2014/10/19 THISQUIETARMY & Archaique Smile JAPAN TOUR 2014 FINAL @ 吉祥寺WARP

thisquietarmy

 カナダ・モントリオールのアンビエント/ドローン・アーティストとして活躍する、thisquietarmyの初来日ツアー最終公演に向かった。Eric Quachによる本プロジェクトは親交のあるNadjaばりの多作として知られ、あの世界的なレーベルであるDenovaliからも作品をリリースしている。また、ライヴも活発でこれまでに全29カ国と文字通りに世界を股にかけて活動をしてきた。

 そんな彼を招聘したのは弊サイトも大変お世話になっており、thisquietarmyの国内盤リリースを手がけたTokyo Jupiter Records。そして、サポートには国産インスト・バンドのArchaique Smile。Tokyo Jupiterは、2012年のThe Black Heart Rebellion、2013年のMilankuに続いて3年連続となる海外アーティストの招聘となる(2009年にはThe Black Heart RebellionとThe Caution Childrenの合同ツアーも実現)。「今回のようにバンド形態ではない、アンビエント~ドローン系のアーティストを呼ぶことは、自身にとっても大きなチャレンジであった」 とTokyo Jupiterのオーナーであるキミさんから伺った。それ故に、レーベルとしてこういう場を提供していくことに対して、強い想いを持っていることが伝わってくる。

 わたくしは夕方までは「綱島温泉湯会 ~そらゆね~」というイベントに行っていたので途中参加になってしまったが、なんとかここから見なくては!と思っていたnone but airから、ちゃんと見れたことにとりあえずホッとしました。

 

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none but air

 というわけで3番手に登場した京都の次世代ポストハードコア・バンド、none but air。昨年のMilankuツアーで観て以来、ちょうど1年ぶりのライヴ体験となる。音楽的には激情系ハードコア/ポストロックをルーツとしたものであるが、前のめりの勢いと放たれる熱いエモーションが若手らしい。特に去年も感じたようにヴォーカルとドラムが掛け合いのように叫ぶ点は、他にはない武器となっている。しかしながら、去年より洗練された印象だ。envyやheaven in her armsから、欧州の激情系ハードコア等に影響を受けた大きな起伏が、彼等の楽曲にはある。電子音はkilk recordsのような夢見心地な世界を演出していたし、その活用による静と動を生かしたサウンド・デザインは惹かれる人も多いはずだ。ライヴではその感情的な部分がさらに音に反映されるために、やたらと熱くさせられる。特にラストに披露した曲は、性急なハードコアからエレガントなポストロックまでを行き交うスケールの大きな楽曲で、これからを感じさせるものだった。ちなみに来年辺りに音源が出るみたい。要チェック。

 

 

Archaique Smile

Archaique Smile

 そして、お目当てのひとつであるArchaique Smileの登場である。弊サイトでは彼等にインタビューに応じていただいたこともあり、今日の出演者では一番に馴染みのあるバンド。日本のインストの雄であるMONO、この日に一番手で出演したOVUMのような美轟音インストゥルメンタルを売りに、地道に活動中だ。

 しかしながら、この日はスタートから馴染みのない楽曲でスタート。いわゆる新曲です(笑)。といっても物哀しいギターの音色から、徐々に力感を増しながら壮大な轟音へと発展していくこの曲は、彼等がこれまでに培ってきたものをさらに高めようと目指したものだろう。昨年リリースしたOVUMの2ndアルバムのように、4人が奏でるサウンドを合算させながら大きなスケールを生み出している。高橋と鈴木によるツインギターがもたらすドラマティックな波は、昨年同様に惹きつけられるものが個人的にはあった。

 さらに新曲は続く。こちらはyoutubeにもアップされた「thanatos in the eye」という曲である。同様に多くの展開を設けたダイナミックな構成の楽曲であるが、精神的によりヘヴィに来る感じはこちらの方が強かったか。音もそうだが、クライマックスで一心不乱に轟音を掻き鳴らす姿には胸に響くものがある。この後のMCでは「自分達の不甲斐なさを感じる部分が多かった」という言葉を残していたが、昨年のMilankuとのツアーでも演奏していた「vanishing(これも1stアルバム後に作った曲なので、新曲といえば新曲)」での力強い締めくくりは、主催としての責任と決意をみせるかのようだった。

