1996年に結成された大阪府枚方市出身の5人組ヴィジュアル系ロックバンド。中学~高校時代の友人同士で結成。yasu(Vo)、you(Gt)、ka-yu(B)、kiyo(key)、shuji(Dr)の5人で活動しました。
バンド名は、15世紀のフランスの英雄ではなくて、漫画『新デビルマン』に登場したジャンヌ・ダルクが直接の由来。
yasu氏の不思議&失恋系&アダルトチックな歌詞、演奏陣の高い技量を基にした楽曲で、インディーズ期から注目を集めます。その後、「ヴィジュアル系バンドの最終兵器」なる触れ込みで1999年にメジャーデビュー。
02年にリリースした3rdアルバム『GAIA』でチャートTOP10入りを果たして以降は、不動の地位を確立。シングル「月光花」のヒットもあり、存在感を大いに示しました。
しかしながら、2007年に活動休止、復活することはなく2019年に正式解散。yasu氏は休止後からすぐにAcid Black Cherryとして活動しています。
本記事では、インディーズ期のミニアルバム3作とフルアルバム6作について書いています。今こそ聴いてLunatic Gateに連れて行ってもらってください。
アルバム紹介
Dearly(1998)
1stミニアルバム。全8曲約38分収録。インディーズ・リリースの最初の作品ですが、ジャンヌの原点と実力を十分に知れる作品です。
ラルクや後期DEAD ENDにも通ずる”白”をイメージする幻想的な歌もの#2「Fantasia」、ハードでエッジが効いたサウンドと疾走感に加えてアダルトな香りをのっける#3「Judgement-死神のkiss-」からスタートする本作。
優しいナンバーはとことん優しく、激しい曲はとことん激しくと意識づけられています。それらを実現するyasu氏のハイトーンやYou先生の速弾き等のギターテク、リズム隊の安定感とヴォーカルも楽器隊もハイレベル。
またヴィジュアル系では珍しくキーボーディストが専任メンバーとしている強み。kiyo風呂先生が明暗のバランスを取ったり、ジャズチックなオシャレ感、ゲーム音楽的な側面を加えたりと変幻自在に味付けしています。
和フレーズやブラスのアレンジによるフックがあり、#4「More Deep」には中盤に各楽器陣の見せ場があり、#6「Confusion」がマンガ『寄生獣』をモチーフにしていたりとそれぞれアクセントが上手くついている。
光の住人にも闇の住人にもなれるポップさとハードさを持ち合わせていること、またHR/HM~プログレ~フュージョンに通ずる技術を本作では堪能できます。
Resist(1998)
2ndミニアルバム。全6曲約30分収録。前作から8ヶ月ほどのスパンでリリースで、前作と比べると音質がはるかに向上。そしてジャケットのようにダークでハードな色が濃くなったのが特徴です。
冒頭を飾る#1「ICE」から妖しいカッティングギターとベースライン、そしてヴィジュアル系らしいドラミングが曲を引っ張ります。
全体を通して後の1stアルバム『D・N・A』から2nd『Z-HARD』につながる変化に近い印象。それでもDEAD ENDへのリスペクトが感じられる#3「Misty Land」、ジャズチックに装うシャッフルナンバー#5「Lady」と曲のレンジは保っています。
また初期の重要曲を2曲収録。ひとつめの#4「Hunting」はライヴで定番曲となる劇的な疾走ナンバーであり、終盤の楽器陣のバトルがスゴイです。
そしてふたつめの#6「Stare」はLUNA SEAの「WISH」を彷彿とさせる部分があり、闇から解き放つような光とポップ性をまとう大団円を迎えます。ちなみに同曲の続編となるのがシングル曲『NEO VENUS』です。
ダークでハードとはいえジャンヌらしいキャッチーさは貫いていて、どの曲も個性的。そしてインディーズ期では最もまとまりを感じさせる作品です。
CHAOS MODE(1999)
3rdミニアルバム。全6曲約31分収録。今度は前作から4カ月のスパンでリリースされたインディーズ期ラスト作。前作よりも光量とポップ性が増していますが、より攻撃的に感じるのは疾走曲の鋭さから。
目玉はなんといっても#2「-R-TYPE 瞳の色」でしょう。クラウチング・スタートのごときドラムソロから終始メロディアス・ハイスピード・ハードに畳みかける初期人気曲。ちなみにタイトルはシューティングゲーム”R-TYPE”に由来しています。
