満たさないかぐらい。

 冒頭を飾る#1「Manuel」から重苦のスラッジを基盤に置きつつも、曲中盤ではチェロが主導するクリーンな音色に安寧を委託する。#2「Building Pyramids」では儀式的なニュアンスを強め、Amenraに憑りつかれたかのようなリフが轟きます。続く先行シングル#3「Fennel」も悲痛な色合いを濃くしていく。

 サンプリングされた子どもの声からストリングスのしめやかな旋律が落ち着いたトーンを提供するものの、中盤からスラッジの土石が頭蓋骨にめり込んでくる#4「Selma」、ゲスト参加によるメロトロンが加わって最もダイナミックに揺れ動く14分近いラスト曲#5「Not Erotic / Cop Film (End Credits)」と終盤も強力。Godspeed You! Black EmperorやA Silver Mt Zionをスラッジ的に増補した印象はありますが、チェロの音の谷間を橋渡すデリケートなタッチがまた静かに心を捕まえる。

メインアーティスト:ian
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MUSIC VIDEO


IAN – Manuel
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