スウェーデンのポストメタル巨星、Cult of Luna

 未だ日本の地に降り立たぬポストメタルの巨星、Cult of Luna。1998年にスウェーデンのウメオにて結成された6人組です。活動は20年を越えており、2021年現在まで精力的に活動を続けています。

 同年代を共に歩んだISIS(the Band)と同じくポストメタルと呼ばれる重と美を備えたサウンドが主体。2004年発表の3rdアルバム『Salvation』にて自らの音楽性を確立すると、2006年の4th『Somewhere Along the Highway』にてその地位を不動のものとします。

 メンバーの脱退があったものの新体制にて制作された2013年リリースの6th『Vertikal』では、映画「メトロポリス」を題材にしたコンセプチュアルな作品に仕上がっており、さらに自身の音楽を拡張しました。その後はアメリカの女性シンガーであるJulie Christmasとのコラボレーション作品『Mariner』、2019年には7th『A Dawn to Fear』を発表しています。

 メンバーの活動は多岐にわたり、オリジナル・メンバーであるMagnus Líndberg(フィンランドの現代音楽家とは別人です)はサウンドエンジニアとして長年活躍。ドラムのThomas Hedlundはフレンチ・ポップバンドPhoenixのサポート・ドラマーを務めています。キーボードのKristian Karlssonはインスト・バンドのpg.lostでベーシストを務めています。ちなみにpg.lostは2017年に来日しています。

 本記事は、Cult of Lunaのオリジナルアルバム7作品、Julie Christmasとのコラボレーション作品、そして最新作となる2021年2月リリースのEP『The Raging River』について書いています。結成から20年以上経ち、ずっと一線に君臨し続ける彼等の音をぜひ聴いていただきたいものです。

目次

Cult Of Luna(2001)

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 1stアルバム。6人編成で制作されており、Earacheからリリースされています。まだこの頃はジャンル自体が曖昧な定義だったものの、初期からポストメタル/アトモスフェリック・スラッジの要素を用いております。静と動を行き来する長尺構成で全8曲約1時間。以降のアルバムで聴かせる基礎というのが本作に根付いているのがわかります。

 ミドルテンポの中でクリーンなメロディや重いリフを刻み、随所で咆哮をあげるスタイルの確立。その上でスラッジメタル~ハードコア的な暴力性や熱さが前に出ているのが、本作の特徴でしょう。ただ、GODFLESH譲りだったISIS(the Band)の初期作のように殺伐感と重金属感は強くなく、もっと整然としている印象があります。この辺はデスメタルが盛んな北欧バンドならではなのか。

 前のめりに行きたそうな雰囲気はありますが、リードで繋がれた犬のように速さは抑えられています。先駆者Neurosis、ポストロック界からはMogwaiがこの時点で世界的に飛躍していましたが、強引に表現してしまえばその両者のドッキングっぽく思える部分はあります。ただ、ハイライトトラックとなる14分にも及ぶ大曲#4「Sleep」ではチェロをフィーチャー、GY!BEのような厳かな空気感をもたらしています。

 本作以降の作品のようにアルバムを通してのコンセプチュアルな要素は薄い。しかしながら、ダイナミックなシフトといい、表現の根幹といい、CUlt Of Lunaの核はこの時点で創り上げられています。

The Beyond (2003)

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 約2年ぶりとなる2ndアルバム。1stアルバムからの順当なレールの上を行く。深淵を覗くようなメロウなパートが増えはしましたが、前作よりも増して残忍な重低音が強烈になっています。ハードコア/スラッジメタル要素は荒く強く、それでいて曲も長い。全10曲収録で74分47秒と、かつては当たり前の存在だったCDの収録時間ギリギリまで収めて、地獄をできる限り引き伸ばしています。

 短いインタールード#1を抜けると、いきなり圧殺の#2「Receiver」が炸裂。スラッジメタル由来のリフを塗り重ね、野太い咆哮が轟きます。その中で電子音やサイケデリックな音を添えようと試みています。2002年にはISIS(the Band)『Oceanic』の発売があり、触発された部分もあるでしょう。前作からの上積みを新たな表現を加えることで実現しようとしました。しかしながら本作において、時間をかけてグラデーション表現される粗暴さと攻撃性は、彼等の作品の中でも抜きん出ている印象を受けます。