そして、エロのボーダーを軽々超える疾走チューン#5「Labyrinth」。ウォッカに酔ってもカラオケで絶対に歌うなレベルのアダルトな歌詞であり、キレキレの演奏と疾走感も手伝ってヤバ目のアドレナリンが出てきます。
しかし、メジャー以降の「Heaven’s Place」や「will~地図にない場所~」といったバラードに受けつがれる原型に思える#4「…song」の存在もあり、前作に比べるとポップ寄りのバランスをとっています。
またkiyo風呂先生のキーボードがゲーム音楽感をさらに増しているのもポイントで、ギターソロとベースソロのバトル+北欧ネオクラシカル的な#6「Strange Voice」も強烈。
本作を置き土産にジャンヌはメジャーへと旅立ちますが、インディーズ期3作はどれも聴き逃してほしくないクオリティを誇っています。
なお、2006年には結成10周年を記念して本作を含むインディーズ期3作品をまとめた『10th Anniversary INDIES COMPLETE BOX』が5万枚限定発売。そちらでは「MISTAKE」と「Jesus Christ」の2曲が追加収録されています。
D・N・A(2000)
1stフルアルバム。全12曲約56分収録。”ヴィジュアル系バンドの最終兵器“の触れ込みで1999年に「RED ZONE」でメジャー・デビューを果たした彼等。
冒頭に”じゃない方”の#1「Deja-vu」でいきなり度肝を抜きます。”エイベックスに所属するメジャー・バンドだ、さあ売れてやるぞ!”っていきそうなのに、このバカテク・インストを1曲目に持ってくる。あまりに大胆。さすがに最終兵器だけあります。
インディーズ期のミニアルバム3枚で既に実力は証明していましたが、本作は1stアルバムにして最高傑作と言いたくなる充実度です。Janne Da Arc全部入りってぐらいのバラエティ豊かな曲調。
彼等らしさを示したエッジの立ったハードロックとエロティシズムが効いたシングル#8「Lunatic Gate」と#10「RED ZONE」があって、シンフォニック・メタル風味の#2「Vanity」があって、ダークなメタル・ナンバー#10「Junky Walker」と攻撃的な曲が揃います。
後のシングル曲にも繋がっていく切なさ+ポップ+疾走感が見事な#4「EDEN ~君がいない~」、初期の名バラードにして最強の桜ソングこと#7「桜」、失恋切な系最高峰#11「ring」とメロディアスな曲の品揃えも抜群。
幼児虐待をテーマにして重くダークな作風を貫いた#5「child vision 〜絵本の中の綺麗な魔女〜」も存在感を放っています。
ヴィジュアル系ロックからHR/HM、プログレ、ポップスまでを自由自在に操る演奏技術とアレンジ力は、初期からレベルの高さを伺えます。
後にAcid Black Cherryに合流していくことになるラクリマ先輩やSIAM SHADE先輩たちと重なる部分ですね。
また、キーボード専任のメンバーがいることでの他バンドとの差別化も大きい。その音色ひとつ増えることでのクッション性と響きの豊かさが、彼等を語る上で欠かせない(kiyoさんはブログの人になっていくけど)。
バラエティに富んだ楽曲群の中でジャンヌらしさを貫いた本作を聴いていると、既にバンドは完成系と思えるほどです。わたしが一番に勧めたい作品。
Z-HARD(2001)
約1年ぶりとなる2ndフルアルバム。全11曲約44分収録。Z-HARDとは”聖戦”のこと。
先行シングルは、エロティズムとハードのギアを挙げて#11「Mysterious」、#4「Dry?」と続いていました。彼等は乾かせるよりも激しい演奏で濡らしてきてたわけです。
その流れを強めたダークなハードな作風は、前作よりも的を絞ったといえるし、自分たちの強みに焦点をあてたとも言えます。一番HR/HM寄りで、youさんを始めとした楽器陣のテクニックを堪能できます。
ヘヴィ&メロディアスな曲調にサディスティックな掟でくくりつける#5「7-seven-」、イントロのスラップ・ベースからギターとキーボードが暴れ放題の#8「WARNING」辺りはそうでしょうか。
もちろん、メロディアスな曲もしっかりと担保。曲順を変えてこの曲で終わった方がよかったんじゃないかとも思う#10「Dear My…」が、染みるアコースティック・バラードとして余韻を残します。
