2012年に結成された音楽ユニット。コムアイ、ケンモチヒデフミ、Dir.Fの3人体制でJ-POPやフェスに旋風を巻き起こした。2021年9月に初代の主演・歌唱のコムアイが脱退し、2代目として詩羽が加入。
本記事は前ヴォーカル時代の2作品『ジパング』『SUPERMAN』について書いています。
ジパング(2015)
約1年ぶりとなる5thアルバム。「千利休」や「桃太郎」等は聴いていましたが、作品単位で聴くのは本作で初。ダンスミュージックとヒップホップとJ-POPの洗練が成した技ではありますが、「パンにはやっぱり遣隋使(#8「小野妹子」)」などのおちょくったようなリリックとコムアイの歌唱が新鮮な印象を与えます。
その根底にはリズムの多彩さがもたらす心地よさがあり、自然とノセられているような感覚になってたり。ダンスミュージックと言われると思うけど、敷居的な入りやすさがあるというか。マキタスポーツ氏に”エロくない壇蜜”なる表現をされたコムアイのキャラクターの豊富さで、楽曲を煌めく仕様にしていることが大きい。
全体に漂うエキゾチックな風味はトラック制作者の意図したものでしょうが、ほのかなユーモアと妖艶さはやっぱり彼女によるところ。北海道を題材にした#1「シャクシャイン」のタンタカタンのつかみから、サックスも交えてジャジーな雰囲気をもたらす#10「マッチ売りの少女」の終わりまで全10曲約33分は隙無し。軽快な入り口が入ったらこの味の濃さに病みつきになりそう。そして、私は言う。「ラー」を聴けと。
SUPERMAN(2017)
メジャー1stフルアルバム(通算6枚目)。いつのまにかワイドナショーへの出演やフライデーもされちゃったりと人気者・コムアイ。半年前にミニ・アルバム『UMA』を出したばかりなのに、今が勝負時とにらんでリリース攻勢をかけてきています。
ミニ・アルバムは外部のクリエイターを招いてEDMの要素が強くなっていました。比べて本作はケンモチさんが全曲を手がけたこともあって、以前のような感触があります。そして、ポップで間口が広い。現行のダンス・ミュージックを踏まえ、おちょくるような歌詞遊びとコムアイの軽妙だけど魔法のような魅力を持つ歌声で構成。やはりそれが良くてクセになる。
パッション屋良ばりのコムアイによる「んんー」が聴ける#1「アラジン」、サビがぐるぐる頭のなかで心地よく回り続ける#3「一休さん」など佳曲揃いで、リズム良くさらっと10曲通して聴けるのも強味。水カンは力を入れないことの重要性、自然体というか軟体で聴き手を転がすことの上手さが際立っています。
そして、#5「チンギス・ハン」でジンギスカンがやたら連呼されるけど、調べてそういうことだったのかという事実を知る。水曜日のカンパネラは学習の手引であります。