
2003年に結成されたボストンのオルタナティヴ・ロック~ポストメタル系バンド。ローリングストーン誌において、”NeurosisとThe Smiths のハイブリッド、美とブルータリティの完璧な融合“と評される音楽性をもつ。
精神科医/学者イマヌエル・ヴェリコフスキー氏の理論や人生に基づいたコンセプトを掲げ、作品を重ねて”魂”について探求し続けている。
本記事では2026年6月にリリースされた9年ぶりの4thアルバム『Sotera』を含む、オリジナルアルバム全4作品について書いています。
作品紹介
The Martyrdom of a Catastrophist(2009)

1stアルバム。全10曲約49分収録。精神科医/学者イマヌエル・ヴェリコフスキー氏の理論と人生に基づいたコンセプトアルバムであり、氏のインタビューや講演からの引用が歌詞にも適用されています。
オルタナティヴ・ロック~ポストメタルをベースに、重厚かつ浮遊感のあるサウンドを実現。ダイナミックな膨張性を持つと同時にスペーシーな感覚があり、その様はDeftonesとJesuの中間辺りをいくようであります。同時期に活動を開始し、同郷マサチューセッツ出身のConstantsやCaspianも近い存在といえる。そのうえで、Joseph E. Martinezの伸びやかで艶のあるミドルヴォイスを核に置くことで、芯のある歌ものとしての機能性が高まっています。モリッシーに通ずる端正なセクシーさみたいなのも感じられます。
ストリングスやピアノなども引き連れ、壮大でオーケストラルなサウンドも実現しており、後半の楽曲ではその傾向が強まる。バンドのメロウな側面を打ち出した#4「A Dramatist Plays Catastrophist」、清廉とした光に包まれながら徹頭徹尾ドラマティックであろうとするラスト2曲#9「Letters from Saint Angelica」~#10「The Mourning Eulogy」など惹かれます。
ヘヴィで暗い側面は少なからず持ってはいますが、アルバム全体を包むムードは荘厳かつ聖性としています。轟音による恍惚感、歌ものとしての聴きやすさを両立。ローリング・ストーン誌は“NeurosisとSmithsの完璧なハイブリッドで、残忍さと美しさの見事なバランスを打ち出している“と本作を称えています。
Reports From the Threshold of Death(2011)

2ndアルバム。全10曲約43分収録。Prosthetic Recordsに移籍してのリリース。前作に引き続いてのコンセプト作で、“死後の魂の旅”をメインテーマに据える。前作を総合的にアップデートした作品といえるでしょうか。美的感覚をさらに研ぎ澄ましており、本作における重低音と叙情性、浮遊感の融合は、Jesuにさらに接近した安息と恍惚をもたらしています。
Hydra Headのポストメタル勢に連なっていくアート性の高さを完備し、艶やかでエモーショナルな歌が見事なまでに結晶。添えられるシンセやスペーシーな音響の使い方も堂に入っており、ドラマティックな感性は貫かれています。冒頭を飾る#1「Betray the Grave」から時にメランコリックに、時に重く突き抜けるスタイルが示される。大地のように悠然としたアンサンブルにメロディの洪水、天からコーラスが降り注ぐ#2「All Shall Float」へと繋がり、その後も壮麗に世界は続く。
轟音への没入感は深まる一方で、Josephのヴォーカルがしっかりと案内役として魂の旅路をリードしていくのが心強い。#8「A Reflection on Fire」の柔らかい歌唱表現は、うっとりとするほどに魅惑的。
美重音とともに幻想的な情景を紡ぐ#9「Transcend the Ghost」から魂を鎮静化するクライマックス#10「Eidolon & Perispirit」の流れもまた惹かれます。”死後の魂の旅”をどっしりと耽美に奏でるこの創造性。彼等の描き出すヴィジョンは果てしなく、そして美しい。
Eternal Rituals for the Accretion of Light(2017)

