
アメリカ・インディアナ州に住むJoseph Phillipsという男性によって、2023年に始まったポストロック・プロジェクト。徐々にメンバーを増員し、2025年に発表した1stアルバム『Tethered Hands』は2人編成。そして2026年1月にリリースされた2ndアルバム『How We Live is How We Die』では海をまたいでつながった5人によるポストロック共同体へと進化を果たす。
本記事は2ndアルバム『How We Live is How We Die』について書いています。
作品紹介
How We Live is How We Die(2026)

2ndアルバム。全9曲約58分収録。タイトルは”生き方こそが、死に方につながる”といった意味で、アメリカの仏教尼僧であるペマ・チョドロンの2022年著作『How We Live Is How We Die』に由来している。”これは単なる「死」をテーマにしたアルバムではありません。自分の死を強く意識するとき、私たちは普段とは少し違った生き方をするものです。このアルバムは、人生を精一杯生きようという気持ちを思い出させてくれる作品です“とFacebookページの投稿で本作について述べています。
センチメンタルを箱買いするようなインスト作品で胸に迫ります。例えるならWe Lost The Seaがポストクラシカルの領域を追求した奥ゆかしい作風。人間が生きていくうえで受容する光と影、痛みや歓びを繊細なトーンで描いています。
Godspeed You! Black Emperor、Explosions in the Sky、This Will Destroy You、The Evpatoria Reportからの影響を公言していますが、主軸となっているのは中心人物であるJoseph Phillipsが奏でるピアノ。その旋律は時に精神を落ち着け、時に心を震わせます。その上でトレモロギターやシンセサイザーが手厚くサポート。曲によっては女性の語りやストリングスが物語を補完しており、音と感情の細やかな変化を捉えている。
#3「I Never Thought It Would End Like This」ではピアノとヴァイオリンが厳粛な美しさを生み、#4「The Wondrous Flow of Birth and Death」と#5「We Fled from Sacred Realms」におけるきわめて轟音系ポストロック的なダイナミクスに昂揚。
それに#7「Your Mind is Going」のイントロからは前述したWe Lost The Seaを思わせる雰囲気があります。終盤の#8「This Is the End of the End」では濃紺な夜空に瞬く流星のごとく、ピアノとギターがロマンティックな時間を奏でている。全体を通して暗い海面に顔を突っ込む時もあるとはいえ、その音は優しく流麗、包容力があります。
ラストは本作最長の18分を数える#9「Hold Tight These Hands, Tethered by Toil, for Each Day Could Be Our Last」。Bandcampで購入した人に向けたメッセージから引用すると、同曲冒頭はYesの「Roundabout」に触発されてピアノをコードで弾いたものをリバースさせたという。この始点からマーチング風味のドラムが入り、ピアノが優美な装飾を施し、ギターが歪みと音量を上げていく。それでもエンディングは不穏な静けさに包まれ、何かを示唆するセリフのサンプリングで締めくくられます。
泣けるの安請負は真っ平御免。Tethered Handsは各自が職人的な振る舞いのもとで精巧に音を重ね、それらが繋がれた手のように結束してからっぽの心に水を届ける。胸にいつまでも残り続ける予感がするほど、しみじみとする作品です。
