
2012年に結成されたルーマニアのポストブラックメタル5人組。本記事は2025年5月にリリースされた3rdアルバム『Infinite Presence』について書いています。
作品紹介
Infinite Presence

3rdアルバム。全6曲約41分収録。”2023年夏から2024年夏にかけて書かれたもので、最も輝く希望と最も深い不在の産物である“という説明がされている本作。内容としてはルーマニアのDeafheaven的な異名をつけざるをえない感触あり。
オープニングを飾る#1「The Sun Will Always Shine」からしてポストロックとシューゲイザーとブラックメタルの共存関係を迫ります。ブラストビートやスクリームを中心軸に置きながらも、端正なクリーンヴォーカルや清冽さをもたらすギター、鍵盤が柔らかな聴感を補足。続く#2「Little Fountains」も攻撃性を補って余りあるノスタルジックなメロディが味となっています。
ユダヤ人小説家のアーサー・ケストラーの著作からタイトルを拝借したという前作『Inert & Unerring』もチェックしましたが、メランコリックな質感はあっても暗い湿地の中にいるようなブラックメタルっぽい感触でした。それが暖色で構成されたアルバムジャケットといい、太陽というスポットライトを浴びたことといい、まるで大学デビューみたいなレベルで変化しています。闇を突き破った先である光への属性変化はトレンドなのか。
INVISBLE ORANGESの記事によると”愛する人の病気や闘いを目の当たりにし、助けることができないことについて歌っている”という#3「Stay a Little Longer」は、美醜明暗の対比が際立つようなダイナミックな展開を持っています。一方で同曲の終盤や#5「To Not Grow Old」で差し込まれるエレクトリックな質感は、他にはない味わいをもたらしている。
表題曲#4「Infinite Presence」は間奏曲といえる約3分のアコースティック・ナンバーで、攻撃性や忙しなさをホンの少しだけ忘れさせます。そして#6「I Want You Here」の終盤、打ち寄せる波の上を泳ぐクリーンなギターの音色にしみじみ。光のどけき本作は、『Sunbather』を切り離せない部分はあっても新しい温かみをもたらす作品に仕上がっています。
