【作品紹介】TÖRZS『Menedék』

 ハンガリー・ブダペストを拠点に活動するインストゥルメンタル・トリオ。2014年から始動。初期はヴォーカル入りのサウンドを志向するも、2019年にリリースされた3rdアルバム『Tükör』から完全インストへと移行。We Lost The SeaやOh Hiroshimaらとツアーを行い、Changeover Festival 2024への出演、HEMI Music Awards 2022のノミネートなどの実績を持つ。

 本記事は2025年5月にリリースされた4thアルバム『Menedék』について書いています。

タップできる目次

作品紹介

Menedék(2025)

 4thアルバム。全5曲約40分収録。タイトルは訳すと”シェルター/避難所”を意味(補足すると、彼らの作品名/曲名はハンガリー語)。Pelagic Recordsと契約しての6年ぶりのフルアルバムのリリースとなり、創設メンバーだったドラマーが交代しての作品となります。

 私は本作で初聴き。初期2作はヴォーカル入り。前作『Tükör』から完全インストへと移行し、同作はユネスコ世界遺産に認定されているアグテレク・カルストでライヴ録音されたことで話題になりました。本作は前作の流れを引き継いだ完全インスト路線。彼らは例えるなら爆発しないThis Will Destroy You。あるいはツアーを共にした経験もある歌わないOh Hiroshimaといったところでしょうか。

 いきなり13分近い#1「Egy Pillanatban a Végtelen」をオープニングに置くのはいささか勇気のいることですが、クリーントーンのギターを中心に音の連なりと反響を意識した構築が成されていく。特徴に挙げられるのは、TÖRZSは音量をインフレさせることで興奮を約束しません。チェック項目をひとつずつ埋めるように楽曲を丁寧に進行し、旋律のひとつひとつを意識の懐に刻む。そして、その音に浸る。

 ハンガリーのWeb誌・RECORDERのインタビューにて”最近のポストロック・バンドのほとんどはポストメタルに近くて、落ち着いたポストロックが少なくなっている。私たちはメロディーを重視して、思慮深くソフトだから逆に目立つのかもしれない“なんて話をしていますが、抑揚の付け方も瞑想的な雰囲気を邪魔しない範囲です。

 作品が湛える物悲しさを象徴する#2「Levegővétel」や#4「Földet Ér」、肉体も脳みそも労わるようなギターの音色がたゆたう#3「Átfordul」といった楽曲を収録。最後はTides From Nebulaばりの壮大さに近づく#5「Otthon」で締めくくられます。音楽にゆっくりと浸る。それをTÖRZSの密やかな献身は思い出させます。

メインアーティスト:Törzs
¥1,600 (2025/05/28 05:10時点 | Amazon調べ)
\最大9.5%ポイントアップ!/
Amazon
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場
タップできる目次