個人的名盤66選

 名盤とは何かといっても、基準は人それぞれ。芸術作品はどうしても人の好みによって変わってしまうもの。そこで”個人的”という逃げとされる枕詞をつけて正当化しにかかった中で、本記事はつくられております。

 作品は当サイトとして出すならというのを重視して選びました。数少ない日頃からの読者の方でしたら、この人らしいなと思われるでしょうし、知らない人には発見があればという形で作っています。先に予告的なことを言えば、フェスで例えるならばAfter Hours+ヴィジュアル系+ポストメタル的、プログ勢抜きのArcTanGent Festival、Dunk! Festival寄りといった感じ。

 それに加えて今はあまり聴いてないけれど、自分が若かりし頃に影響されたものは入れています。そして、わたしがライヴをみたことがあるというのも基準のひとつにしています(もちろん、見たことないのも入れている)。定番は入れたり、入れなかったり。その辺はわたくしの選出であり、さじ加減ということでご了承ください。

 今のところ66作品です。ポストメタル・ディスクガイド同様に最終的に100作品として完成を見る形をとっています。並びはA→Zの順。1アーティスト1作品のみ。

 以下、本文から”である調”で統一しています。長いですが、是非ご覧ください。

目次

個人的名盤66選

Alcest / ‎Souvenirs d’un autre monde (2007)

 ポストブラックメタル/ブラックゲイズの始祖、ALCESTの1stアルバム。ブラックメタルの狂気はほぼ無し。全6曲は心地良いテンポの曲で占め、センチメンタリズムが通底。ポストロック、シューゲイザー、アコースティック等のジャンルが融解して生み出される極上のハーモニーと多幸感に包まれる。降り注ぐ柔らかく清らかな光、夢の中にいるような温かい時間。自身の幼少の頃の神秘的体験、それを音楽でどこまでも美しく彩っていくNeigeの真骨頂を聴かせた傑作。

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Amenra / De Doorn (2021)

 ベルギーのポストメタル重鎮の7thアルバム。盟友であるOathbrekerからVo.Caro姐が久々にゲスト参加して生まれた傑作。特徴は明らかに余白と朗読が増えたこと。最低限に音を減らし、静かに語るパートがどの曲にも存在する。聴き手に対して己の内面を深く見つめ直すことを促すように。もちろん暗黒と重音を統率して「痛み」を限りなく表現する儀式は健在。本作は決して苦痛への招待状ではなく、暗闇の淵に引きずり込むようなものではなく、生命を尊み悼む音が押し寄せる。

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American Football / LP3 (2019)

 アメリカ・イリノイ州の4人組ロックバンドの3rdアルバム。90’sエモとポストロックの接続から普遍的な魅力を生み出し、なおかつシカゴ音響~USインディー、ドリームポップといった領域にも効果的に足を踏み入れる。トランペットなどの管楽器やフルート、ピアノの音色までを取り入れる贅沢さ。そして、熟成された歌とサウンドがもたらす”のどかで感傷的”という独特の味わい。3名の女性ヴォーカリストの参加してもたらされる上質さ。感情を爆発せずとも発せられる大人エモは、しみじみと心の中が潤ってくる。

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Anathema / ‎We’re Here Because We’re Here (2010)

 UKの6人組の7年ぶりとなる8thアルバム。これを2010年に初めて聴いたとき、過去作は全て未聴だった。だが、すぐに気に入って何度となく聴いた。優しいメロディが鼓膜を震わせ、マイルドでウェットなヴォーカルが骨の髄まで染みわたるように伝わる作品。気品高い美しさを纏い、崇高な光に大地が艶やかに照らされていくような感覚を持つ。ソフトな女性Voや上品で流麗なピアノ、ストリングスにオーケストラ・アレンジが細心の手つきで施される。ゴシックの船出からオルタナ~プログレを経由しつつ、シガー・ロスやEfといったポストロック勢との親和。この儚く神々しい世界観は、Anathemaの新しい魅力となった。

ASIAN KUNG-FU GENERATION / ソルファ (2004)

 日本の4人組ロックバンドの2ndアルバムで、最もセールスを記録した作品。2004年当時は、ほとんどこういう系を聴いたことがなかったのだが、アジカンにはハマった。その文学性と情熱が自分にヒットしたのだと思う。#7「サイレン」は特に好きな曲で、#1「振動覚」~#2「リライト」に#8「Re:Re:」もまた良く、存在証明を鳴らすエモさはいくつになっても響くものがある。『崩壊アンプリファー』『君繋ファイブエム』と本作を含めた初期3作はかなり聴いた。そして、2016年に再録された『ソルファ(2016)』は、円熟味を増した内容で聴き比べて違いを楽しめる。アジカンをライヴで見たのが2005年、そんなに経ってしまったかと思う。

あさき / 天庭 (2013)

 BEMANIシリーズで活動しているゲームミュージック作曲家の2ndアルバム。発売当時は話題となっていたのに全く知らない存在だったので聴いてみた。すぐに納得するぐらい強烈だった。自身では”京都メタル”と評す音楽性は、ダークなヴィジュアル系+精微なプログレッシヴ・メタルの混成という印象。たが、それだけで終わってない独創性を発揮しており、10分を超える表題曲#2「天庭」からして目まぐるしくダイナミックな展開に圧倒される。さらには徹底的に”和”を重んじる姿勢、それこそが京都メタルという本人解釈に繋がっているはず。MALICE MIZER + MORRIE御大のインパクトある#5「つばめ」を含め、作り手の信念を隅々にまで感じさせる15曲75分の超大作。

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BABYMETAL / BABYMETAL (2014)

 ”世界のBABYMETAL”の礎を築いた1stフルアルバム。いにしえのメタルから王道のメロスピ、日本のヴィジュアル系文化、さらにはミクスチャーやピコリーモ、ダブステップ、Djentといった近年のトレンドまでを丁寧に抑えたバラエティに富む楽曲群で作品を構成。さながらメタル博覧会の様相を成しているが、モダンな視点からの再構築、リスペクトを込めた引用もあり、随所に興味深いアプローチやフックが効いている。しかも彼女達のフィルターを通すことで、絶対的なポップネスとキャッチーさをもったものへと昇華。そして、本作から世界を驚かせていくことになる。

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bluebeard / ‎bluebeard (2001)

