【作品紹介】Summer Fades Away『Endless』

 2008年から活動している中国・長沙出身のインストゥルメンタル・バンド。00年代に隆盛を誇った轟音系ポストロックをベースにした音楽を展開する。2011年に1stアルバム『Time Flies and Memory’s Cruel』、2012年に2ndアルバム『We Meet the Last Time,Then Departure』を発表。そして2025年4月に13年ぶりとなる3rdアルバム『Endless』をリリースした。

 本記事は、2025年4月にリリースされた13年ぶりのアルバム『Endless』について書いています。

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作品紹介

Endless(2025)

 3rdアルバム。全7曲約58分収録。アルバムとしては実に13年ぶり。わたしは本作で初聴きで、以前の作品は聴かずに本稿を書いています。Summer Fades Awayは中国・長沙出身のインストゥルメンタル5人組。今ではもはや”古き良き”という言葉を当てはめざるを得ない、轟音系ポストロックに分類される音楽を展開しています。

 10分を超えるオープニングの大曲#1「June Yui」はそれを物語る。繰り返されるスネアの上に被さるクリーントーン、トレモロ・ギター。4分過ぎに突如として吹きすさぶ音の嵐は、その後にゆっくりと凪ぎ、映画音楽やクラシカルな風合いを交え、劇的なクライマックスへと向かっていく。冷ややかで儚いフレーズ使いや轟音からはMONOを想起させますが、この曲は特にそう感じさせる曲です。

 長沙市の西部にある観沙嶺をタイトルに冠した#2「Guansha Ridge」はピアノの助太刀が事あるごとに入り、美しいメロディに拍車がかかっていく。そして、#3「At Last, It Fades」のGod Is An AstronautやHammock的なノスタルジックなトーンは静かに沁み込んでくるもの。最も安らかな時間に浸れるとはいえ、4分過ぎからのギターフレーズは強く胸を打ちます。

 繊細さと壮大さの演出。中盤から後半にかけてはその傾向が強まります。ペダルを踏んで魔法をかけ、男性ヴォーカルや合唱団によって言葉を吹き込み、ストリングスやホーンが楽曲を引き立てる。過剰気味に感じられるパートがあるのは正直なところ、否めない。しかしながら、それ故にいと盛大。いと美しく。管弦楽器を導入した轟音系ポストロックに情熱的な男性ヴォーカルが絡む#4「The Withering We Knew」、envyの「a Warm Room」を思わせるサウンドが終盤に合唱団が交わっていく#5「The Last Movement」はもはや大作映画の領域です。

 Bandcampによると本作のテーマに”個人の成長、時の流れ、都市や国家の変容を探求すること“があげられています。時の巡り、それに伴った変化は本作から感じ取れる。1曲目が始まった頃は霜が降り始めたばかりの冬模様。それがタイトルからしてシェイクスピアにインスパイアされてそうなラスト曲#7「Shall I Compare Thee To A Summer’s Day」を聴き終えて感じるのは春の息吹。同曲の歌詞には”また歩こう、何度でも“と出てきますが、行きつ戻りつ、人はそれでも時の流れと共に進む。その力を与えてくれる作品がこの『Endless』です。

メインアーティスト:时过夏末(Summer Fades Away)
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