 メロディックな落差を有効活用しつつも暴力的なスラッジメタルを炸裂させる#6「Arrival」があり、今回は我慢せずに少しだけ速度を上げた撲殺ソング#7「Leash」も用意。前作でも述べましたが、曲によってはGY!BEみたいな厳粛な雰囲気が出ていて特に#5「Circle」にて垣間見えます。ドゥームメタルとサイケデリック、後のSF要素にも連なる電子音とが交錯する#10「Futher」はバンドのポテンシャルを知るには十分といえます。

 ちなみに本作はイギリスのFact Magazineが2015年に発表した【ポストメタル・レコード TOP40】にて第36位にランクインしています。しかしながら、このランキングは全体を見渡すとマスオさんぐらい「えぇ?」って言いたくはなる。だって、ランクインしてない傑作多すぎでしょ。

Salvation(2004)

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 1年8カ月ぶりとなる3rdアルバム。キーボーディストのAnders Teglundを迎え、7人編成で制作されました。本作からぐっとビルドアップされており、作風的に現在のCoLに通ずるものへと変化しています。音楽IQが急激に上昇したように感じ、轟音と静寂のダイナミクスの付け方が、理想的なレベルへと引き上げられました。

 それを象徴する楽曲が初めてMVが制作された#3「Leave Me Here」です。ずっしりと重たいリフが押し寄せる中で、孤独を呼び寄せるようなメロディが流れ出し、その反復構造の中で咆哮と少々のクリーン・ボイスが乗る。北欧の冷気を脅かすように本曲は存在感を放ちます。わたし自身もこの曲はかなりお気に入りの曲です。

 いきなり12分30秒にも及ぶ冒頭の#1「Echoes」は密教的なリズムと反復するリフに引っ張られる中で膨圧し、#5「Adrift」も#3同様に静と動の対比による相互作用/相乗効果を可能な限り高めています。洗練という言葉は、メロウなパートの進化で使われることが多いですが、本作においては剛柔のバランス感覚に優れています。

 70年代プログレで聴けるようなキーボードを加味しつつ、侘しい単音ギターやエレクトロニクスの活用などで空間表現に磨きをかける。曲は耐性のいる長尺な構成がほとんどですが、肉体的にも精神的にも重い衝撃を有しています。沈みゆく静寂の前半から古めかしい印象を残すキーボードが連携しだし、轟音の世界へと飛び込んでいく#4「Waiting For You」が中盤を締め、本作中でポストロック度が最も高い#8「Into The Beyond」によって全体を締めくくる。

 ”Slavation = 救い”と題された中にCoLの進化を見る。プロトタイプというよりも高いレベルの完成度を誇っていて、ターニングポイントとなった重要作といえます。

Somewhere Along the Highway (2006)

 2年ぶりの4thアルバム。全7曲65分収録。前作と本作においてCoLは、ポストメタル界における地位と名誉を不動のものにしました。特に最高傑作と謳われるのが本作です。一応の証明として、メタル誌”Decibel Magazine”にて2006年のベストアルバム第5位に選出されています。

 スラッジメタルとポストロック、プログレッシヴロックの衝突による明確な産物としての巨大なサウンドとスケール。地鳴りのごときツインドラムとトリプルギターで牽引し、怒号のスクリームヴォイスが炸裂する#2「Finland」はそれを体現します。前作『Salvation』よりもさらなる高みへと推進。スペーシーな電子音を加味しながら遅く重く構築されていく#3「Back to Chapel Town」もまた大地に跪くことを余儀なくされます。

 北欧のノーベル文学賞受賞者である小説家ジョン・マックスウェル・クッツェー『マイケル・K(原題:Life and Times of Michael K)』に触発され、”男性の孤独”を本作はテーマに据えています。そんな侘しさや哀愁というのが凝縮して表現されているのが#4「And With Her Came The Birds」。最も優れた変化球として放たれるこの曲は最も感情的であり、これまでの曲の中で最も”歌”に焦点が当たる。その歌に添い遂げられながら暗いまどろみの中へ。本曲の手応えがあってか、以降の作品で同タイプの曲が効果的に用いられるようになります。

