【作品紹介】Penfold、90年代エモの隠れ名バンド

 主に1995年から2003年まで活動したニュージャージー州出身のエモ・バンド4人組(1997年始動と書いているところもあるが、Count Your Lucky Stars RecordsのBiographyを参照した)。1st EP『Amateurs & Professionals』、1stアルバム『Our First Taste of Escape』は共に90~00年代エモの名盤に挙げられるほどで、隠れた名バンドと知られる。

 解散後に何度か再結成を果たしており、2012年7月にはおそらく最初で最後であろう来日ツアーも行いました。

 本記事は1st EP『Amateurs & Professionals』、1stアルバム『Our First Taste of Escape』に加え、Penfold解散後に3人のメンバーが中心となって活動した後継バンド、The Moiraiの唯一の作品『Bury Yourself』の3作品について書いています。

タップできる目次

作品紹介

Amateurs & Professionals(1998)

 1st EP。全7曲約36分収録。90年代エモの隠れ名バンド的な立ち位置にいると思われるPenfold。ミドルテンポを中として繊細なアルペジオを丹念に重ね、要所で感情と音を荒げて爆発させるのが基本的なスタイル。1曲平均して5分強ほどでじっくりと煮込むように展開する。言うなればエモに定評のあるMineral型ですかね。

 清らかなアルペジオとナイーヴな歌を乗せた序盤から内に秘めた激しさを表出していく#1「June」、女性コーラスを交えながらドラマティックに展開する#2「M」、”絵に描いたような空と輝く星は、私たちにあの頃を思い出させる“という歌い出しから”泣き”の要素が昇華されたバンド屈指の名曲#3「「I’ll take you everywhere」。これら前半の流れは初期衝動の中に行き渡る儚さと哀愁がたまらない。

 次作以降の全楽曲を含めても最も激しい部類に属する#5「Traveling Theory」の昂ぶり、バンドの旨味が凝縮したラスト#7「Amateur Standing」と注目曲は多い。

 ちなみにCount Your Lucky Stars Recordsからの再発盤されており、コンピレーションアルバム『The Emo Diaries Chapter Three: The Moment of Truth』に提供した「Microchip」がボーナストラックとして8曲目に収録されています(Bandcampで購入可)。

Our First Taste of Escape(2001)

 1stアルバム。全12曲約52分収録。Bandcampのメンバーコメントによると”感情的なレベルでの死との最初の出会いについて書かれた作品である。親しい人を失って初めて味わうこと、そしてその後に続く内的な独白。このアルバムは希望の感覚に裏打ちされた、ドラマチックで哀愁を帯びたものになった“とあります。

 具体的にはBrian Carleyの祖父の死が強く関係。その影響からか前作と比べると落ち着いた印象を受けます。アルペジオの多用、静と動のダイナミクス。主要素は楽曲の生命線としてもちろん活用されていますが、ファルセットの頻度が増えたり、#4「Human Drama」や#10「Kissing the Nightmare」の序盤で心地よいベースラインが引率したりと柔らかな表情付けが目立つ。

 キーボードも用いるようになっていますし、細かなテクスチャーを丹念に重ねることで本作の感傷的なムードを決定づけています。そういった静の部分に重きを置くことで、前作の流れを汲む衝動的な#3「The Secret Nine」、湿っぽい前半から演奏陣が力強く爆発する表題曲#6「Our First Taste of Escape」といったエモーショナルな楽曲の存在感が増している。

 特に好きなのは#8「Sound of Jazz」。しっとりとしたメロディに彩られていく中、”目を覚まして、背筋を伸ばして 彼らはドアの外で待っている 立ち止まることはできない スピードを落とせば、たどり着けない“と声枯れ気味に荒げて歌うパートに胸が痛みます。

 90年代~00年代初頭、”あの頃のエモ”に変な脳汁出る人は本作を聴き逃していないと思いますが、そうでない方にもオススメしたい作品です。

 なお2024年12月中旬に『Our Last Taste of Escape』と改題されて本作の再録盤をリリース。”今聴くと、オリジナル・バージョンとこのバージョンの違いに本当に気づくのは僕らだけだろうと思うことが多い(参照:Bandcamp)”とコメントしており、聴き比べ推奨。私は少し違うにぐらいしか感じませんでしたので、みなさん聴いて教えて。

メインアーティスト:Penfold
¥1,600 (2025/04/01 19:05時点 | Amazon調べ)

Bury Yourself(2005)

 こちらはPenfold解散後に、フロントマンであるBrian Carleyを含む3/4のメンバーが中心になって結成されたバンドの1st EP。2025年1月以前は別記事にしていましたが、1作品だけなのでPenfoldの記事に含めました。全8曲約40分収録でフルアルバム並のボリュームですが、公式ではEP扱いなのでそこに準じます。

 内容はPenfoldの旨味がある中にエレクトロ要素を加算。静謐な鍵盤の音色を配したドラマティックなエモ・サウンド#3「Terrible Secret」、前バンドからMoiraiへの進化を如実に表す名曲#6「Bury Yourself」と変化を感じさせます。その上でBrian Carleyのヴォーカリゼーション、繊細なアルペジオを多用したPenfold節は健在。

 Pele風の小気味よいギターの組みたてと歌の求心力に引き込まれる#2「Water is the New Fire」、じわりじわりと胸を締め付け、後半にかけては声を枯らしながらの叫びがインパクトを残す#5「Dear Allison, I Am Not a Cynic」。これらを聴いているとかつての感触を思い出す人も多いことでしょう。

 延長上の中に新たな自分たちを見せる。それでも、こんなにも涙腺が緩むエモーショナルな楽曲を生み出せるのは、やっぱり彼等だからと改めて感じさせます。なお、Moiraiは本作を残して2年という短い活動を終えています。

お読みいただきありがとうございました!
タップできる目次