 1997年12月から2001年前半にかけて活動。短命ながらも日本のエモ・バンドとして影響を与え続けている存在。彼等の最初で最後のフルアルバム。全8曲で約27分という短い収録時間ながら、日本のエモを語る上で絶対に欠かせない名盤として語り継がれている。理想的な形で90’sエモのフィーリングを凝縮し、日本人の視点から再構築したような感触。それゆえにひとつの完成系を本作で表現したといっても過言ではない。伸びやかなヴォーカリゼーションと一級品のメロディ、蒼い情動が生んだ奇跡の様な1枚。2015年にリマスター再発されるも現在は入手困難。

BORIS / NOISE (2014)

 世界的に活躍する日本のヘヴィロック・トリオの2014年作(多作過ぎて何枚目かわからない)。メンバー自身がようやく自分たちを総括する集大成のような作品ができたという内容。ここには彼等なりにロックの中心を射抜こうとするBORISも、ロックの範疇を飛び越えて実験的な音響を生み出してきたborisも等しく集約されている。ヘヴィロック、シューゲイザー、ハードコア、ポップス、ドローン、アンビエントまでもが統合。Borisを語る上で欠かせないワードのひとつである『NOISE』がタイトルに使用されているのも妙に頷けてしまう1作。あと、ヴィジュアル系イズムを彼等のカタログで一番感じる作品でもある。

Bring Me The Horizon / That’s The Spirit (2015)

 かつてデスコア・バンドだった英国ロックバンドの5thアルバム。夢見るデスコアじゃいられないということで、前作辺りから顕著に変化してきたが、それが本作で大輪の花を咲かせる。獰猛な肉食獣を思わせる激しさをほぼ封印し、歌とメロディに焦点を当ててのメインストリーム展開。代表曲となる#3「Throne」や#9「Drone」収録し、世界中の人々を巻き込んだ。例え変化をしようと納得させるだけの曲/作品が残せれば済むと、勇敢な改革が行われたこのドラマティックなアルバムは教えてくれる。

cali≠gari / 15 (2021)

 1993年に結成された異形のヴィジュアル系バンドの3年ぶりとなる15thフルアルバム。活動休止からの復活以降では『12』を凌いで最高傑作だと感じる内容。アダルト・ヴィジュアル系(略してAV)というには、あまりにエネルギッシュで快速のドライヴ感があり、後半の楽曲では哀愁よろしくがブーストしていくのもらしい。熟練と変化の両軸が基本にあるからこそ成せた作品であり、キャッチーなのに凝っているこのバランス感覚よ。#1「ひとつのメルヘン」や#3「嗚呼劇的」、#7「ニンフォマニアック」など佳曲が揃い、入門盤としてもオススメできるし、その扉は開いている。

Caspian / Tertia (2009)

 アメリカ・マサチューセッツ州のインスト・バンドの2ndアルバム。先人のメソッドによる轟音ポストロック様式を軸にして、儚げな叙情を湛えたメロディ、嘆き叫ぶかのように爆発する轟音を大胆かつ緻密に行き交う展開で引きつける。美しさと激しさを兼備したツインギターは迫力を増し、剛・柔の表情がさらに豊かになったベースライン、パワフルな躍動感が強まったドラミングと相まって強烈な磁場を築く。オリジナル・アルバムの中でも最高傑作に挙げられることもある作品で、ポストロック界を代表する名曲として君臨する#10「Sycamore」収録。わたしとしては#3「Ghosts of the Garden City」が最も好きな曲。

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Children of Bodom / Are You Dead Yet ? (2005)

 フィンランドのメロディック・デスメタルの雄、5thアルバム。前作『Hate Crew Deathroll』を最高傑作にする人は多いし、実際にそれほど評価は高い。でも、わたしはこれを一番聴いているし、本アルバム発売時の来日ツアーに参加している点が推す理由である。キーボードの音色が抑えめになり、モダンヘヴィネスに寄ったつくり。そこが賛否両論だが、わたしはアメリカンな激しい音楽好きなので、程よくピロピロはしていて重厚なところが合っていたんだと思う。稲妻のような衝撃が走る表題曲#2「Are You Dead Yet?」、ライヴに欠かせぬ#5「In Your Face」など収録。アレキシ・ライホは亡くなってしまったが、2005年、2009年と彼の雄姿を見られて良かった。

COALTAR OF THE DEEPERS / THE BREASTROKE (1998)

 今や作曲家としての仕事の方が多いだろうNARASAKI氏を中心とする日本のロックバンド。本作は1991~1998年までに発表した楽曲の中から選りすぐった13曲を収録したベストアルバム。メタル・シューゲイザーを筆頭に、ハードコア、オルタナ、テクノ、アンビエント、インダストリアルなど多種の要素を調理して構築。破壊力満点の轟音を操りながらも、琴線を擽るポップネスがとても刺激。#2「My Speedy Sarah」は初めて聴いた時は衝撃的だったし、#3「BLINK」、#4「SUBMERGE」はいつ聴いても最高。でも、本作を初めて聴いたのは再発された2008年。発売当時の1998年にこれを聴いていたら、聴く音楽が変わっていたのかなと思う。

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Converge / Axe to Fall (2009)

 ボストン出身のハードコア界の重鎮の7thアルバム。バンドと紐づけされる名作『Jane Doe』よりもわたしは本作推し。世界陸上100m決勝の真のテーマソングこと#1「Dark Horse」をド頭に猛烈なスピードで感性を焼き払う曲が並ぶ。Cave Inのメンバーが参加する#4「Effigy」、NeurosisのSteve Von Tillが参加した#12「Cruel Bloom」もあり。まさに混沌を知る教典。ストイックに突き詰めたハードコアの真髄を激しく美しく表現している。

Cross My Heart / Temporary Contemporary (2000)

 アメリカ・ボルティモアの叙情派エモ・バンド。1997年から2001年までと短い活動期間で残した唯一のフルアルバム。1st EPを踏まえて洗練された内容で、大人びた叙情性を帯びた曲が続く。クリーントーンを主体に彩られる淡く切ないサウンド、繊細な歌心を持ったRyan Shelkettのヴォーカル。バンドを支える屋台骨は変わりはないが、ゆったりとしたテンポの中で綴られる哀愁のメロディは、さらに磨きがかかる。これぞ熟成のスロウ・エモといった感じ。とはいえ、個人的な葛藤と物悲しいドラマ性を湛えており、繊細かつ深みのある感情表現に心が締め付けられる。