 後半へ向けては叙情性の強いポストメタルという趣に拍車がかかります。#5「Thirtyfour」#6「Dim」ともにメロディックなインストを主体にしつつ、凪いでいた海はクライマックスで確実に荒れ狂う。そして、16分近いラストトラック#7「Dark City Dead Man」には、思慮深く深遠な音の果てに蹂躙されるような衝撃があります。その音は精神の深みに棲みついてやまないもの。

 ポストメタルの大海に身を投げる、そんな時に『Somewhere Along The Highway』は間違いなく最適解のひとつです。発売から10年経過した2016年にアルバムを完全再現した時のライヴ作品『Years in a Day』がリリースされていることからも、本作がバンドにとっていかに重要作かが伺えます。

Eternal Kingdom (2008)

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 2年ぶりの5thアルバム。高速道路沿いのどこかは、永遠の王国に辿り着く旅路でした。初期の完成形を見た前作を経ての本作。10分以上のポストメタル・カタルシスマラソンは#3のみとなり、短いインタールードを3曲含みつつ、曲自体はいつもより少しだけ短い。といっても6分~8分は平気であるので初心者にうかつに勧められるわけではありません。

 wikipediaによると既知のコンセプトはないとのこと。リリース当時にジャーナリストへ語った「精神病院に収容されたホルガー・ニルソンという囚人の日記」からというのは、冗談だそうです。

 ドゥームメタルの鈍い重さに寄りつつ、実験的な印象を残すのが本作です。急にホーンのアクセントを用いだした暗鬱たる救済曲#4「The Lure」、映画のサウンドトラック的な余韻に浸れる#7「OsterBotten」と短いインタールードで世界を捩じるような変化を入れ込む。最後を締めくくる#10「Following Betulas」は特徴的なドラムの連打と猛烈なスクリームが牽引しつつ、クライマックスではホーンが混沌の中に組み込まれて永遠の王国を祝す、今までにないエンディングを迎えます。

 そういった己の音楽性+ポストメタルの革新と拡張を目指している中で、やっぱり響くのは#3「Ghost Trail」。暗く重たい雰囲気で満たした序盤から3分付近で一気に美しい展開が成されていく。強さと重さを継続したリズムの中で、メロディックなアルペジオが花開く甘い優雅な時間を約束します。7分までなら比類なき完璧なポストメタル曲として君臨。ケチをつけるなら7分以降は蛇足じゃないか、というのを何十回聴いた中でも感じることですね。

 本作はCoLの中でも特に傑作とされる『Somewhere Along the Highway』と『Vertikal』に挟まれた作品ということもあって、存在感は薄くなっています。しかしながら、音楽的な実験と拡張性の結果が『Vertikal』に繋がっている点もあって聞き逃せない作品です。#1「Owlwood」#3「Ghost Trail」辺りはライヴでも演奏頻度が高い。

Vertikal (2013)

 5年ぶりとなる6作目。Klas Rydberg(Vo)が抜けたため、リード・ヴォーカルには、ギターのJohannes Perssonに白羽の矢が立ちました。

 3年前にIsis(the Band)解散というポストメタル界において大きなトピックがありました。しかし、ジャンルの覇権争いでいえば、彼等が筆頭となるでしょう。4thアルバム『Somewhere Along the Highway』という大きな功績がそれを証明します。大地を揺るがすヘヴィネスがあり、雄大なメロディとロマンティシズムがあり、壮大なスケールがありとポストメタルの旨味を全て有しています。スラッジメタル色や北欧系の耽美性が強く出ているとはいえ、そのサウンドは多くのファンを惹きつけます。

 本作は、SF映画黎明期の傑作とも評されているフリッツ・ラング監督による1927年公開の映画『メトロポリス』を題材に制作。特にその影響下にあるのが18分にも及ぶ#3「Vicarious Redemption」であり、また#5「Synchronicity」だと感じます。前者は、トリップホップ~ダーク・アンビエントを起点にスラッジ・リフの津波が襲いかかり、後者はSFチックなシンセが怒号のヘヴィネスの中で映えます。

 『Eternal Kingdom』にてみられた拡張が、こうした宇宙を思わせるスペーシーな感覚や幽玄なアンビエントへ繋がっていくのは単純に驚き。それらが重さとダークなトーンを支配的にはせず、絶妙な塩梅として機能しています。渋く妖しいドゥーム・メタル歌唱#9「Passing Through」も効果的。

