「インテリジェンス・プログレッシヴ・エモ」とも評される音楽性でコアな層から支持を受けるUKの5人組。2014年に待望の1stフルアルバム『Salvage Architecture』を発表した。本記事ではその1stアルバムについて書いています。
Salvage Architecture(2014)
2枚のEPから6年を経てリリースされた1stフルアルバム。メンバーは医者や弁護士、会計士を職業に持ち、さらにヴォーカリストのDanに関しては、かつてTesseracTで活躍しました(現在は脱退)。そんなインテリジェンス集団が一体となってPIANOを形成しています。
本フルアルバムで彼等の作品を初めて聴く身。華麗な構成美と蒼いエモーションの融和に胸を打たれました。プログレッシヴ~Djent的な演奏を下地に入り組んだ展開を成し、それでいてしなやかにメロディや歌を聴かせる工夫が効いています。メタリックなサウンドや変拍子を交えながらも、優美でアトモスフェリックな空間を紡ぐ本作のリード曲#3「Disappearing Ink」は、その特徴が大いに表れている。
マスメタルを包括しつつ、叙情の波紋を広げていく#5「Dust to Dust」や#9「Ruin Ethics」も同様。ファルセットを使いこなしながら情念を放っていくヴォーカルは、蒼さと艶やかさがいい塩梅となっているし、キーボードの清らかなアレンジがドラマ性に拍車をかけている。
細部にまでメロディに気を遣い、流麗でドラマティックな展開とともに涙腺を緩める7分超の#6「Neptune」もまた秀逸だ。スペーシーなサウンド・デザインがもたらす浮遊感や柔和でウェットな質感は、彼等自身の特性。攻撃的な振る舞いも多いし、どこか憂いを帯びてはいます。ですが、一貫して叙情性/芸術性を重んじたメロディアスな作風となっている点は、聴き易さにつながって強い魅力となっています。
ヴォーカルや演奏隊を含めてAnathema的な光とロマンを感じさせる#7「Forensics」、透徹した壮大で美しいハーモニーが宇宙へと響き渡る#10「In Memoriam」といった曲は、前述の要素にフォーカスを当てたであろう良曲。越した演奏、蒼きエモーション、珠玉のメロディが贅沢なまでの上質な味わいをもたらす本作は、6年の歳月の中で自らの音楽性をスタイリッシュに磨き上げた賜物。