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Cult of Luna / The Long Road North(2022)

 スウェーデンのポストメタル大御所による2022年発表の8thアルバムは、全9曲約69分といつも通りの重厚長大な旅路。20年以上のキャリアに基づいたヘヴィネスとダイナミズムはいつも通りに聴き手を制圧し、超然とした音だけが語る真実と影響力がある。自身が持つ最大限の強みと伝統を誇示しつつ、ゲスト奏者との接続によって全く異なるテクスチャーもその世界に内包。決して驕ることなく、CoL音楽の求道は続く。だからこそ現在のポストメタルは、彼等と共にあり続けている。本作でハイライトとなる#8「Blood Upon Stone」は、わたしの中では2010年代以降のCoL最強曲。

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D.A.N. / NO MOON (2021)

 “いつの時代でも聴ける、ジャパニーズ・ミニマル・メロウを追求する”日本の3人組による3rdアルバム。ひょうひょうとした風貌から恐ろしい作品を生み出し続けており、小林うてなさんが再び全面参加した本作は最高値を更新。タイトル通りの#1「Anthem」におけるD.A.N.要素を全部用いてのゴージャス集中砲火で幕開け。やや速足のBPMで重厚かつプログレッシヴともいえる曲の中で、”未来は無重力のダンスフロア”と歌うように音が踊りまくる。ド頭はド派手に盛り上げ、すぐに沈み込むような地と海の底を眺め、徐々に浮上しながら月のない世界に飛び込んでいく。複雑かつ重厚化しながらも、昂揚の波は全12曲に渡ってひたすらに押し寄せてくる。

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Deaheaven / New Bermuda (2015)

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DIMLIM / MISC. (2020)

 日本のヴィジュアル系トリオのフルアルバムとしては2ndアルバム。音楽としてはまるでBring Me The Horizonのごとき転身。ラウドロックの剛と重による武装をやめて、フジロックにも出演経験のあるインスト・バンドのCHONを思わせるトロピカルフレーバーの効いたマスロックへ。クリーンを主体に編み上げて淡麗かつ涼感を伴うサウンドに変化し、随所で顔を出すエレクトロニクスは、煌びやかさよりも冷感に重きを置いた感じで配合。曲自体は濃厚な密度と忙しない展開にも関わらず、洗練されたお洒落さと軽やかな聴き心地を両立している。しかしながら、ヴォーカルは相反するように暑苦しくクセが強い。そのエモーショナルで切迫した叫びがあるからこそ、本作は聴き手に強く訴えかけるものがある。しかし、2022年2月に潔く解散。

Grumble Monster 2.0
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DIR EN GREY / DUM SPIRO SPERO (2011)

 結成25年目を迎えたヴィジュアル系ロックバンドの8thアルバム。あえて『Withering to death.』や『UROBOROS』ではなく『DUM SPIRO SPERO』。タイトルはラテン語で「息ある限り、希望は捨てず」という意味で、DIRの最深到達点にして最重到達点。ひたすらな重さは生きることの険しさを突き付け、凝りに凝った堅牢な構成は、DIR EN GREYが異質であることを物語る。ドゥームメタルとプログレッシヴメタルと和の異種混合戦のごとし。試練と修羅の音はひたすらに鳴り続けるが、独自の感覚と息遣いがある。光よりも痛みが未来を照らすこともある、そんなことを思わせる重量盤。

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downy / 第五作品集『無題』 (2013)

 日本のインディー/ポストロック・バンドが活動休止からのお目覚めとなった5thアルバム。9年ぶりに復活作を出すときはかなりざわついていた。しかし、彼等は空白も何のそのという作品を送り出す。オルタナ~ハードコア譲りの強度、エレクトロニカの可憐さ、幻術のようなダブ~アンビエントの揺らぎの加算。変則的なリズムが基盤を支え、多彩なギターワークが空間に塗り重なっていき、文学的な詩を操る青木ロビン氏の歌声がそっけなく拡がる。#3「曦ヲ見ヨ!」や#7「春と修羅」における妖刀で切られるような感覚は、孤高の表現者がゆえ。長い月日の向こうにあった美しい変化と調和。過去・現在・未来、全てを結びつけたdownyの新たな音の結晶。

ELLEGARDEN / ELEVEN FIRE CRACKERS (2006)

 エルレの愛称で親しまれる4人組バンドの5thアルバム。発売初週で20万枚以上を売上げ、オリコン初登場1位を記録。復活した今も人気は変わらずだが、当時は爆発的な人気があった。作品は突き抜けるような疾走感は変わらずにあるが、骨太なアンサンブルによって重厚感が増し、初期にも通ずるシリアスな風情とオルタナティヴ・ロック色が戻ってきた印象を受ける。#3「Space Sonic」や#8「Salamander」といったヒットシングルに加え、パワフルな#2「Fire Cracker」や快速メロコア#11「Marie」、#5「高架線」のような染みる曲まで心地よい。わたしは活動休止前の2007年に1度だけライヴをみることができた(the pillowsとの対バンで名曲「Funny Bunny」を演奏していた)。

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envy / 君の靴と未来 (2001)

 日本のハードコア・レジェンドの2ndアルバム。ハードコアの過去も現在も未来も繋ぎ続ける作品であり、20年以上経った今も全く色褪せず、むしろ輝きを増し続けている。どこを切り取っても感情的。そして、魂ごと震わせるハードコアの勢いと衝動がある。 #1「ゼロ」における予兆から、一気に激流に飲み込まれる#2「さよなら言葉」で撃ち落とされた人間は、世界中にどれだけいることか。2012年に開催された”leave them all behind 2012″にて『君の靴と未来』完全再現を体感できたことは、何事にも代えがたいもの。

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Explosions In The Sky / The Earth Is Not a Cold Dead Place (2003)

 1999年にテキサス州オースティンで結成されたインスト・ポストロック4人組の3rdアルバム。静から動へ移り行く、いわゆる轟音系ポストロックの先駆者のひとつ。本作は最高傑作と謳われる1枚で、前作で感じたアルバム全体を覆う重苦しさや不穏なムードが明け、音のきらめきや美しさの方にベクトルが向かっている。聴いたひとりひとりの生命を輝かせるようにそのアルペジオは鳴り、リズムは刻まれる。さらなるシンプル化/整理。それゆえのインスト・ポストロック基本型が示された。聴き手に様々な情景を浮かばせる、様々な感情を抱かせる。心の真芯を捉えようとするその音塊は、人生に彩りを与え、人生に寄り添うサウンドトラックのよう。

