2016/06/12 Kayo Dot 「JAPAN TOUR 2016」 @ 新大久保EARTHDOM

kayodot2016

 以前からDaymare Recordingsから国内盤のリリースはされていましたが、ついに2016年にKayo Dotが初来日です。ここ1~2年でSikTh、Cynic、Protest The Heroなどを招聘したRealising Mediaにより、ついに実現。彼等の尽力には本当に感謝しかありません。

 Kayo Dotは作品ごとに変容していく前衛的な作風で、世界的に評価されている音楽集団(日本に来たばかりのこの写真は、ほのぼのサングラス集団ですが)。2003年の結成以降、コンスタントに作品を発表していますが、とりわけ2013年にリリースされた2枚組の大作『Hubardo』は、僕が2013年のベストアルバム1位に選ぶぐらいに衝撃を受けました。

 今回の来日は東京2公演が組まれていますが、わたくしは2日目に参加。こちらの方がKayo Dotの演奏時間が長めというのを拝見したのと、久しぶりにVampilliaやisolateも見たかったというのがあります。前日は前日で、真っ昼間から10組以上が10時間近くアバンギャルド混沌リレーをしていく「変の極み」というイベントが開催。長丁場にもかかわらず、とても好評だったようです。その反動か、本日の集客はそこそこ。Kayo Dotのトビー大先生がMCで「昨日のライヴも見た人?」と聞いた時に手を挙げる人が少なかったですしね。

 トップバッターにisolateが出陣。2014年11月の1stフルアルバム『ヒビノコト』ツアー名古屋編以来の拝見となりましたが、100m走を連続で30本やるような猪突猛進ぶりは変わらず。黒光りするハードコアは銃弾並の加速と殺傷力で、後先考えずにこのステージに全力でぶつかります。うねるリフと口にマイクを加えて叫んだりするヴォーカルは、手加減を知らずに瞬間湯沸し器とかす。そして、抜けの良いリズムは体感的な速度を高めます。後半は「速い曲だけで攻めます」という宣言通りにスピード豊かに駆け抜ける。その様は熱いうちに打ちまくるようで会場を燃え上がらせました。

 この後は、柏に移動してもう1本イベントに出演。昼間に中継ぎでロングリリーフしたのに、ダブルヘッダーの夜にもう1回投げるみたいな過酷さですが、それでも彼等は体に鞭打って全力で立ち向かったのでしょう。

 2番手にTOMY WEALTHさん。ドラマーのソロ・プロジェクトという名目ですが、本ライヴはベースとシンセサイザーにサポート・メンバーを加えた3人編成。IDM~エレクトロニカ~ヒップホップ~ハードコア等の影響をスタイリッシュにまとめ、優雅に聴かせてくれます。Virgin Babylon Recordsからリリースされていそうな雰囲気があったでしょうか。そして、ふくよかなグルーヴの心地よさの中で、ここぞの場面は結構押してきます。お洒落感が行き届いている中でそんな熱や激しさが渦巻いていて、バランス感覚がなかなかに良いと感じました。

 また、オシャレだから彼等の出演時間だけ、フローラルの薫りがしていたような感覚も(笑)。こびりつくアースダム臭もホンの少し和らいだ気がします。機材トラブルで後半は、本人達が歯がゆかったかと思いますが、程よく楽しませていただきました。それにしても外人ベーシスト(サポート)の陽気なキャラクターには笑った。ライヴ始まる前に元気よくしゃべりだした時は、お前がしゃべるのかよ!と申し訳ないけど思ってしまいました。

 これまで定期的に見ていたはずが、約1年ぶりにみることになったVampilliaさんたち。僕は真部さんがいる編成は初体験ですね(そして今宵は竜巻・吉田達也ツインドラムで、総勢10名だったと思います)。ライヴの流れや曲目等は、これまでとそう変わっていませんが、笑撃から衝撃への軌道修正が成されているでしょうか(ネタが全く無かったしw)。様々な音楽を奏で、轟音が飛び交う関西のブルータル・オーケストラとしての力を聴かせてくれたかと。この壮大なパワーとエンターテイメント性は変わらずにスゲえものですよ。

 そして、注目のモンゴロイド氏は今日も檻の中で大人しくしているわけはありません。モンゴロイド担ぎ隊みたいな客達によって、彼をフロア上でワッショイワッショイ。中盤では伝統のハシゴ芸がキまり、終盤の「Hope」では彼の動きに合わせて客がシンクロして手を動かす。楽しい宴の中心にはやっぱり彼がいるのです。

 ライヴを終えると、ミッチー氏がひとり残って8月に開催されるKrallice Japan Tourについて丁寧に告知。だけど周りの笑い声が大きい、大きい。愛されてますな、Vampillia。

 21時手前ぐらいにトリのKayo Dotさまが登場。今回は4人での来日となっています。ライヴに関しては2014年にリリースされた『Coffins on Io』を中心としたセットで臨み、途中にはまもなくリリースされる新作『Plastic House on Base of Sky』からも披露していました。『Coffins~』は”1980年のレトロ・フューチャー”をコンセプトとし、ニューウェイヴ~エレポップ的な意匠が強かったのですが、ライヴにおいても歌の作品としての側面の強さや近未来感が出ているように感じましたかね。場内BGMにはZOMBIの『Escape Velocity』が流れていることが多かったですが、影響を受けたのかなと思ったり(BGMは誰が選曲しているかはわかりませんが)。

 中心人物のトビーさん(某氏が言っていたが、見た目が確かにキア○・リーブスっぽい)は歌、ベース、ギター、キーボードを操る。印象的だったドラマーはたるんだ体でスゴいドラム叩くタイプ(興行収入ランキング20億ぐらいの映画撮っていそうな映画監督感があった)。ギターやサックスがここに入ってくるのですが、彼等のアンサンブルの妙は今宵に限っては聴かせるという側面の方が強かったと思います。初期や前述した『Hubardo』のような激しさや混沌を求めた人は多い気がしてますが(自分もそうだし)、じわじわと内側に浸食してくる感じにらしさを覚えたりもしました。

 本編終盤では、トビーが楽器を弾かずに日本語で歌い始める。なんだこれはと思ったら、平沢進さんの曲をカバーしていた模様(これらしい)。ちなみに先行発売された新譜のSPECIAL THANKSの欄一番最初に「SUSUMU HIRASAWA」と記載されていますが、ここまでリスペクトされているとは。アンコールは、世界の終わりを感じたアバン・ブラックメタルな「Floodgate」で締めくくる。最後の最後でKayo Dotの本性を見たように感じ、完全に圧倒されましたね。

 ついにKayo Dotが見られたという事実は大きいですが、彼等自身がこうして日本を訪れて良い思い出にしてくれている事は嬉しい。他の共演者を苦心して選び、イベントとして様々な音楽に触れあう体験をさせてくれた主催者に改めて感謝を。そして、自分にとっても色々な出会いがあって、良い経験になりましたよ。

お読みいただきありがとうございました!
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