シングルカットされた#6「NEO VENUS」のラルク的な爽快感とメロディアスさもまた心地よい。
その中で本作はなんといっても#2「-救世主 メシア-」の存在が挙げられます。バンドの代表曲として長らく君臨するハードな疾走チューン。15世紀の百年戦争末期、フランスの窮地を救う転機となったオルレアンの解放を指揮した少女、”ジャンヌ・ダルク”をモチーフに書かれた曲。
史実を自身のテーマソングとして創り上げる。ギターソロも鬼ですが、アウトロでツーバスでスイッチを入れてさらに勢いを増していくのが、アルバムのエネルギーに繋がっています。
イカせて!すぐイカせて!と叫んでる本作は、ジャンヌの激しさが際立だったフルアルバムです。次作からはDryに生きてくことを彼等は選んでるわけですが、その選択は以降の成功があるので間違っていない。
GAIA(2002)
岡野ハジメ氏をプロデュースに迎えた3rdフルアルバム。全12曲約52分収録。「音楽的に洗練されたモノを作ろう」という共通認識がバンド内にあったとインタビューで語っています。
それはDEAD ENDやL’Arc~en~Cielを手掛けている岡野氏との連携による効果もあるでしょう。バンドの個性を損なわない形でポップを柔軟に取り入れているように感じます。
表題曲#1「GAIA」が幻想的でありながらも開放感のあるつくりで聴き手を一気に引き込む。すぐに妖しくハードな#2「セル」で畳みかけます。この曲におけるベースソロから高速ギターソロへの橋渡しがいかにも強烈。いかにもyasu氏らしいサディスティック切なげ疾走曲#3「sister」と続く。
これまでの楽曲で最もヘヴィな印象を残す#6「GUILTY PAIN」といい、シングルはキャッチ―な疾走曲が続いていましたが、アルバムは攻撃的な姿勢を崩していません。本作から確かに感じるのは、ヴィジュアル系っぽさが薄まったこと。
でも、yasu節が板についてきているし、演奏隊は自在に曲調を操るほど演奏力とアレンジ力があるので、バンドとしては強いなと感じます。
#7「ZERO」を起点に後半はメロウな曲調が増えますが、未練たっぷりの歌詞ですが優しい聴き心地のミディアム・チューン#8「still」、落ち着いた歌もの#11「plastic」が強いメッセージと共に響いてくる。
ストリングスを取り入れたドラマティックな疾走曲#12「シルビア」が見事な締めくくり。
本作で初のチャートTOP10入りを果たします(初登場6位)。以降は、右肩上がりでセールスをあげていくので彼等にとってのターニングポイントといえる1枚かもしれません。
ANOTHER STORY(2003)
4thアルバム。インディーズ期のミニアルバム『Dearly』以来、久々のコンセプトアルバム。
yasu氏が執筆した同名のファンタジー小説と合わせた作品となっており、オルゴールと井上あずみさんの声で綴られる#1「1/5の音箱」から始まって、全16曲を通して一貫したストーリーを奏でています。
アルバムの核となっている美しいバラード#15「Rainy~愛の調べ~」への伏線になるべく、流れを重視して楽曲を配置。マドモアゼルな野郎だったyasu氏がコンセプチュアルおじさん化していく発端がここ。
しかしながら、本作は聴いててもコンセプトアルバムという感じがあまりしていません。わたし自身が同名小説を読んでないというのはありますが、その点を気にしなくても聴ける作品です。
コンセプト作としては作り込みが弱いし、それはAcid Black Cherryになってからの方が理想に近づいていますね。
『GAIA』からの手堅い一歩としてさらなるポップ化。アニメ主題歌となった#16「Shining Ray」の印象が強すぎるからでしょうか。#8「What’s Up」や#9「PARADAISE」のようにやけに弾けている曲の存在もあるからでしょう。
相変わらずバラエティ豊かではあるのですが、#3「マリアの爪痕」や#5「赤い月」のように昔の風情/彼等らしさが感じられる曲を揃えてもらった方がうれしいかな。
RPG+Dream Theater的な#2「In The Story」、これまでに無く男臭さ全開のヘヴィ・チューン#10「explosion」等のハードな曲が変わらずに作品を引き締めています。