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Grails / Deep Politics (2011)

 1999年にアメリカ・ポートランドで結成されたエクスペリメンタル系インスト・バンドの6thアルバム。初期はNeurot Recordings、中期からはTemporary Residence Limitedと契約。これまでもオルタナティヴやポストロックといった表現以上の拡がりと深さを内包していたが、70年代のプログレやクラシック、ジャズに現代音楽、サウンドトラックまで数多くの要素が理想的な形で楽曲に寄与。妖しくダークな感性とオリエンタルな艶めきを有しながら、かくも残酷で幻想的な美しさを持ったインスト作品に仕上がっている。幻夢の中で揺れる音の交わりによる詩情たっぷりの物語。表題曲#4をぜひ聴いてほしい。ちなみに今は亡き海外音楽サイトThe Silent Balletの2011年ベストアルバム第1位。

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heaven in her arms / 黒斑の侵蝕 (2008)

 日本の激情系ポストハードコア・バンドの1stフルアルバム。2017年に発表した3rdアルバム『白暈』にバンドの成熟が表れているが、最初に聴いたときの衝撃から本作をチョイス。初期衝動と混沌、そこはかとない中ニ病感。トリプルギターを中心に紡ぐストーリー、それをさらに激しくドラマティックに仕立てるkent氏の詞と声が、ビジネス的なエモやハードコアを屈服させる。envyを思わせるポストロックの導入から、苛烈なブラックメタルとアンダーグラウンド臭まで。#1「声明」~2「痣で埋まる」、#4「鉄線とカナリア」、#9「赤い夢」など彼等のクラシックといえる楽曲を多数収録しており、原点にして強烈な作品。

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ISIS(the Band) / Wavering Radiant (2009)

 ポストメタル代表格による5thアルバムにして最終作。バンド内でも落ち着きすぎたという意見があった前作から、細かなテクスチャー/音の多層化を実現しつつも、屈強な肉体性を強化。ハードコア/スラッジメタルに源泉がある中で、ポストロックやアンビエントの重なり、プログレの配合。それを有機的な統合の果てに聴かせてくる。洗練を重ねて、練り上げ強化されていった音楽の集大成。それは、最終曲#7『Threshold of Transformation』のダイナミクスに表れる。

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Jambinai / ONDA (2019)

 韓国のエクスペリメンタル系インスト5人組の3rdアルバム。韓国伝統音楽とポストロック/ポストメタル融合推進事業+エクスペリメンタル仕立ての様相は、強化と洗練の果てに開かれた音楽性へと進化/深化。玄琴(コムンゴ)、觱篥(ピリ)、奚琴(ヘグム)といった伝統楽器が火花を散らすようにぶつかりあい、ノイズの轟きから大陸的なメロディまでもをもたらす。分類不能な個性を持つうえで、東洋のGodspeed You! Black Emeperorといえそうなスケールを打ち立てている。

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kamomekamome / ルガーシーガル(2007)

 千葉県柏市を拠点に活動するハードコア・バンドの2ndアルバム。前作がプログレシッヴな大作として60分を超える尺でしたが、本作は10曲で約38分。圧倒的ブルータリティを背に猛進するハードコア、そのストレートな音象が表立つ。キャッチーと取れるほどのメロディラインが所々で顔を出し、緩急も自在にコントロールされている。曲自体を短くしながらも多彩さと複雑さをギュッと押し込んでおり、エモーショナルな螺旋に飲み込まれていく。3,4分前後の曲に凝縮しまくっていて凄まじい。これが研ぎ澄ますということか。

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Kayo Dot / Hubardo (2013)

 Toby Driverを中心に暗黒サウンドを創り上げるバンドの6thアルバム。荘厳なオーケストラのような振る舞い、プログレッシヴな構成が核として、フリー・ジャズやチェンバー・ロック、ドローン、民族音楽などをグツグツと煮込みまくって出来上がった極悪のエクストリーム・ミュージック。刻んできた長い歳月と培われた経験値は、全てここに集約されるためにあった。そう表現できるだろう渾身の約100分にも及ぶ作品。徹底して練り上げた凄惨で悲劇的な物語は、暗黒そのもの。2016年6月には奇跡の初来日を果たした。

Killswitch Engage / ‎The End of Heartache (2004)

 メタルコア工科大学首席の3作目。わたしのメタルコア・デビュー作。メロデス譲りの豪胆なリフで荒らしながらも、サビの叙情性を最大限に活かすドラマティックな構成に心つかまれる。このスタイルは多くのバンドに模倣された。ブラストビートを用いた疾走から重厚なミドルテンポ、バンドの躍進に貢献した表題曲のバラードまで全13曲。2ndや4thアルバムも好きだが、自分としては2004年に出会いの1枚となったこれ。ヴォーカルをジェシー・リーチ、ハワード・ジョーンズの2人が務めているが、わたしはハワード派。いや、だって最初に聴いたのが彼在籍時だし、ライヴも彼の時に見ているから(2005、2008)。

黒夢 / LIVE AT 新宿LOFT (1998)

 ヴィジュアル系どころか、この当時はストリート系のカリスマ的存在だった清春氏率いる黒夢のライヴ作。あえてのライヴアルバムだが、何十年経っても自分の中でライヴアルバムはこれがトップ。ロックの醍醐味、ライヴの醍醐味が凝縮されている。聴けばその熱量といい、活動休止前のヒリついた緊張感や焦燥などが感じられるはず。復活後の2014年に4公演に参加したが(男性限定公演含む)、活動休止前のライヴを一度でも体験してみたかったと今でも思う。

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La’cryma Christi / magic theatre (2000)