3rdアルバム。全10曲約45分収録。1stアルバムから続いた三部作の完結編となります。本作は魂が輪廻転生し、輪廻から脱却しようとする過程を描く。ハンガリーの彫刻家/ヨガ実践者であるエリザベス・ハイチの半自伝的著作『イニシエーション』を基にしてストーリーを形成。また当時は創設メンバー以外が脱退して、Joseph E. Martinez(Vo,Gt)とDana Filloon(Dr)の2人体制。そのためヴォーカリストであるJoseph E. Martinezがドラム以外の楽器を演奏している。
前作と比較するとメタル的なエッジの増強、暗く陰鬱な雰囲気が強まっています。ヴォーカルはミドルよりもさらに低い音域で渋く歌う頻度が増加。#2「Beyond the Pale Society」の意表を突くイントロの剛腕な旋回、#4「Clean the Beast」の驚くほどシャウトを重ねての激しさ。このようなパワフルな振る舞いを持ってして、一段階アグレッシヴのギアを上げています。
重と美と知のトライアングルが極まる#3「A Mass For Metaphysicians」は、これぞJuniusと思わずうなるほどのもの。後半の楽曲はメロウな曲調が多いですが、さらに挑戦的な姿勢が伺えます。キュートな電子音の装飾が印象的な#6「The Queen’s Constellation」、荘厳なコーラスと甘美なシューゲイザーが溶け合う#7「Telepaths & Pyramids」、アコギを主体に最も低い域で渋く歌い上げる#8「Masquerade In Veils」。これまでに無い変化を示しながら、輪廻からの脱却を果たそうとします。
ラストを飾る#10「Black Sarcophagus」は締めくくりにふさわしいプログレッシヴな構築美を誇る。デュオという最小編成になりながらも、志は高く。筆遣いはさらに自由に。Junius特有のスタイルを追求した結果、しっかりと前進を果たした作品。
Sotera(2026)

4thアルバム。全8曲約40分収録。2nd、3rdアルバムに引き続きProsthetic Recordsからのリリース。約9年ぶりのフルアルバムとなります。前作の時点ではJoseph E. Martinez(Vo,Gt)とDana Filloon(Dr)の創設メンバー2名だけでしたが、新たにギタリスト2名とベーシスト1名が加入しての5人体制が新生Juinius。本作を”バンドの再生”と位置付けます。
レーベルのプレスリリースによると”『Sotera』という言葉は、ギリシャ語で救い主や守護者を意味する言葉の女性形である。変容と調和の力としての`神聖なる女性性’を探求する、音楽による祈りです“とJoseph E. Martinezは説明する。またREVOLVERやOx-fanzineのインタビューにて、主なインスピレーションは古代ギリシャの神託にあると答え、言語学者であるAmmon Hillmanの言説に惹かれたとも語っている。テーマの研究には300時間以上を費やしたとのこと(ただ、Hillman氏は物議を醸す人物っぽいですが)。
長い歳月はJuniusのメンバー編成は変えても、音楽の形を大きくは変えてません。前述したテーマを深堀する中で#1「Disciple」から聴こえてくるのは、いわゆるウォール・オブ・サウンドとシンセによる荘厳な雰囲気づくり、そしてJoseph E. Martinezの渋い声と伸びやかな歌唱。これまでのふりかえり兼自己紹介を行う1曲として、また9年ぶりの帰還を告げるにはこれ以上ないオープニングを飾ります。ポストメタル/オルタナティヴ・メタルに根差した音楽性とはいえ、歌やメロディによる引力が他のバンドよりも強いのは変わらず。
”私たちは、ヘヴィネスをそれ自体として追求することは決して望んでいません。重厚な瞬間が意味を持つのは、美しさとの対比があってこそです。『Sotera』では、その両極端をこれまで以上に極限まで追求しました“とREVOLVERインタビューにて語る。さらにヘヴィな領域に進んでいるのは間違いなく、前作でも荒々しいスイッチONのリフやスクリームの貢献はありましたが、今回はさらに増えている。先行シングルのひとつ#2「The Oracle」の4分過ぎからの異様な攻撃モード、最終曲#8「Scythian」の終盤におけるブラストビートなど迫力十分。
それでいてバンドが醸し出す知的な雰囲気やメロディとのバランス取りは引き継いでいる。#5「Darkwater」はメランコリックな前半からドゥームゲイズ色が強まる後半へと向かい、#7「Lucifera」ではNothingを思わせるノスタルジックな音色が流れています。しかしながら本作は陰鬱なトーンをほとんどの時間で帯びており、以前の3部作と比べても閉じている印象。ちなみに本作ではJosephやDanaの妻や娘がコーラスで参加。テーマを踏まえての貢献が必要だったとのこと。
バンドは結成から20年以上が経過。3rdアルバムのリリース後となる2017~2021年は、家庭の事情でバンド止まっていたそう。しかしながら内々で作曲を進め、メンバーを迎えて来るべき時に備える。こうしたストックの源泉が古代史の探求と結びついて見事なカムバック作として産み出される。”今一番大きな違いは、僕たちが再びバンドとして活動できるようになったことだ“との声明もあり、新生Juniusに期待したいものですね。