 しかし、わたしがCoLに求めるのは2「I: The Weapon」であり、#8「In Awe Of」のような静・動のきっちりとした長大重厚ポストメタル曲。特に#8「In Awe Of」は名曲「Leave Me Here」や「Finland」に匹敵する、重厚な轟きと幻想的な叙情味によってカタルシスを誘います。綿密に構成された全10曲約66分は、傑作といえるレベルの作品です。

Vertikal Ⅱ (2013)

 2013年初頭にリリースした『Vertikal』の続編となるEP作品。4曲のみの収録ですが、時間は約35分とEPなのにボリュームは満点。しかもJustin K Broadrick先生によるリミックス曲まで収録しています。

 そんな本作は、『Vertikal』の一応の最終曲にあたる「Passing Through」と地続きであることを示すように、ひたすら呪術的なダウナーなムードに沈める#1「ORO」からスタート。虚無感の強いメロディを引っ張りながら、静を基調とした暗黒音楽として機能させており、これまでと違った引力を持つものになっています。

 続く#2「Light Chaser」では宇宙と交信するような電子音を走らせながら、重厚なポストメタルへと肥大化。この中では一番CoLらしさを感じさせる#3「Shun The Mask」も幽玄な雰囲気に包んで時間を刻む。そして、最終局面において最重量のグルーヴと激しい咆哮を見舞う辺り、強烈です。

 これら3曲を収録した本EPは、確かなヴィジョンを持って制作された傑作『Vertikal』を上手く保管。さらに強固な作品へと格上げするものとしてしっかりとした役割を果たしているように思います。そして、目玉となるジャスティン先生のリミックスとなる「Vicarious Redemption」が、やっぱり天上界へと舵を切る美麗エレクトロニクスの旅といった感じでうっとり。個人的には、同氏が手掛けたISISの「Celestial」のリミックス(2001年リリースの『SGNL>05』に収録)に匹敵する素晴らしさなので、是非ともチェックしていただきたい。

Mariner(2016)

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 約3年ぶりとなる新音源は、Battle Of Mice等に参加したブルックリンの女性歌手であるJulie Christmasとのコラボ作品。コンセプトに「Space Exploration = 宇宙探査」を据えています(作品情報は海外版wikiを参照)。全5曲約55分収録。

 コラボ作品とはいえ、笑っちゃうぐらいにCult Of Lunaタソです。静・動行き来型の平均10分の曲尺、暴力性をはらむ重低音、退廃的なメロディ、SF感が漂うシンセの装飾、空気を切り裂く咆哮など。彼等たらしめる構成要素は惜しみなく使用。スペシャルな女性が手を貸すということで、相手に合わせてと考えるところだと思いますが、本店の味を変えるなんて真似はしておりません。黒雲のごときダークな意匠と堅牢な構成管理でズシリと来るCult Of Lunaを貫いてます。

 Julie Christmasの方はというと、OathbreakerのVoみたいに激情に動かされるままに叫んだり、Chelsea Wolfe姐さんのように暗鬱に歌ったり、神聖さやゴス/ロリっぽい感じも出したりと上手く色をつけています。これまでと同じように聴けて、でも違う五感への刺激。ポップやマイルドになったという印象はありませんが、入り口としての機能性はあり。主導権は完全にCult Of Lunaの方ですが、鬼気迫るかのような両者の本気のぶつかり合いによるダイナミズム/ドラマティシズムは、これまでになかった彼女の異質な響きがもたらした点が大きいでしょう。

  その中でラストを飾る#5「Cygnus」が、映画「2001年宇宙の旅」のスターゲートにインスパイアされたものだそうで、『Vertikal』の感触を宇宙遊泳化させた15分近い体験に衝撃を受けます。どこ切り取ってもCoL印のサウンドに、Julie Christmasがソロ歌姫のように振る舞う#3「The Wreck of S.S. Needle」もまた本作を象徴する1曲。

 集大成といえる『Vertikal』の次作というと難しさであり、重圧であり、モチベーションでありっていうのがどうしてもつきまとうものです。しかし、コラボレーションという形を取って十二分に納得のいく作品を残してくる辺りは流石ですね。