 かつてのヴィジュアル系四天王の3作目。1stアルバム『Sculpture of Time』が最高傑作として名高いが、よりアーティステイックな姿勢を貫いた本作を選んだ。だっていきなり11分11秒の大曲#1「Magic Theatre」をド頭に持ってくる。そんなヴィジュアル系がいただろうか(X JAPANの『ART OF LIFE』は除かしてくれ)。”魔法の劇場”と題された本作は、前作『Lhasa』のOurサイドを更なる高みに引き上げたもので、魔法のかかった12曲が次々とスクリーンで上映されるかのよう。彼等らしいオリエンタルな情緒に溢れた楽曲や切ないラヴソング、カントリー調の軽やかな曲、ダークでシリアスな疾走曲と曲調はバラエティに富む。最終的に一本の大作映画を見た気になり、それが空前絶後のカタルシスにつながる。究極のラクリマ・ワールド。でも、もうバンドの復活はなさそう・・・。ヴォーカルの方・・・。婿養子・・・。

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Light Bearer / Lapsus (2011)

 Fall of Efrafa解散後に、中心人物であったAlex CFを核として生まれた6人組による1stアルバム。17世紀のイギリスの詩人ジョン・ミルトンによる叙事詩『失楽園』やフィリップ・プルマンの小説『ライラの冒険』からの影響を公言し、神と対立して天界を追放された堕天使ルシファーの物語を深遠な音楽で表現する。Fall Of Efrafa後期からの延長上にある音楽だが、叙情性をさらに高めて重い美しさを持つポストメタルを展開。NeurosisとSigur Rosが手を取り合い、煉獄の底から天国の彼方までを行き来する13分越えの#2「Primum Movens」は、バンドの代表曲として君臨する。

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Linkin Park / Meteora (2003)

 ミクスチャーの最高峰にして金字塔といえるLinkin Parkの2作目。わたしが高校3年生の時に初めて買った洋楽CDがこれ。#3「Somewhere I Belong」を聴いてなんだこのカッコいいのは!となって購入した記憶。全13曲36分というコンパクトなつくりの中で、ミクスチャーロックの真髄を堪能できる。#7「Faint」、#9「Breaking The Habit」、#13「Numb」といった名曲を収録。チェスター・ベニントンの声は唯一無二だと、本作を聴き直すたびに思う。

LITE / Phantasia (2008)

 日本のマスロック系インスト・バンド。まだシンセサイザーを導入してなかったころの2ndアルバム。ハードコア系の切れ味を増した鋭角的なアプローチ、研磨された美しく艶やかなメロディが溢れており、1stアルバム以上に強力。緻密なバンド・アンサンブルは変幻自在のうねりを生んでおり、予想もつかないほどのスリリングな展開にはただただ圧倒されるのみ。さながら激しく降りしきる音符の雨のよう。マスロックとしての構築の妙と肉体性を限りなく極めた一作であり、初期のLITEが辿り着いた完成形。次作から彼等はシンセサイザーを導入して変化を求めていく。

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MALICE MIZER / merveilles (1998)

 1998年にわたしはヴィジュアル系の洗礼を受けたが、MALICE MIZERは視覚的にも聴覚的にも”ヴィジュアル系”というのを刷り込んだ存在である。音楽番組に彼等が出て来た時、派手なその衣装もさることながら、曲を演奏してなかったのは特に衝撃を覚えたことだった。本作はGackt(Vo)、Kami(Dr)在籍時の奇跡的な作品。中世ヨーロッパの耽美な世界観を基調とした華美な容姿と美しいサウンドは、ポップでいて芸術点が高い。荘厳華麗という言葉は彼等のためにある言葉と思えるほどに。#7「au revoir」は発売から25年近く経とうが、名曲として色褪せることはない。ちなみに当時のわたしは「マリスミゼル 真夜中のシルブプレ」をたまに聴く程度のリスナーだが、空耳アワーの日本語版みたいなコーナーだけは強く覚えてる。

Mark McGuire / Living With Yourself (2010)

 解散したEmeraldsのギタリストであり、メジャーリーガーじゃない方のマーク・マグワイア。Editions Megoから発売されたおそらく最初のフルアルバム(本作発売前にも、LPやテープ等でかなりリリースしててよくわからない部分がある)。本隊とは違ってギターに焦点を当て、フォーク、ミニマル、ポストロック、アンビエント等を絶妙にコラージュした清らかな世界が描かれている。家族をテーマにしたパーソナルな響きが主体で、瑞々しいディレイ・ギターと子どものヴォイス・サンプリングが心地よくも暖かい空間へと誘う。そして、聴き手自身の懐かしい思い出を掘り起こさせる作品でもある。上記のマニュエル・ゲッチング好きは是非。ライヴは2012年、2013年と見ることができた。

MASCHERA / orb (2000)

 1992年~2000年までを駆け抜けたヴィジュアル系バンドの3rdアルバム(メジャー2枚目)にして最終作。製作段階で解散が決まっていた、そしてセルフプロデュースの本作は、隠れた名盤としておくのは惜しい。前作『iNTERFACE』のメジャー仕様のポップさを咀嚼した上で、原点回帰するようなダークな世界観が確立。曲調は妖しさを増して暗部へと踏み込み、歌詞もインディーズ期を思い出させるような文学性が蘇る。それでも暗闇の強さも光の強さも両立した1枚として、最後のあがきと輝きを見せている。ちなみにわたしは彼等のラジオ「マスケラのハイスピードカフェ」のリスナーだった(上記のマリスのラジオと時間が前後してた)。

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Maserati / Inventions For The New Season (2007)

 アメリカ・ジョージア州アセンズのインスト・ポストロック4人組の3rdアルバム。Canのプログレ/サイケ感覚、ホークウィンドのスペース感覚、!!!のうねるグルーヴ、マニュエル・ゲッチングの美しいミニマル要素、クラブ/テクノ経由のアシッドな電子音を懐に収めたサウンドは、ポストロックから新たな領域を開拓する。静と動のポストロック的な縦の大きな揺さぶりのみならず、Jerry Fuchs(09年に逝去)という強力なドラマーを軸とした持続的な横の揺さぶりを加味したこと。それが、恍惚と覚醒の連続をもたらす。以降の作品ではダンサブルなビートを主体とした変化を取り入れている。

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Metallica / Master of Puppets (1986)

 メタル大御所の3枚目にしてスラッシュメタルの教典。メタリカは『St.Anger』から入っているが(人生で2番目に買った洋楽アルバム)、さすがに『St.Anger』をあげることはできなかった。あのアルバムは頭2曲しか聴かないので(苦笑)。本作は名盤中の名盤であるわけだが、さかのぼって本作を最初に聴いたときは1曲の長さに慣れるまで時間がかかった。本作は最高のアンセム#1「Battery」から始まって、ラストに至るまで圧倒的。メタリカが王者たるゆえんを示す。2003年11月、わたしが高校3年生の時に名古屋レインボーホールで初めて観たメタリカは、若かりし自分に強いインパクトを与えてくれた(2010、2013年にもみている)。

