2012年のDeafheavenの日本ツアーのサポート、翌年にはイタリアのハードコア・バンドのThe Secretの招聘に成功し、アンダーグラウンド界で確かな地位を築いた東京のハードコア・バンド。
本記事では2作品を紹介しています。
アルバム紹介
また創るその時のために(2013)
2012年のDeafheavenの日本ツアーのサポート、翌年にはイタリアのハードコア・バンドのThe Secretの招聘に成功し、アンダーグラウンド界で確かな地位を築いた東京のハードコア・バンドの3曲入りシングル。
噂に違わぬダークでメタリックなハードコアは、3曲約13分という短い収録時間にも関わらず、インパクトでかすぎ。鼓膜に刺さる様なスクリームと暗黒鋭利なリフは痛々しく響き、ブラストビートが狂気と混沌を加速。ひたすらヒートアップしていくその苛烈なサウンドは、近年のSouthern Lordのハードコア勢と共振しているかのようです。
しかしながら、血管ブチ切れまくりのテンションの狂乱に、叙情的なパートを綿密に組み込んでくる辺りが非常に巧み。”激”の方面に振り切れているとはいえ、その辺りの抜かりなさがISOLATEのサウンドをより強固なものにしています。
アルペジオを主体にheaven in her armsのような美麗さを持ち込み、曲終盤からは激速激情の殴打地獄が訪れる#1「塗り重ねた虚像の果てに」に、本作では特にガツンとやられます。
また、ブラストビートとトレモロが煉獄へのレールを敷く#2「狂う影に合わせて」、激速パートが、視界も聴覚も歪むドゥーミーなサウンドが主体となっている#3「落日」も強力。
本作の特典となっている昨年の「壁画」ツアー・ファイナルでの約40分に及ぶライブ映像も衝撃的。
ヒビノコト(2014)
結成7年目にして完成した1stフルアルバム。昨年にリリースされた3曲入りEP『また創るその時のために』のインパクトはとても強烈でした。加えて、イタリアのハードコア・バンドのThe Secretを招聘して行った共闘ツアーも好評。
そういった経験をきちんと血肉化し、結晶化した待望のフルアルバム『ヒビノコト』で満開の黒花を咲かせている。
インタールードの#1「鼓動」が奇妙な効果音ととも幕開けを告げると、#2「解纜」が日々のストレスや怒りを燃料に、フルスロットルでぶっ飛ばす。
吹雪くトレモロ・リフ、散弾銃のごときブラスト・ビート、日本詩を痛切に叫び続けるヴォーカル。激情ハードコアやポスト・ブラックメタルといった要素を自ら研ぎ澄ませてきた音像は、本作において重く強く深化を遂げ、黒と赤が渦巻く混沌をより色濃くしていく。
続く#3「閉ざされた中で」や#4「航路の先」は、前EPでも感じたSouthern LordやDeathwishのブラッケンド・ハードコア勢を喰わんとする苛烈さにブチのめされるし、ミッドテンポを軸にツインギターが轟音壁を築き上げる#6「蝕」もまた容赦無し。
美しいアルペジオで緩やかに織り上げながら終盤で激音が雪崩のように襲いかかる#8「美徳の勘違い」では、envyやheaven in her armsといったバンドの流れを汲んだ展開を見事にモノにしているように感じます。
本作の大きな特徴として、バンドが前進し続けていることを証明するために過去作の再録等は一切せず、全15曲が新曲のみで固められていること。
各所に設けられた4曲のインタールードが美的バランスを整えつつ、それ以外ではひたすら火炎地獄を見舞う激烈曲のオンパレードで攻め倒す。「過去は振り返らず、最新こそが最高のisolate」というこの意気込み。これこそが本作を並々ならぬ熱量と破壊力を持つものへと仕上げています。
日々の鬱憤で爆発した感情とともに脱輪するまで猛然と突っ走る#10「裏側の微笑」~#11「屁理屈」~#12「薄氷上」の三連撃は特に痛烈。殺気、激情、怒気などのあらゆる感情を全部乗せトッピングで掻き鳴らすエクストリーム・サウンドは、#14「歪」~#15「終末」と繋がっていき、悲壮と厭世に満ちた世界をより混沌としたものへと変えて幕を下ろす。
激と美の鬩ぎ合いが生むドラマティックな展開の果てに、叙情的なツインギターの調べが虚無感を広げていく#15「終末」で、何ともいえない余韻が心の内を埋め尽くしたまま呆然と迎える終わり。
それはこの『ヒビノコト』の重みと深みを実感させるようであり、全15曲39分には生々しくリアルな衝動が詰まっていることを訴えています。「清く正しくあれ」なんて言葉も黒い太陽のごとき本作がもたらす灼熱にかき消される。
歩んできた日々の想いもハードコアへの想いも詰め込んだ大和激音。