【アルバム紹介】The Life and Times『Tragic Boogie』

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Tragic Boogie(2009)

Allen Enpay(vo/gr)の天性の真似できない独特なメロディーメイクや妖艶な唄声、シューゲイザーバンドにも直結リンクするディレイやフィードバックノイズを巧みに使いこなす浮遊感あるサウンドからJAWBOX以降のUSポストハードコア的なトリッキーなリフを決めるギタープレイ。 同郷の“STELLA LINK”のChris Metcalf(dr) 、マスロックバンド“RING, CICADA”のEric Abert(bass)による強靭なリズムセクションに迎えての鉄壁の布陣は今まさに円熟期の最中ですが、攻めの姿勢も衰える事無く濃い活動を続けている。 エモやシューゲイザー、ポストハードコアやマスロック、ギターポップやプログレッシブロックにも隣接する柔軟なサウンドタイプは多くのミュージシャンに影響を与え続けている貴重な存在でもある。

 ex-SHINERのアレン・エプリーを中心としたオルタナ/エモーショナル・ロックバンド。ポストロックやシューゲイザー、マスロックといったジャンルを吸収ながら、艶やかな歌声をじっくりと聴かせます。本作は2009年に発表された2ndフルアルバム。

 独特の艶やかさと情熱を湛えた作品です。核となっているのは、情感豊かで美しいヴォーカル、メロウでありながらフィードバックも随所に取り入れた硬柔のバランスのとれたギター、そして凝った展開をものともしない強靭なリズム・セクション。それが非常に豊かな詩情と広がりを感じさせる作風となっています。胸を優しく焦がしていくこの感覚は素晴らしい。

 じっくりと聴かせる力が全編に渡って備わっており、デリケートなメロディと妖艶なヴォーカルが生むメランコリックなポップ感は、エモという範疇を越えた舞台で勝負できる感じ。感情を突き動かすエモーショナル衝動を保ち、さらにはポストロックやシューゲイザーっぽい空間の編み方、レイヤーの使い方が奥行きを生んでいます。マスロック的な変拍子混じりの構造やハードコアっぽいアタックの強い場面も登場。多くの引き出しが、このバンド独自の揺るぎない世界を築き上げています。

 それでもシンプルに歌ものとして響く良さがあります。ぶっといベースラインとドラミングの律動に引っ張られるように上品なギターフレーズと歌い回しが印象に残る#3、清涼感と美麗さが同居したハーモニーで魅了するタイトルトラック#9など特に良い。幅広い層に間口を開放したエモーショナルかつメロウな一撃、実に味のある作品です。

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