【アルバム紹介】Oh Hiroshima、兄弟船の歌ものポストロック

 スウェーデンのクリスティーネハムンを拠点としたポストロック・デュオ。ヴォーカルやギター、メインコンポーザーを務める兄のJakob Hemström、ドラムや映像関係を担当する弟のOskar Nilssonから成る。

 もともとは2007年に創設者であるギタリストのLeif Eliasson(現在は脱退)のプロジェクトとして始まり、そこにJakobが合流。ポストロックを探求するレコーディング・プロジェクトとして初期は活動。そこにベーシストやOscar が合流し、2011年にフルバンドとなる。

 同年に1stアルバム『Resistance Is Futile』を発表。2015年の2nd『In Silence We Yearn』はポストロックのコミュニティで話題となった出世作。この作品を契機にNapalm Recordsと契約することになる。そんな成功の裏で2018年、2021年にメンバーが脱退。補充することはなく現在は前述した兄弟デュオとして活動しています。最新作は2024年6月にPelagic Recordsよりリリースされた5th『All Things Shining』。

 Oh Hiroshimaというバンド名に関しては創設者であるLeif Eliassonがつけている。日本の地名を使ったその理由について言及しているソースはないが(Leif Eliassonのインタビューを探したがそもそも存在しなかった)、JakobはSOUNDS VEGANのインタビューにおいて”彼は私たちの音楽のいくつかの面を取り巻く感情、ドラマ性、憂鬱さを捉える何かを望んでいたのだと思います“と推測している。

 ちなみにメンバーの2人はJakob Hemströmが教師として働いており、弟のOskar Nilssonが幼稚園での教育と音響機器設置の仕事をしているのだそう(Nine Circlesのインタビューより)。

 本記事はこれまでに発表されているフルアルバム全5作品について書いています。

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アルバム紹介

Resistance Is Futile(2011)

 1stアルバム。全8曲約36分収録。タイトルは直訳すると”抵抗は無益”といった意。完全に自主制作された作品であり、リリースから10年経った2021年にメンバーはFacebookページの投稿でこうふりかえっています。

 ”最も安い機材と限られたノウハウで、とても小さなラジオ・スタジオで自分たちだけでレコーディングした。特に期待することもなく、ただインターネットに配信した。 ローファイな実験に満ちたDIYの日々だった“。

 Oh Hiroshimaはポストロックといわれる音楽の典型を踏襲。冒頭を飾る#1「This Is Not the End」からメランコリックなギターを重ねながら流麗に展開するものです。煌めくようなディレイ、トレモロが生み出す分厚い壁、そこにエレクトロニックな要素やピアノを取り入れ、ヴォーカルも躊躇なく入れています。

 その中で繊細さと力強さ、澄んだ美しさとダークな側面が同居している。轟音系ポストロックの系譜にあたる#2「Insignificant Numbers」や#4「What Once Was」、精巧に組み立てていくノスタルジア#5「Catch-22」などグッとくる楽曲を多数収録。

 さらにギターのループ手法と四つ打ちをメインに構成する#6「Richard D. Anderson」からはMaseratiの残像がよぎります。Oh Hiroshimaのサウンドは映画的な美しさを持つものであり、静謐にも轟音にも不思議と上品さが滲んでいる。

希望と絶望、静けさと嵐、その間を行き来するこの作品は、決して気の弱い人のための音楽ではない

リリース元であるFluttery Recordsの作品紹介より
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In Silence We Yearn(2015)

 2ndアルバム。全6曲約39分収録。タイトルは直訳すると”沈黙する中で私たちは憧れる”。リリースはFluttery Recordsより。2011年時点で4人編成だったようですが、4人で本格的に制作したのは本作からの模様(Somewherecoldインタビューより)。

 また同インタビューでは”前作は曲をまとめて作曲し、長く連続した1曲のように構築するというアイデアでした。本作では各曲がほぼ独立して、独自の特徴を持つようにしたいと考えました“とも語っています。

 美麗なる轟音インストゥルメンタルという基本形は大きく変わっていませんが、歌ものポストロックとしての側面が強くなりました。楽器的な声の使い方をしていた前作からすると、5/6が声入り曲で明確に歌っているものが中心(コーラスのみの曲もありますが)。

 ファルセット等はあまり用いずに中域で穏やかに歌い上げており、シガーロスではなくアルバム・リーフやepic45寄りかなという印象ですかね。その歌詞は現代社会の社会的・政治的混乱の中で希望を描いている(Fluttery Recordsのプレスリリースより)。

 繊細なタッチと轟音をスムーズに連携した美しいストーリーが根幹にあり、特に#2「Mirage」はヴォーカルの入れ方も含めて進化を示した楽曲です。さらには#4「Holding Rivers」や#5「Aria」にはチェロ奏者のEllen Hemström(Jakobの妻)が参加し、ドラマティックなスタイルに一段と華を添えています。

 そして#6「Drones」がゆっくりと燃え上がる轟音バーストを惜しげもなく披露して締めくくる。声を活かしながらバンドの魅力を一段も二段も引き上げた作品に仕上がっています。

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Oscillation(2019)