Milanku / Pris à La Gorge (2013)

 作家であるミラン・クンデラの小説と思想に触発され、カナダ・モントリオールで結成されたポストハードコア・バンドの2ndアルバム。前作でたどり着いた境地を経て、突き詰めた激しさと美しさをまとい、力強く織り上げるストーリーに心を衝き動かされる力作。Explosions In The SkyやMONOのような静から動への過剰なまでにドラマティック展開に、envyのごとき感情を激しく駆り立てるハードコアの魂が宿る。2013年10月にはTokyo Jupiter RecordsやArchaique Smileによって来日ツアーが実現。わたしも大阪公演を体感している。

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Mineral / Endserenading (1998)

 90’sエモの代表格、Mineralの2ndアルバム。数多の人々にその存在を知らしめた1stでは、荒らさと初期衝動を感じさせる作風だったが、こちらの作品では静の部分に重きを置いて洗練された美しさを湛えている。それこそいち早くポストロック的なアプローチを試みたと言えるかもしれない。ゆったりとしたテンポの中、アルペジオを丁寧に丁寧に紡ぎ、感傷的な歌を心の内に響かせる。暮れなずむ夕陽を見ながら、じっくりと聴き込みたい哀愁のエモ。落ち着きと洗練の果てといった作風で、渋い味わいがある。2014年に再結成。2015年に来日公演をみた時はえらく感動した。

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Minus The Bear / Menos El Oso (2005)

 BotchやSharks Keep Movingのメンバーを擁するUSオルタナ/インディーロック・バンドの2ndアルバム。タイトルはバンド名のスペイン語表記。特徴的な感傷に浸るメロディと枯れ気味の情緒ある歌声、それが水面に広がる音の波紋のように響いてくる。鮮やかに彩を添えるギターのメロディをなぞりつつ、絡みつくような変なフレーズを交えたりと一筋縄ではいかない。アクティブな展開のある曲はあるが、全体の雰囲気は涼やかさと程よい熱を持ち合わせたオルタナ、エモといった印象。ライヴでラストを飾ることの多かった代表曲#6「”Pachuca Sunrise」収録。2008年の来日公演を観ているが、以降は来日は実現せずにそれが彼等を見た最初で最後になってしまった(2018年に解散)。

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Misery Signals / Controller (2008)

 2002年にミルウォーキーで結成されたメタルコア5人衆の3rdアルバム。デヴィン・タウンゼントのプロデュース。都市の圧迫感と虚無感が滲み出たジャケットの雰囲気を持つ本作は、重厚さの中に透明感がある。激しいだけではない、叙情性の配合バランスと奥行きと拡がりのサウンドデザインが独特。しかもその中で冷たさと浮遊感を同時に表現している感覚を持つ。ヴォーカルの低音咆哮はひたすらに強烈で野蛮なことこの上ないが、クリーンヴォイスも意図的に取り入れらている。#6「A Certain Death」は本作を代表する1曲。

MONO / You Are There (2006)

 日本を代表するインストゥルメンタル・バンドの4thアルバム。 「”死”と向き合って徹底的に”生”を浮かび上がらせる作品を作った」とメンバー自身が語る6曲約60分。全てが消えて無くなってしまいそうな儚さ、周り全部が闇に包まれたような絶望感、痛みと苦しみを持つ中で生き続けることへの逡巡。これらを抱え込みながらもその重さを希望へと昇華していくインストゥルメンタル。#3「Yearning」の凍てつく波動、はたまた#6「Moonlight」という壮大な叙情詩を抱え、生と死の螺旋をくぐりぬけるかのような奇跡的かつ壮絶な世界の体感。『You Are There』は誰にとっても特別になりうる音楽となっている。

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MORRIE / HARD CORE REVERIE (2014)

 DEAD END/Creature Creatureのヴォーカリストとして活躍して、今なお強い影響力を持つ彼。オリジナルアルバムとしては約20年ぶりとなる4thアルバム。歌ものに軸を置いている中で、AOR、プログレ、インダストリアル、フリージャズ、現代音楽等の要素が曲の中で飛び交う。本作ではそれらが凝縮して自然な形で出し入れされている印象がある。MORRIE氏の紡ぐ哲学的な詩やクセの強い歌唱を核にし、実力派の演奏陣と共に彩っていく全11曲。まさに奇異な芸術。

MUCC / 朽木の灯 (2004)

 日本のヴィジュアル系バンドの4thアルバム。”ムック”表記だったころの、そして結成から長らく続いた”負の路線”の集大成となる作品。7弦ギターと5弦ベースを主体としたヘヴィネスに心の闇を包み隠さず訴える詞が添えられ、負と暗黒は増幅し続ける。彼等が生み出す重厚な音楽は、昭和歌謡の哀愁からブラックメタルのようなおぞましい迫力までが詰め込まれ、痛みや苦しみと対峙する。#3「遺書」の孤独と絶望の中から、それでも前を向いて生きさせる#13「名も無き夢」が与える希望までの全15曲、暗闇に手を伸ばし、暗闇から手を伸ばそうともする。暗鬱な世界観だけではない深い情念が本作にある。

Neurosis / A Sun That Never Sets (2001)

 ヘヴィロックの現人神による7thアルバム。90年代にポストメタルという革命を起こして傑作を生みだしてきたが、00年代の彼等は歌に焦点を当てていく。陰鬱さを引き寄せるアコギや滋味深いクリーンヴォイスを増加して向かう精神の旅路。極みのヘヴィネスに頼らなくてもニューロシスは支配的、という印象を植え付ける。#10「Stones From the Sky」は天啓のごとき鐘の音から繰り広げられる紅黒く渦巻くサイケデリアの深淵。寄り添う歌と雄々しい絶叫は生々しいまでに聴き手の内面をえぐり続ける。

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THE NOVEMBERS / ANGELS (2019)

