フィンランド・トゥルク出身のポストメタル系集団。2001年から活動開始。当初からドゥーム・メタルやスラッジメタルを軸して、ジャズやエクスペリメンタルな要素を交えた音楽性を展開。
これまでに4枚のフルアルバムをリリースしています。2006年にリリースした2ndアルバム『Noir』は隠れたポストメタルの名盤として認知される一枚。
現在の最新作は2015年初頭に発表した6年ぶりの4thアルバム『Secret Youth』となっています。本記事ではCallistoのオリジナルアルバム4作品を紹介。
アルバム紹介
True Nature Unfolds (2004)
1stアルバム。全10曲約58分収録。フィンランドからポストメタルへの回答。隣国の巨星であるCult of LunaのJohannes Perssonの後ろ盾があって、Earache Recordsと契約して世界的な流通を果たすことになります。
音楽的には前述したCult of LunaやISIS(the Band)の影響下にあるポストメタル。メタル的な重圧/強度はオリジナル作品の中で一番強い。タイトルからしてモロな#2「Blackhole」の粗暴かつダークなサウンドはそれを最も感じさせます。
しかし、続く#3「Limb」や#4「Cold Stare」からは重低音の支配の裏で哀愁のフィーリングが感じ取れ、ここぞで鳴るチェロが醸し出すムードに流され行く。
先人をなぞるだけではない実験的なスタイルであって、サックスやストリングスを柔軟に取入れています。根底にジャズやプログレの要素が根付いているのか、単純な剛柔の制圧だけにとどまらない。
スロウな進行による静と動の行き来がありますが、変化のグラデーションが明確です。ただ、ヴォーカルの声質がかなりデスメタル寄り(ブラックといえるかも)。バッキングヴォーカルを含めた複数体制の叫びが苛烈さを際立たせています。
最も”ポストしている”楽曲が#5「Storm」。侘しいイントロのギター、女性ヴォーカリストによるささやきが序盤で済むと、スラッジメタルのヘヴィネスが渦巻く9分となっています。
#8「World Collide」や#10「The Great Divorce」辺りは、ISIS(the Band)の『Oceanic』を引用しつつもシンセやサンプリングを用いて、ひねりを加えている。全4枚のアルバム中で混沌と濁りが強いデビュー・フルアルバムです。
Noir (2006)
2ndアルバム。全8曲約54分収録。静と動のダイナミクスが、前作と比べると整合性と破壊力を伴った上で主軸を担っています。さらにフリージャズやポストロック、プログレ的なエッセンスが増量。
#1「Wormwood」におけるフルートやグロッケンによる美しい彩り、中盤でサックスがもたらす内省的なムード、そしてラストの塗り重なるギターによる黒壁。バンドが一段階上へと駆け上がったことを示すには十分です
スロウテンポでの反復。しかしながらメロウな瞬間の方が優勢であって、多楽器のスムーズな接合が陶酔する柔らかなフィーリングを生み出しています。
スラッジメタルの激動からシネマティックな変遷を辿る#2「Latter Day」、オーケストラルな壮大さを伴う#6「Pathos」、ほとんどが静かなセクションで構成された#7「Folkslave」。1曲の平均的な尺は本作の方が長いですが、ゆるやかな起伏の中で聴き手の心を動かしていきます。
ヘヴィネスによる地響きはあるにせよ、バランスが取れている。そして、北欧バンドが醸し出すような寂寥感や冷ややかさが、底を流れるように伝っています。
しかしながら、やっぱりヴォーカルはドスが効いたデス系低音咆哮なので好みは分かれるかと思いますが、前作よりも聴き心地はソフトになっている。アルバム全体を通した叙情的な変化の賜物というべきでしょうか。
00年代後半からISIS(the Band)解散の2010年までが、ポストメタル最盛期といえる時期だと思います。2006年はCult of Lunaが大名盤『Somewhere Along the Highway』を発表。
その裏で、隣国からCallistoは『Noir』という名盤を残していたのです。かなり地味な存在だけども(汗)。本作のハイライトといえる#3「Fugitive」はポストメタル史に残る名曲。
Providence (2009)
3年ぶりとなる3rdアルバム。全10曲約68分収録で曲は6~7分台というほぼ固定尺で構成。新メンバーとしてヴォーカリスト・Jani Ala-Hukkalaが加入。作品ごとに積極的に変化しているバンドですが、本作はずばりマイルド&美麗化。
クリーンヴォイスの割合が90%以上を占め、それを活かすようにメロウなギターサウンドが主体となっています。端的には、歌ものポストロック/オルタナロック化といえるかもしれません。
随所に瞬間的な過重圧と炸裂はある。唸り声のごときグロウルも、頻度は少なくなりましたが登場はします。ただ、ムード重視の音楽として、洗練された静謐な空間が生み出されている。
ギターやシンセは奥行きのあるサウンド・デザインを担い、サックスやグロッケン、フルートは心地よくも陶酔的なハーモニーに加担。しかし、叙情化がいくら推進されようと、実験的であり続けるという姿勢は貫かれています。現存のポストメタル勢との違いはそこにある。
#1「In Session」や#3「Covenant Colours」の繊細な歌ものからメタル的な威圧への変遷は、本作の真髄といえるはず。また、#9「Drying Mouths (In a Gasping Land)」をこれまでと現在の一番の折衷案としてできただろうポストメタル曲として装備。
サックスによる導入部からマイルドな夜ジャズ・ヴォーカル曲へと仕上がった#5「New Cannan」という新機軸も兼ね備えています。
バンド主導で変化を選び取っていく、実験精神のもとで常に制作を行っているのがCallistoの最大の特徴です。本作は、空間への拡がりと繊細な叙情性に引っ張られながらも、重いとこは重くを貫かれている。
本作に以前よりも”ぬるさ”を感じる人は少なからずいますが、彼等なりの歌ものへの挑戦が功を奏しています。
Secret Youth (2015)
6年ぶりとなる4thフルアルバム。活動15年でアルバム4枚しか出してないという完璧主義者か、大所帯ゆえの製作の難しさがあるのかもしれません。ポストメタルの一角を担う存在として、知名度はそこそこあるベテランという立ち位置。
路線は前作『Providence』から引き続いて、マイルドな味わいにしたシネマティックで叙情的な仕上がり。クリーン・ヴォイスを中心とした歌(時折、叫びますが)と重厚なグルーヴが、古びた廃病院内をひたすら引率するようです。
”Progressive Noise Rock”とメンバー自身は本作について言及していますが、確かに基本はプログレッシヴな構成を取ったダーク系ロックという印象は強い。
#2「Backbone」のようにポストメタルの王道と言える楽曲もあれど、ポスト系の轟音はあくまで差し色として使用しているので、静と動のコントラストで魅了するタイプとはまた違う。
暗黒儀式めいた雰囲気、またモノクロのK-Scopeと呼ばれたそうな渋さは、彼等が年齢を重ねてきたことを伺わせます。
#5「Lost Prayer」や#7「Grey Light」のようなメロウな側面を押し出した楽曲はメンバーとしても自信を持ってそうですし、新メニューとしては良いと思います。ポストメタルとして聴く者をふるいにかける意図を持った作品だとも思います。いぶし銀の2番打者のようなアルバム。