
ノルウェー西部を拠点に活動している4人組。Jone Amundsen Piscopoのソロプロジェクトに始まって、バンド形態へと移行。Facebookeページの自己紹介欄には”Transcendental North Sea Black Metal”と書かれていますが、音楽的にはポストメタルが最も近い。特にRosettaの影響を強く感じる空間をデザインしたスタイルが特徴。2021年に1stアルバム『Become Ethereal』、2025年に2ndアルバム『Higanbana』をリリースしている。
本記事は2025年9月にリリースされた2ndアルバム『Higanbana』について書いています。
作品紹介
Higanbana(2025)

2ndアルバム。全7曲約40分収録。タイトルは”彼岸花”に由来していますが、ジャケットに描かれているのは彼岸花ではないという謎(参照:ヒガンバナ-wikipedia)。それはさておき、アルバムでは”生命の循環そのものに焦点を当て、死が大地に養分を与え、それが新たな生命を生み出す過程を描いている“とのことです(参照:Doomed Nation記事)。
Sundrownedはポストメタルとポストブラックが8:2ぐらいの割合で配合されたサウンドを基本線に置いています。イメージとしては、RosettaとCult of LunaとMouth of the Architectのトライアングル・オフェンスといったところ。鼓膜へ負担をかける重低音が主要素を担っていて、ヴォーカルも前述した3バンド寄りの咆哮をあげ続ける(クリーンは一切用いていない)。
しかしながら、空間系エフェクターを使ったまろやかで拡がりのある音色がふんだんに盛り込まれており、ヘヴィなサウンドを和らげます。水晶のような煌めきや心地よい時間の流れを感じさせる場面が多く、先に挙げたバンドで最も近いのはRosettaでしょう。#2「The Seed」や#6「Higanbana」における美旋律と轟音を束ねた空間の塗分けには、彼らの影響を感じさせると同時に惹かれるものがあります。
その上でブラックゲイズの要素を効果的に持ち寄っており、#3「Primrose」や#4「Ilex」辺りもブラストビートが出てくるとはいえ、その影響はDeafheavenを煌びやかに歓迎する#5「Wisteria」に特に表れている。そして、ここまで記述してわかる通りにプリムラ、モチノキ(Ilex)、ウィステリア、ヒガンバナと本作は花の名をタイトルに多く冠しています。#4「Ilex」に関しては”身体的接触と、身体が感覚の記憶を蓄積していく過程を探求している,。これまでに私たちが書いた中で最も遊び心にあふれた曲であり、そのエネルギーの中に儚さを宿している“とHeavy Blog is Heavyの記事でコメントしている。
白眉なのは9分30秒にも及ぶラスト曲#7「Jacob’s Ladder」。澄み渡るリバーブの心地よさから時空ごと歪む激しい音が全身を襲い、最後は新しい始まりを告げるかのように鳥のさえずりが聞こえてきます。”アルバム全体に暗いテーマやサウンドが流れているにもかかわらず、『彼岸花』は根底において人生を祝福する作品です”と本人たちはコメント。空間を浮遊する美を重みと共にデザインする。それでも圧迫感より、身も心も不思議と包まれる感覚を持つ作品となっています。