 日本のオルタナティヴ・バンドの7thアルバム。集大成となった前作『Hallelujah』を経て、大胆な変革。特徴的なのは電子音との魔合成。生音とはっきりと融合しながら、耽美凶暴な音像を築き上げる。今までとまるで違う感触をもたらすデジタル主体の#1「TOKYO」に始まって、光の帯をまとっていく#9「ANGELS」まで。#2「BAD DREAM」や#5「DOWN TO HEAVEN」のようなダークな衝撃も、#3「Everything」や#8「Close To Me」の美しさと幸福感も『ANGELS』は豊かに内包する。彼等の美学にブレはないし、常に創造的だ。

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OATHBREAKER / Rheia (2016)

 女性Vo.Caro Tangheを要するポストハードコア・バンドの3年ぶり3rdアルバム。作品毎にポストハードコア~~ブラッケンド~ネオクラストの拡大解釈へ。曲単位ではもちろんだが、本作は全10曲という作品全体を通しての大きな緩急・起伏で聴かせてくれる。Jack Shirleyのプロデュースによる絶妙なシューゲイズ・テイストの武装があり、アコースティック・パートも上手く組み込まれていて、構成において変化がある。それがルーツを含めた自身の音楽性に対して上手く肉付けできてるからこそ、作品としての強固さにつながっている。スクリームだけではない艶めかしい歌唱を披露し、女性の歌ものという側面を強化したことで楽曲の幅広さに説得力が伴う。#1「10.56」~#2「Second Son Of R.」や#5「Needles In Your Skin」におけるドラマティックな激走、それによる感情爆破。ハードコアはかくも劇的であったのかと。

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The Ocean (Collective) / Phanerozoic I: Palaeozoic (2018)

 ドイツのプログレッシヴメタル/ポストメタル集団の7thアルバム。2年後にリリースされた次作との連作。本作は10年ぶりに国内盤が発売されており、『顕生代~破壊と創生 第一部:古生代という邦題を添えてP-VINEからリリース。タイトルは“Phanerozoic = 顕生代”。 顕生代とは約5億4100万年前から約2億5200万年前までを表す地質時代の古生代のことで、現在の生物が陸上に進出した時代だという認識で良いという(下記の作品紹介もかなり勉強して書いた)。作品としては静と動がわりとくっきりとしたポストメタル・スタイルで3rd『Precambrian』に近い。強烈な重低音と美麗なメロディがせめぎ合う中でグロウルとクリーンヴォイスが煽動する。入門盤にもオススメできる1枚。2018年10月に奇跡の初来日、わたしも初日公演に足を運んだ。

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Pelican / The Fire in Our Throats Will Beckon the Thaw (2005)

 シカゴのヘヴィ・インストゥルメンタル四重奏の2ndアルバム。全7曲で描かれるのは生まれ育ったシカゴの四季であり、移り変わる四季においての広大な風景。自然の容赦ない怒りとかけがえのない美しさ、それを轟音と叙情のダイナミックなシフトにより力強く描き出す。虹色の自然叙情詩と表現できそうな圧倒的なスケールと描写。Pelican史上最もドラマティックな楽曲といっても過言ではない#1「Last Day Of Winter」を収録。2007年頃にわたしがインストゥルメンタルを聴くようになったきっかけの作品であり、思い入れが特に深い1枚。ライヴは3度体験(2007、2009、2019)。

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轟音耽美四重奏 ヘヴィインスト・バンド、Pelicanの歩み 2001年にシカゴで結成されたヘヴィ・インストゥルメンタル4人組、Pelican(ペリカン)。スラッジメタルとポストロックの要素をダイナミックに交差させるインスト・サウンドに定評がある。わたしにとってインストを聴き始めたきっかけのバンドで、思い入れがあります。本記事ではオリジナルアルバム6作品について紹介。

凛として時雨 / Inspiration is DEAD (2007)

 本作で知られざるという知名度からドカーンといった記憶の強い2ndアルバム。わたしもここから凛として時雨に入っている。3人の持ち味の化学反応。それによる多彩な色と初期衝動がとてもインパクトがあった。ギターは鋭利な刃物のようでキレイな水晶のように輝きも放つし、リズム隊は忙しない急展開を支える。そして、なんといっても男女のハイトーン・ツインヴォーカルが脳内に刺さる。そう、凛として時雨の音楽は刺さるという感覚がとても強い。#1「nakano kill you」から#3「DISCO FLIGHT」までの圧倒的なテンションは、未だに強烈なものをわたしの中に残している。もはやTK fromの方が有名になったし、ピ様はイヤホンの人兼大森さんの夫というイメージが強くなってしまったが(わたしは初代ピヤホンをかつて使用していた)。

Rosetta /  A Determinism Of Morality (2010)

 アメリカ・フィラデルフィアにて結成されたポストメタル・バンドの3rdアルバム。自身の音楽性を”Metal For Astronauts : 宇宙飛行士のためのメタル ”とユーモラスに表現する通りに、空間を重視したサウンドスケープが特徴的な彼等。前作よりも洗練の度合いが進み、壮麗なる美と威圧的な轟音が緻密に編みこまれる。その結果、母たる大地と宇宙をリンクさせるRosettaのスペース感覚は極みのレベルへ。印象的なベースリフから始まるラスト曲#7「A Determinism of Moralit」は、ポストメタル史に残る1曲。2016年12月、彼等がまさかの名古屋公演を行ってくれたことに感謝。

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ROTH BART BARON / けものたちの名前 (2019)

 日本のインディーフォーク・プロジェクトの4thアルバム。時間をかけて紡いできた音楽を介し、考える個の存在、関わる今の社会。そして歌われる多様性と共生。前作の方が自由な挑戦と試行錯誤があるが、その経験を踏まえた本作は回帰と拡張がいい塩梅。だからこそのバラエティに富む。女性ヴォーカリスト4名(優河、HANA、Ermhoi、Maika Loubté)のゲスト起用、ストリングスの明確な導入。前作『HEX』よりも開かれた形でアウトプットされている。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文氏が主宰する<APPLE VINEGAR – Music Award -2020>にて”大賞”を受賞した秀作。

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Russian Circles / Station (2008)