A Dawn to Fear(2019)

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 単独作としては約6年ぶりとなる7枚目のフルアルバム。過去最長の8曲79分収録。結成から21年経ってもCoLはCoLたる所以をリスナーに突き付けます。前コラボ作がバンドを前進させるための必要な儀式。だとすれば、枯れた哀愁がダウナーで湿り気のある雰囲気を作っている本作に繋がっていくのも頷けます。その上でポストメタルの巨星として最も重さを感じる作品を創り上げている。

 先行公開された#1「The Silent Man」の轟き一発は聴き手を黙らせ、強制的に納得させるほどの説得力を誇ります。豪胆なスクリームと轟音ギターが寄せては返す伝統手法に、後半からはドラマティックなオルガンが美しい彩りを添える。10分を超える挨拶代わりのスタートで、アルバムへの”期待と予感”をいつも通りに高めます。

 ただ、そこからはダークサイド哀愁のターン。スラッジメタル由来の重音と咆哮が炸裂はするものの、漆黒のグルーヴと深く陰りのあるメロディが退廃的な雰囲気を優勢に導いています。前述したようにオルガンは重宝されていて、要所で控えめに登場するクリーン・ヴォーカルがゆっくりとした進行にフィット。表題曲#3「A Dawn to Fear」は熟練された表現の上で、ここまで垂れ流しの哀愁と虚無を誘うメロディを聴かせ続けるとは驚きます。

 10分超の#4「Nightwalkers」と約15分に及ぶ#5「Lights On The Hill」は暗黒の美質を保ちながら轟音化のプロセスを辿る。#6「We Feel The End」に至っては、まろやカルト・オブ・ルナの境地に初めて達し、神秘と幻想の彼方へと連れていかれます。ヘヴィ&アトモスフェリックな音像は基本線ながらも、ここまで聴かせにかかるとは。

 しかしラストに着火し、問答無用で叩きつける#8「The Fall」の重低音に平伏すしかありません。年数を重ねるごとに増していく凄みと威厳、それに付随したポストメタル最後の砦感。研ぎ続ける冷徹冷酷粉砕の重低音、侘しさを湛えたメロウさ、練られ続ける構成。スウェーデンの巨星はポップスを強大な重音で蹴散らしながら、己のスタンダードを常々更新し続けているのです。

The Raging River(2021)

 2021年2月にリリースされた5曲入りEP。バンド自身のレーベルであるRed Creekを立ち上げて、その最初のリリースを飾ります。The Raging River = 荒れ狂う川。B’zに同タイトルの曲がある。5曲といっても約38分の収録で、他のバンドにとってはフルアルバム並のボリューム。ハーフ・オブ・CoLといいたいところですが、時短ではありません。単に5曲しか収録してないだけで、10分近いor超える長尺曲が並んでいます。

 自らが紡いだ伝統の味、コラボレーションがもたらす味の両方があります。2020年末に先行公開された#1「Three Bridges」は伝統の方に属す美重ポストメタル曲ですが、緻密な構成の中で静から動への往復と神秘的な雰囲気をまとい、終盤では何層にも重なる分厚い音が寄せては返します。12分を数える#5「Wava After Wave」において膨圧はすることなく、空間をレイヤー/グラデーションでゆっくり塗分けていく中でJohannes Perssonの叫びが痛烈に木霊し続ける。単なる焼き直しではない変化をしっかりと入れています。

 そんな中で本作のトピックとなっているのが#3「Inside of A Dream」。アメリカのグランジ・バンドであるScreaming Treesの元ヴォーカル、Mark Laneganを迎えて、ろうそくの火のように非常に抑制の効いた歌ものを届けます。Julie Christmas以来となるコラボレーションの味。かつての「And With Her Came The Birds」を思わせる哀愁を帯びていて、シネマティックな要素を本EPに追加しています。

 これまでとこれからが示されているようには感じますが、5曲40分は入門編に向くのかどうか。最初に書いたとおりに時短ではありません。手っ取り早く彼等のサウンドの真髄を知りたいなら、本作はオススメできます。YouTubeを2倍速で観ているわたしのような人間はそれこそCoLの音にぶん殴られるわけです。

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