【アルバム紹介】Oathbreaker、内省と激情のハードコア

 2008年に結成されたベルギーのポストハードコア/クラスト・バンド。女性ヴォーカリストのCaroを中心に醸し出す独創的ムード、ハードコアを基本線にクラストやポストメタルを取り入れたサウンドで世界と戦う。

 デビュー作となる1stアルバム『Maelstrom』からDeathwish incと契約しており、これまで同レーベルから作品リリースを継続。またメンバーの一部は同郷であるAmenraが主宰するChurch of Raに参加しています。

 本記事はこれまでに発表されているフルアルバム3作品について書いています。

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アルバム紹介

Maelstrom(2011)

 1stアルバム。全9曲約31分収録。Deathwish Incからのリリースです。Convergeのカート・バルーがミックスを担当。

 タイトルは”脱出する可能性がなく、下向きのスパイラルに閉じ込められているという感覚を表してる”とBlow The Sceneのインタビューで答えています。またアートワークはヴォーカル・Caroの髪の毛をエディットしたもの。

 ベースとなっているのはハードコアやクラストといった音楽で、ConvergeやLoma Prieta辺りを思わせます。猪突猛進型ともいうべきハード&アタック、女性ヴォーカル・Caroの喉の擦り切れを心配するほどの叫びが根幹にある。

 メタリックなリフと共に激速で駆け抜けるオープニング#1「Origin」からその衝撃を受け止めることになります。ですが、決してスピードや激しさに頼りきった構成ではありません。

 ミドルテンポの重厚なリフでゴリゴリいったり、アコースティックに流れた歌もの#9「Maelstrom」で締めくくったりと全体を通したドラマティックなセンスを見せる。

 それは後のバンドにつながっていく繊細なアート性が初期から存在していたことの証明です。

 歌詞は前述のインタビューによるとCaroの個人的体験とタロットカードに影響を受けているそうで、#8「Glimpse Of The Unseen」は、人生における苦痛で壊滅的なできごとを表すカード”Ten of Swords”に基づいてるとのこと。

 何よりもOathbreakerの特徴は血の通った感情がその声や演奏に宿っていること。その衝動は聴き手の心を突き動かす原動力となるはずです。

メインアーティスト:Oathbreaker
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Eros | Anteros(2013)

 2ndアルバム。全10曲約47分収録。タイトルはギリシャ神話の恋心と性愛を司る神、返愛の神からきている。前作と同じくカート・バルーがプロデュースに名を連ねる。

 悲壮感に苛まれるようなダークなSEを抜けると、息つく暇もない猪突猛進の激音が耳に飛び込んできます。ソリッドで切れ味鋭いギター・リフと力強く激走するビート、意を決してたかのように喚き散らす絶叫。

 後ろを振り返ることすら許さない強烈なサウンドは、けたたましいことこの上無い。序盤#2「No Rest for the Weary」でスイッチ入れてアグレッシヴ・モード、続く#3や#4でも勢いはますます加速します。

 さらにはブラックメタル風のトレモロやスラッジ/ドゥーミーな重厚さもその懐に収められる。

 女性らしい情緒も効果的に注入していて、#8「Agartha」におけるダークな詩情をもった静パートから、感情を一気に爆発させて轟音に発展するところも惹かれます。

 作品の大きなアクセントとなっているのが、約9分の#5や11分半にも及ぶラスト・トラック#10といった長尺曲。これらの曲は、同郷の大御所であるのAmenraのような荘重さを誇り、シリアスな情緒を交えながらゆっくりと奈落へと向かっていくさまに精神をかき乱されます。

 アプローチを増やしながらも美意識たっぷりに自身の音楽を表現。前作から明らかに飛躍した作品となっています。

Rheia(2016)

 3rdアルバム。全10曲約63分収録。タイトルはまたしてもギリシャ神話からで大地の女神を指す。本作はポストハードコア~~ブラッケンド~ネオクラストの拡大解釈へと向かっている印象が強い。

 曲単位はもちろんのこと、全10曲という作品全体を通しての大きな緩急・起伏で聴かせます。そしてJack Shirleyプロデュースによる絶妙なシューゲイズ・テイストの武装。

 さらにはアコースティック・パートも上手く組み込まれており、サウンド面において変化を感じるところが多々あります。

 バンド最大の武器”おっかねえちゃんねー”こと女性Vo.Caro Tangheの強烈過ぎるスクリームの連続。それが本作においては、女性の歌ものという側面を強化しています。

 艶めかしい歌唱やゴシックの要素を感じさせるなど、Chelsea Wolfeねえさんにも迫る表現を披露しています。彼女の個が解放されて活きてきたことで、楽曲の幅広さにも説得力が伴っています。

 可変速自在の振り切れ具合で攻める#8「Where I Live」から、静動型ポストロックの壮大な曲調で聴かせる#9「Where I Leave」の流れは見事のひとこと。

 様々なアプローチを取り入れる。ゆえに多彩な曲調になる。その弊害として薄くなる事もありえます。しかし、本作はいいとこ取りに終わらず、ルーツを含めた自身の音楽性に対して上手く肉付けできており、作品としての強固さがある。

 ノスタルジーを喚起する美しい静パートを挟みつつ、果て無き激情を胸にドラマティックな爆走劇をみせる#5「Needles In Your Skin」には感情的にならざるを得ません。ここがまだ進化の過程であるならば末恐ろしいバンドです。

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プレイリスト

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