 シカゴのインスト・トリオによる2ndアルバム。最高傑作と評す人が多い名作。ゆえに彼らの名を世界に知らしめた作品だ。音楽的にはポストメタルというよりはポストロック方面へやや傾いていて、メロディを磨き上げながら1stアルバムよりも構成を練り、壮大なドラマを描いている。マスロックの構築美を反映させながらギターリフで押すスタイルは本作でも垣間見え、3人とは思えない重量感とレイヤー構築を堪能できる。インストゥルメンタルを独自の美意識で昇華させた#5「Youngblood」はポストメタル系インスト最重要曲のひとつ。

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SADS / THE ROSE GOD GAVE ME (2001)

 黒夢の活動休止後に清春氏が率いたバンドの3rdアルバム。SADSも一度目の活動休止までは、アルバムごとに音楽性がコロコロと変わっていった。本作の帯には「聴き逃がすな!HEAVY&LOUD そしてGLAMOROUS。暴力的変貌を遂げた新生サッズ、反逆のリアル・ファーストアルバム!」とあるが、モダンヘヴィネス+グラムロックといった感じの妖艶で重厚なロックを展開。ほとんどが英語詞で歌われ、重量級のグルーヴとハードな疾走感を併せ持つ本作は、海外勢にも引けを取らないものがある。ちなみに黒夢の2009年解散公演で本作から2曲演奏。そのことをネット番組『イエノミ』で西川貴教氏に「あなたは気が狂っている」とツッコまれていた。

SIAM SHADE / SIAM SHADE Ⅵ (2000)

 日本のロックバンドの6thアルバム。「1/3の純情な感情」のヒットで知られる存在だが、オリジナルアルバムを聴くと彼等の技量とセンスに驚かされる人は多いはず。本作は2枚組でハードなDISC1とポップなDISC2に分けられる。HR/HMからニューメタルやミクスチャーまでもを取り入れたDISC1は、冒頭を飾る「GET A LIFE」を始めとして彼等の特権であるテクニックと熱さを約束。ポップ・サイドとはいえ彼等なりのロックの醍醐味が詰まったDISC2。こちらも熱くエモーショナルで「Fine Weather Day」や「せつなさよりも遠くへ」、「曇りのち晴れ」といった曲が特に光る。

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SlipKnoT / SlipKnoT (1999)

 アメリカの猟奇趣味的激烈音楽集団の1stアルバム。高3に進級する前の春休み、初めて自分から聴きにいってレンタルした洋楽はスリップノット。作品は『IOWA』だった。ヴォーカルにツインギター、ベース、ドラムという編成にとどまらず、2人のパーカッションにDJ、さらにはサンプラーを擁する9人もの大所帯。そこから放たれる猛烈なサウンドは、あまりにも衝撃的だった。この1stも激しいことに変わりないが、不思議とキャッチーさがあってノリが良い。2ndほど人間はクソって感じではないし、空耳曲だってある。平均して3分台というコンパクトな楽曲設計もまた、アルバム全体のスムーズさに繋がっている。1stと2ndは金字塔。

Sonata Arctica / Ecliptica (1999)

 フィンランドのメロディック・スピードメタル・バンドの1stアルバム。わたしにとってメロスピといえばソナタ。そして、ソナタ・アークティカも冬のイメージ。2003年、高校3年生の時に数少ない友人(この時はそこまで仲良くなかったけど)が熱心に推してきて聴くようになった。当時はメロスピなんてまるで知らなかったけど、ネオクラシカル風の美旋律と圧倒的なスピード感が伴う作品を前にしてひれ伏した。美がいきりまくっている。#6「Full Moon」はいつ聴いても名曲だし、その友人がよくカラオケで歌う(笑)。ちなみにライヴは2005年と2007年の2回見ている、その友人と共に。

sukekiyo / INFINITUM (2019)

 DIR EN GREYのフロントマンである京さんを母体とした5人組バンドの3rdアルバム。タイトルは、ラテン語で“無限”を意味。相変わらず多種多彩な表現でもって構成されているが、少し疎遠になっていた1stと1stミニアルバム辺りのメロディ/耽美性に回帰しつつ前進。今回はわかりやすくヘヴィとメロディアスな曲がくっきりと分かれている。呪術的な雰囲気づくりや重さを伴った曲、昭和末期~平成初期を思わせるJ-POP歌謡、深い愛着と欲望に憑りつかれた恋煩いの果てのバラードまで。その変幻自在さの中で心をわしづかみにするメロディがある。#12「憂染」はわたしの2019年ベスト曲第1位。

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Svalbard / When I Die Will I Get Better (2020)

 UKブリストルの4人組ポストハードコア・バンドの3rdアルバム。上記したOathbreakerと共に歩んでいくようなクラスト経由のポストハードコアという印象が、本作においてはポストロック/シューゲイズ要素の強化を突破口にして、さらに進化。幻惑のレイヤーとクリーンなコーラスが彩ったかと思うと、持ち味の馬力と瞬発力を思う存分に活かして突っ走り、また減速しては甘く魅惑する。過剰なドラマティシズムは全曲に渡ってフル稼働している。「When I Die, Will I Get Better? = 死んだら、私は楽になりますか?」と自身と社会に問いかけながら、世と刺し違える覚悟を持って彼女たちは叫ぶ。After Hours 19におけるパフォーマンスは、ひたすらに熱かった。

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toe / the book about my idle plot on a vague anxiety (2005)

 日本の人気インスト・バンドが残した金字塔ともいえる1stアルバム。雄大な世界観を感じさせる彼等のサウンドは、ストイックな4人のアンサンブルが主体だが、それでも自然という壮大なバックオーケストラと共に奏でる音のようにも感じさせる。辺見庸氏の著作タイトルを拝借した#1「反逆する風景」から始まって、#11「everything means nothing」まで一冊の本のような深みが本作にはあるし、2020年代に入っても全く色褪せない輝きを放っている。エモーショナルでいてダイナミックなインストの決定盤。

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world’s end girlfriend / LAST WALTZ (2016)

 6thフルアルバム。テーマは自身の名でもある「world’s end girlfriend」で、これまでで最もパーソナルな哲学と領域に深く踏み込んだ作品。全10曲約70分の本作からは、甘いファンタジーよりも重いリアルを描いた印象が強い。人間の悲喜こもごもよりも、ロマンチックな希望よりも、現実にある生と死が身近に感じられる。自身でwegの音楽には特定のメッセージはないと言うが、万物の美しさや生命力を容赦のない表現で持って肯定する。そんな大河のように雄大な音の芸術。彼のカタログの中で最も精神的に響く作品。

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