 3rdアルバム。全7曲約49分収録。創設メンバーであったギタリストのLeif Eliassonが脱退して3人編成で制作。マスタリングは同郷のMagnus Lindberg (Cult of Luna)によるもので、リリースは本作と次作がNapalm Recordsから。

 以前よりも悲しげで孤独なトーンが広がっているとはいえ、星屑が煌めく白夜のポストロックには美が踊り狂っている。本作も完全インストは1曲のみで基本は歌入り。#2「A Handful of Dust」を始めとしてギター主導のインストゥルメンタルと滑らかなヴォーカリゼーションが心地よく溶け合っています。

 EFやCaspian、God Is An Astronautといったバンドが浮かぶ音像ではありますが、歌に比重を置いているのが違いと言えます。ポストロックA級ライセンスを取得したかのごとく音を追求する一方、管楽器の導入やダークな色合いを獲得するといった変化もみせている。

 それが表れているのが#5#5「Darkroom Aesthetics」で従来にはないヘヴィなサウンドを鳴らした上でJakobの義父がトランペットで歓喜を呼び込む。前作に引き続きJakobの妻もヴァイオリンで参加しており、ファミリーの結束によってサウンドの豊かさが担保されているのはおもしろい。

 他にもギターループと重厚なリズムで牽引する#3「Simulacra」が存在感をみせ、バンド史上最長曲である10分越えの#7「Molnet」ではブラックメタル風のトレモロを起点にPelicanにも迫るポストメタルの大海が押し寄せる。壮麗でいて重厚。Oh Hiroshimaのサウンドは本作でさらに洗練されています。

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Myriad(2022)

 4thアルバム。全7曲約39分収録。ベーシストのSimon Axelssonが2021年初頭に脱退し、JakobとOscarの兄弟デュオ編成で制作。なおシンセサイザーとレコーディングはKristian Karlsson(pg. lost, Cult of Luna)、ミックスとマスタリングは再びMagnus Lindberg(Cult of Luna)が担当しています。

 ”ポストロックというジャンルにこびりついている決まり文句には、うんざりしているんだ。 私たちはこのジャンルにくっついている最も明白な決まり文句から脱却したかった。 (ホーンなど)これらの楽器を加えることで壁を取り払い、サウンドの幅を広げようとしたんだ

 上記はThe Big Take Overのインタビューより。とはいえ本籍地は依然としてポストロックのままで表現を多様化している印象です。7曲全てがヴォーカル入りで歌もの度を高めていることが顕著ですし、以前のような長尺曲はやめて4~6分台で少し簡潔に収めている。

 前作に引き続き追加されている管弦楽器は登場回数を増やし、アンビエントの氷冷からシューゲイズの音壁まで往来。先述インタビューによるとBon IverやThe Nationalからも影響を受けているようで、インディーロック感の高まりは#4「Ascension」や#7「Hidden Chamber」辺りに伺えます。

 人間の傲慢さをテーマにした先行曲#5「Humane」ではホーンで歓喜を呼び込みつつも、険しくも重たい雰囲気が聴き手を逃そうとしません。ちなみに同曲のMVをディレクションしているのがドラマーのオスカー。

 しかしながら、ポストロックから離れようとしてもポストロックの煌めきが至るところに存在する。それは同ジャンルを探求しようと始まったプロジェクトたる所以なんでしょうね。

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All Things Shining(2024)

 5thアルバム。全8曲約44分収録。引き続きデュオ編成での制作。そしてKristian KarlssonとMagnus Lindbergが本作でも参加しています。またレーベルを移籍し、ついにThe OceanのRobin Stapsが主宰するPelagic Recordsからのリリースです。

 こちらの動画インタビューを参照すると、以前よりも活発化したライブ活動のフィードバックからもっと歌に重点を置いた作品を目指したとのこと。またEchoes And Dustでは全曲のセルフライナーが公開されており、聴き手に対して大いにヒントを与えてくれています(レディオヘッドやスウェーデンの作家であるペール・ラーゲルクヴィストの影響など)。

 ”ポストロックとはブレンドである“ということを体現しているデュオですが、親和性の高い周辺ジャンルを網羅しつつ多種の楽器を絡め、歌が呼吸しやすい配置を確かに整えている。ただ、歌に力点を置くことによってサウンド自体が渋く暗く控えめになるというのが不思議。

 #1「Wild Iris」はダークな風合いの中にKristian Karlssonのシンセが幽玄な響きを与え、#4「Secret Youth」では分厚いベースの反復を基盤にギターとシンセと共鳴するように歌がハーモニーを聴かせています。

 もともと轟音でバーンと突き抜けるタイプではないにせよ、キメ細やかな組み立てによって味わい深さに一層コクが出ている。また前作よりも管楽器は少し抑えめにして、代わりにアコースティックの登板回数が増えているのも特徴のひとつ。

 全体を通してダークに引き立っていても流麗な展開、ポストロックと交わした契りゆえの思慮深さが表れている。ラストを飾る#8「Memorabilia」は儚く移ろう音響と消え入りそうな声が忘れがたい結末を奏でています。

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MUSIC VIDEO

OH HIROSHIMA – Wild Iris – Official Video
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