【作品紹介】Noctambulist、オランダ産ポストブラック

 2016年から活動するオランダのポストブラックメタル5人組。本記事はこれまでに発表されているフルアルバム2作品について書いています。

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作品紹介

Noctambulist I: Elegieën(2021)

 1stアルバム。全6曲約48分収録。ポストブラックメタルに入るバンドではありますが、本作はブラックの要素が勝り気味。トレモロリフとブラストビート、がなりと金切り声(クリーンボイスはほぼ無い)といった欠かせないパーツが陰鬱の破片を散りばめる。

 一方でポストロックやシューゲイザーに感化されたメランコリックなサウンドが暗闇に待ったをかけます。#3「De leegte wenkt」はわかりやすくバンドの性質が表れる。加えて巧みな加減速の妙があり、1分強の導入インスト曲#1「Elegieën」を除いて1曲平均9分の中で心揺さぶる展開を有しています。

 本作は終盤2曲が聴きどころ。オランダ語で歓喜を意味する#5「Vreugd」はメランコリックな旋律が耳を引く序盤から激走が入り、アンビエントの時間も交えながら夢想する時を奏でていく。

 そして14分にも迫る大曲#6「Kraaienmars」。しんみりとする叙情的なスタイルに寄せながらも、所々でブラックメタルの苛烈さが暴発。その上でストリングスアレンジを加えた終盤に胸を打たれる1曲となっています。

メインアーティスト:Noctambulist
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Noctambulist II: De Droom(2025)

 2ndアルバム。全9曲約45分収録。Bandcampを参照すると、明確なコンセプトとまではいかないものの住宅所有について考えを巡らした作品だそう(あまり深く解説はされていない)。それが廃墟と化した別荘のベッドルームを撮影したジャケットに反映されています。

 陰鬱な処方を繰り返した前作と比べ、本作は陽性のポストブラックへと踏み出していることが印象的です。また長くても6分台に収め、1曲をコンパクトにしながらも揺れ動きのあるものへと構築。メロディのキャッチーさやシューゲイザーの深霧に覆われる場面は多くなり、そのスタイルを押し出した#2「Petrichor」や#4「Godvormig Gat」辺りは、4thアルバムのDeafheavenやUnreqvitedといったバンドが浮かぶ。

 とはいえ、ヴォーカルは端正な歌声を披露しているところもありますが、音像とあまりマッチしてないデスボイスが主体。歌唱に関しては前作のサウンドの方が合ってる感じがしますので、本作においては好みが分かれそう。それが獰猛さと邪悪さを手放していない証拠ではありますが。

 しかしながらポストパンクと90年代ヴィジュアル系の雰囲気が組み合わさったような#3「Aderlater」、ギターの独奏からポストブラック的な突っ走りでぶちあげる#6「Gevoelsmens」といった楽曲もあり、多様なフックは聴き手を惹きつけてくれます。

 詞に関しては#1「De Droom」の冒頭から”夢は死んだ”とはっきり言い、#8「Vinex」では”希望は利益にならない 希望にも税金がかかるから”と絶望に打ちひしがれた人間を代弁。サウンドの明るさと詞の暗さ、ある種のバランスは取れた作品といえるかもしれません。

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