True Form、Method of Doubtなどのバンドで以前から同時に活動していた中で2020年に結成された4人組。90年代のオルタナティヴ・ロックやシューゲイザーからインスピレーションを受けたサウンドが特徴。
本記事は編集盤『I + II』、2024年11月リリースの1stアルバム『Angel in the Sand』の2作品について書いています。
作品紹介
I + II(2023)
2つのEPを収録した編集盤。全9曲約25分収録。テキサスを拠点とするインディペンデント・レコード・レーベル、Sunday Drive Recordsからリリース。収録された2つのEPは『Ⅰ』が2021年1月発売で5曲入り、『Ⅱ』が2022年6月発売で4曲入りです。
彼等は90年代のオルタナティヴ・ロックやシューゲイザーに感化されたサウンドが持ち味。WhirrやNothing以降のヘヴィなシューゲイズの流れをどうしても想起させますが、だりぃな的気だるげムーブ入ってるヴォーカル、グランジ譲りの武骨さと黄昏た哀愁が渦巻く。
Spotify再生回数1,000万回超えを記録しているオープナー#1「Stay」からして彼等の特徴が表れています。幻想的という言葉を引き離し、感情が表出することでの人間味やバンドらしい生々しさが作品全体に乗る。レーベルメイトであるGlareは近い存在といえそう。
ミドルテンポの進行の中でクリーンパートを強調した#3「Yellow」の涼やかさは魅力に映り、#4「Still」ではNothingの血筋と思えてくるパワフルさが押してくる。
編集盤とは言え全体的にまとまりのある作風ですが、前半の『Ⅰ』と後半『Ⅱ』では録音の違いを明らかに感じます。後者の方がより立体的でくっきりとした印象。そして『Ⅱ』の方がよりハードコア成分が強くなっており、#6「End」や#7「Rdo」ではリズム隊の馬力増が前のめりの勢いを追加しています。
9曲あるのに25分で終わることからもあっさり。それでもサウンドの波形が脳内で渦巻いてクセになるような感覚がある。
Angel In The Sand(2024)
1stアルバム。全10曲約34分収録。引き続きエンジニアにJohn Howardを起用し、Sunday Drive Recordsからのリリース。タイトルは”人生の実用性を捨て、自己に意味を与える些細なことを追求することである。存在の不条理さと無限性を受け入れること“を意味しているという(参照:Bandcamp)。
音楽的にはこれまでのスタイル通り。90年代オルタナ系のヘヴィ・サウンドをくぐもったシューゲイザーでくるむ。エコーのかかったヴォーカルは黄昏の色合いをより濃くし、強調されたベースラインとずっしりとしたドラムが基盤を支えています。ミドルテンポの曲が多くなったとは感じますが、相変わらず2~4分台とコンパクト設計。その中で必要なインパクトをもたらしています。
HUMを思わせる重厚さの中にクリーンな美が潜む#2「Choke」、膨れ上がるギターノイズに乗せて”過ぎ去った時間の中に沈んで、二度と僕のことを考えないことを願う”と歌う#4「Wish」、程よいヘヴィさとメランコリックさを巻き上げながら軽快なテンポで進む表題曲#6「Angel in the Sand」といった曲が並ぶ。
先行シングルのひとつ#5「Arm’s Length」は馬力のあるサウンドを背に深い哀愁が垂れ流されています。曲のテーマを”人間に対する失望、そして真の進歩の欠如を内省的に見つめた作品だ。常に暴力が存在することを受け入れることだ。人間の進歩 のほとんどは武器化され、戦争と死のために使われる。これまでもこれからも”と説明。
シューゲイザーの歪みと揺れの中、内省的なテーマを作品を通して探求しています。その割にラストを飾る#10「And On」では”脳天直撃、私を吹き飛ばせ”というキメゼリフと共にフェードアウト。本作リリース後にGlareやtrauma rayといったバンドとのツアーを控えていますが、共鳴する新鋭たちとの旅路は続く。