そして、ジャンヌを語る上で欠かせない#12「ヴァンパイア」の存在感。どんなコンセプトを並べてもヴァンパイアしか勝たん、それほどエッジィでアダルティな名曲。ちなみにライヴではyasu氏がヴァンパイアすることでも知られています。
ARCADIA(2004)
約1年5カ月ぶりとなる5thフルアルバム。3週連続リリース・シングルを含む、いずれもヒットを飛ばしたシングル5枚を収録した本作のテーマは「原点回帰」とのこと。
初のセルフ・プロデュース作になったことについては、次に誰にプロデュースしてもらうか考えたけど、今回はいなかったことが要因。
某掲示板を風刺したという#1「ACID BREATH」、勢いをさらに加速させるシングル#2「ROMANCE」、Z-HARD期のヘヴィ&ハードで畳みかける#3「Heavy Damage」と初期のジャンヌを彷彿とさせるスタートダッシュ。
SIAM SHADEの「Triptych」に触発されたようなインスト#7「ATHENS」、随所に炸裂するツーバスが物語るようなスピード感が魅力の#9「WIZARD」といった曲でも攻めております。
キレイにまとまってたまるかという反骨心があったのか。ちょっぴりのエロスあり、前作と前々作以上のハード&ヘヴィさがあり。とはいえ、そつのない原点回帰という印象もあり、昔ほど楽曲から匂い立つものや濃さはあまりないです。
バンドとして何でもできる、ってのが逆に良くない弊害になってる気がする。曲のクオリティの高さは確かですが、初期の心をざわつかせる感じをもっとくれ!って思ってしまいます。
ストレートすぎるけどそれが逆に素晴らしく思える#4「DOLLS」が、わたしとしては本作のベスト。シングルで聴いた時よりも断然アルバムの中にポンっと置かれた状態、作品の流れで聴く方がグッとくるものがあります。
JOKER(2005)
ハイペースすぎる約11カ月ぶりの6thフルアルバム。2007年に活動休止し、2019年4月に解散しているのでオリジナル・アルバムとしては本作が最後です。
30万枚以上のセールスを記録したJanne Da Arc史上、最も売れたシングル#3「月光花」収録。
印象で言えば、幅が広がったなということ。yasu氏の全編に渡ったローボイスと英詩が響きわたるヘヴィなミドル・チューン#1「in silence」から意表を突きます。
kiyoさん作曲の控えめで妖しげな中に美意識を覗かせる#6「仮面」、タイトル通りにファンキーでブラス・パートも導入した#9「easy funky crazy」。
さらに本作で最も激しい曲でゴシップな世にF●●Kする歌詞、スラップ多用のベースソロ、リズム隊とギターソロがバトルしていく強烈な#10「Mr.Trouble Maker」と初期厨のわたしにとっては驚きがありました。
大ヒットとなった#3「月光花」は余りにも儚いバラードで、さらに多くのファンをバンドに引き込みました。本作はそういった新規ファンを驚かせるし、振るいにもかけています。
ポップあり、ハードあり、プログレありのジャンヌ節は確かに効いており、程よく甘ったるいけど刺激は強め。ジャンヌの王道的な#2「ツメタイカゲロウ」があり、キャッチ―かつ疾走感があってロックマンしている#8「WILD FANG」もある。変幻自在に振る舞える演奏力は流石の一言です。
特に好きなのが最後の2曲。スマトラ沖地震の被災者にあてた曲ですが、年を重ねていくごとにそれだけにとどまらない追悼と愛を送る#12「風にのって」の素晴らしさ。
そして”ダイヤモンドヴァージン乙女”ってなんだよとつっこみ続けて10数年、未だに聴き続けている#13「ダイアモンドヴァージン」が締める。「Lunatic Gate」もそうですがサビでツッコミどころのある歌詞の疾走曲が、自分はジャンヌの中で特に好きらしい。
本作以降となる2006年にシングルを出していますが、2007年1月に活動休止。12年経った2019年4月に解散発表。その活動に幕を下ろしました。
どれを聴く?
Janne Da Arcはどれから聴けばいいか、教えて!
バラエティに富んだ楽曲群の中でジャンヌらしさを貫いている『D・N・A』がオススメです。、1stアルバムながら既にバンドは完成系と思えるほどです。一番に聴いてもらいたい作品。
ちなみに私が一番好きなのは『Z-HARD』です。激しくハードなのが好きなので。
ということで今こそジャンヌを聴いてLunatic Gateに連れて行ってもらってください。