
ポストブラックメタルの旗手、Deafhevenが2年続けて来日。まさかです。ただし、私はその前週に開催されたJambinai初来日の三国演義を選んだため、去年の公演は行けませんでした(地方民が有休を2週連続で取得するのは厳しいものがあるので)。
今年は2年連続来日という幸運を享受し、大阪まで足を運ぶ。8月3日の韓国フェスはキャンセルになったので本当に来日するかが心配でしたが、昼頃にメンバーが無事に日本到着という報せが入る。大阪への移動を既に開始していたので、現地に着いて虚無にならなくて済んだことにひとまず安堵しました。でも、前日入りしてくるとは思いますが。

彼らを見るのは今回で4回目。最初がleave them all behind 2012。2回目がその初来日に絡め、体感した者が20人前後の語り継がれる名古屋公演。名作『Sunbather』リリースに伴う2014年の来日は仕事のために見れずじまいで、3回目は2016年のフジロック。砂ぼこりが舞うポスブラ戦線に熱いものが込みあげるステージでした。ということで本日、9年ぶりのDeafheavenです。

定刻である19時きっちり始まって、「Incidental Ⅰ」をSEにしてメンバーが登場。「Doberman」が一閃すると、会場はたちまち興奮状態に陥る。今回のツアーは3月末にリリースされた6thアルバム『Lonely People with Power』に伴うもの。セットリストはその新作から8割を占めており、バンドとしても自信作であることが伺えます。
Deafheavenは圧倒的にフィジカルを全面に押し出したスタイル。シューゲイズの恍惚とかなんのその。高速のトレモロやブラストビートを主体に、肉体に強く訴えかけてフロアを活性化。ヴォーカルのジョージ・クラークもステージと客席の媒介者となり、激しいスクリームと身振り手振りで観客にリアクションを促し、大きなうねりを生み出していきます。っていうかジョージが丸刈りなのは映像で見てたので把握してましたが、タンクトップ姿の彼からはこんなガッチリした体格でしたっけ?という驚きもありました。

先月にはAlcestの来日公演。そして本日のDeafheaven。ポストブラックメタルにおける両巨頭となる存在を続けて体感しているわけですが、似ているようでいて音楽的な特徴に違うものだと感じます(そもそも出自が違いますしね)。Alcestは幻想的で美しい音像に浸れるもので、物語への没入と温かさがある。対してのDeafheavenはオルタナ/ハードコア上がりというものあるのか、フィジカルなパフォーマンスが先行。前週にTouche Amoreのライヴへ行きましたが、Deathwish産でしか体感できない熱狂みたいなものがあるなと(DeafheavenもTouche AmoreもDeathwishに在籍していました)。
「Brought to the Water」や「Sunbather」という定番曲が大いに盛り上がる。そんな中でサポートギターのIan氏はサポートの枠という遠慮もなく、前へ出てくるステージ・パフォーマンスだったのが印象的。付け加えると、ドラム以外の4人は持ち場を離れてわりと動き回り、煽っていました。

中盤からは立て続けに新作からの曲を披露。ジョージがお気に入りの曲と話してから始まった「Amethyst」はディレイの美しさやぼそぼそとした語り、対比するような激しいパートを重ねながら余韻のあるクライマックスへ。演奏後、楽器を置いて拍手を浴びながら一度ステージを後に。
「Incidental Ⅱ」をSEにして再登場し(最後の方は演奏してました)、第2幕?アンコール? どちらが正しいかわからないですが、再スタート。新作から特に苛烈な「Revelator」でもう一段階ギアを上げると、代表曲「Dream House」が披露されると最高潮。ただここで終わらず。最後を飾ったのは新作からの「Winoa」。改めて『Lonely People with Power』に対しての揺るぎない自信を見せつけ、幕を閉じました。
9年ぶりに見て、Deafheavenはスケールの大きさとタフさを備えたバンドになったんだと実感。80分ほどを猛烈に駆けあがるポスブラマラソンに昂るだけでした。

—setlist—
~ Incidental Ⅰ~
01. Doberman
02. Magnolia
03. Brought to the Water
04. Sunbather
05. The Garden Route
06. Heathen
07. Amethyst
—Encore—
~Incidental Ⅱ~(最後の方は演奏しています)
08. Revelator
09. Dream House
10. Winoa