 ライヴ後にお話を伺った時は、この日はあまりいい出来ではなかったそう。だが、彼等の真摯なインストゥルメンタルは、個人的には1年ぶりの本日も印象に残るものだった。演奏した3曲全てが新曲であることには驚いたが、なんと1stアルバム『On The Eternal Boundary』の曲は既に封印しているとのこと。昨年12月のレコ初札幌公演でもやってないというから驚くほかない。完全に次のフェーズに突入していることを示唆している。新作のリリースも上手く行けば、来年か再来年にあるかもしれないと話していたが、期待して待ちたいところだ。

 

 ‐‐‐setlist‐‐‐
新曲 / thanatos in the eyes / vanishing

 

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the north end

 続いてはthe north end。2001年結成ということで、本日の出演者の中でも歴史が一番長いバンドとなるだろう。今宵、初めて聴いたがポストロックから激情系のハードコアまでを行き来しながら、進化を続けてきたバンドというのを感じさせた。クリーントーンを主体としたギター、公務員顔のドラマーによるタイトなリズムが土台を築き、そこにヴォーカルがいい意味で力の抜けた感じのポエトリーリーディングを被せていくのが肝。ゆったりと曲は進んでいくことが多いが、鋭い言葉を投げかけて胸の内側に訴えかけるのだ。それでも劇的に爆発する場面もある。複雑な展開を見せたりもする。ドリンクや灰皿を乗せるテーブルに立って演奏したりもする。そういったものを用いつつ、音と感情を広げながらドラマティックで説得力のあるライヴを繰り広げていた。キャリアの成せる業だろうか。ちなみにヴォーカルの人が変なダンスとか仕草をしているのが、とにかく気になった(笑)。

 

 

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maggie

 これまでの出演者と比べると見た目のパンチがありすぎるが、音もその風貌・体型に沿ったようで激しいもの。センチメンタルなパートを設けながらも、特化したパワフルさとブルータリティで進撃したmaggieというバンドである。Vo&Gtの人はどう見てもプロレスラーだったが、彼を基点にヘヴィメタル的なものからスラッジのような極悪までの拷問を繰り広げていく。明らかに違いをみせる痛烈な叫びとギター・リフ。暗い側面をえぐりだしていくような、そのSEKAIノOWARIナンジャラホイの非道なサウンドで、フロアを苦しめる。そんなmaggieの約30分ほどの熱演によって、全く別の空気に塗り替えられた。

 

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thisquietarmy

 そして、トリを飾るthisquietarmyへ。後ろを白い布で覆って映像を映し(モノクロで草原や森などを演出)、その上で芋ケンピにハマったEricがギターを演奏し続ける。同期でリズムマシンを使うことはあれど、基本的にはエフェクターを駆使しながらギターの音を幾層にも重ねていく。これまでに体感した中だとやっぱり彼とも親交が深いNadjaに近い轟音ライヴで、全身を圧するような感じがある。寂寥感や悲壮感を漂わせるヘヴィ・ドローンといったところだろう。ミニマルでもあったし、アンビエントでもあったし、シューゲイザーの要素もあったけれども。終始、緊張の糸が張り詰める中で音圧を増しながら、後方の視覚効果とともに荒涼とした風景を映し出す感じは、完全に職人技だろう。それに僅かな静寂の中で零れるメロディの美しさも魅力的であった。聴手に瞑想を促すような50分近い演奏は、轟音に溺れるような感覚をもたらす独特の世界を作り上げていたと思う。初日の京都ソクラテスのライヴが一番凶暴だったという話も聴いたが、千秋楽に関しても十二分に心身にくる音で制圧していた。

 

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 最終公演だけ参加した身ではあるが、集客面でいえばThe Black Heart RebellionやMilankuよりかは厳しかった。先のNadjaの再来日ツアー時もそうだったが、さらに客層が絞られるようなアーティスト故に予想されていたことではある。だが、それでもこういった機会を提供していただいた関係者の方々には、改めて感謝いたします。個人的に今後も可能なことは支援していきたいと思っている。

 「今年はどちらかというとアンビエント系のアーティストのリリースが重なりましたけど、来年は激情系のハードコアやエモの方面に行くと思いますよ。」という話もキミさんから頂いた。手始めに今年中には、リリースすることが決まっているVia Fondoの1stアルバムはとにかく凄いとのことなので楽しみに待っていてくださいとのこと。同じスウェーデンの先輩であるSuis La Luneのヴォーカルもお墨付きだそうで、余計に期待が高まります。

 

 あと、そのSuis La Luneのヴォーカルは先週辺りまで日本観光にきていたそうだが、彼がPlastic Treeのライヴへ行ったという話を聴いた時は笑った。いや、僕もプラトゥリはそれなりに好きだから、共感したんですけどね。

 

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