【作品紹介】Juneau、ベルギーの重量級インスト・トリオ

 2019年に結成されたポストメタル系インスト・トリオ。ベルギーのハイスト・オプ・デン・ベルグを拠点に活動する。ツインギター+ドラムという編成で、重量感とメロディアスな質感を併せ持つサウンドを展開。2020年に3曲入りEP『20/20』、2021年12月に1stアルバム『Cloak』をリリース。その後も地道にライヴ活動を重ねる。

 2025年10月に2ndアルバム『Scraps of the Final Lights』をリリース。同年12月に初来日となる3公演を予定。

 本記事はこれまでに発表されているフルアルバム2作品について書いています。

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作品紹介

Cloak(2021)

 1stアルバム。全6曲約34分収録。ツインギター+ドラム編成のインストゥルメンタル・トリオで、前年の1st EP『20/20』に引き続いて初のフルアルバムです。

 陰性のPelican的な側面を持つ#1「Tempest Looms」で幕を開ける本作。音楽性でいえば、ポストメタルというタグ付けがやはり最も近い印象です。ヘヴィなリフを中心とした空間の塗りつぶし、クリーンな音色による空間の彩り。その押し引きのバランスを巧みに取っており、スラッジとポストロック間を縫い合わせるようにメロディの補給がたびたび行われます。

 #2「Endure」は緊迫した雰囲気の中を畳みかけるドラムの推進力、終盤の高音域のギターが耳にこびりつく。楽曲は基本的にミドルテンポを中心に進行。重苦しくもどこか微光が差しこむような雰囲気を作り上げていくので、このジャンル特有のマナーは踏襲されています。また#4「Obedience」にのみスピーチサンプルが使用されていますが、それ以外は完全インスト。ゲスト参加などで他の楽器も取り入れておらず、トリオ演奏のみで反復よりも流動的な展開が多い楽曲を支えています。

 重量級サウンドの合間に黄昏の瞬間が幾度か訪れる#5「Milgram」、Lentoを思い出すヘヴィな瞬間の創出もあれど柔らかなメロディの演出や最後にアンビエントに終息していく#6「An Empire Built On Dust」といった曲を後半に揃え、バンドの肝となる部分がより発揮されています。ベルギーはAmenraPothamusといった儀式感の強いバンドを輩出していますが(ポストハードコアだとThe Black Hearts Rebellion辺りも)、Juneauはその中でも硬派であり、それが魅力。

Scraps of the Final Lights(2025)

 2ndアルバム。全5曲約37分収録。基本編成は前作から変更なし。国内盤CDがTokyo Jupiter Recordsから発売。海外はOverhead, The Albatross等を手掛けるA Cherry Wave RecordsとDe Mist Recordsが共同リリース。

 ”ある人にとっては壊れやすさや喪失を象徴するかもしれません。またある人にとっては回復力や個人的な意味を表すかもしれない。この開放性は私たちにとって不可欠。アルバムが私たちの物語を語るだけでなく、リスナー自身の経験を見出す余地も残しています。音楽的にはこの緊張感が強烈でダークな質感と、儚いクリアな瞬間を融合させる原動力となっている“と作品について述べている(参照:Doomed Nation記事)。

 アルバムより2カ月前に先行公開されたシングル#4「Heave」の時点でインパクトは十分過ぎましたが、アルバムを通しても前作と比較してバンドの基準を一段も二段も引き上げたと実感する内容です。Russian CirclesOmega Maasifの掛け合わせかと思える轟・美のセクション移動を踏まえ、重低音が破壊力を増し、メロディは研磨。MV公開曲#2「Observer」はそういった要素を練り上げて構成しており、終盤のブラストビートや騒々しいギターは限界突破的な興奮をもたらそうとする。

 ダイナミックな動力で牽引するドラムを下地に、ツインギターが剛・柔を適切に配置。ひらがなと改行を上手く利用し、漢字を敷き詰めた文章のような圧迫感は避けている感じといいますか。ポストロック的な性質を付与するトレモロから始まり、光に仕えるアルペジオや残響が心地よい#3「Portals」は柔の要素を強調。対しての#4「Heave」はOmega Massifやryrを思わせるヘヴィな側面に傾いており、重い雨が一旦止んだ後の叙情的なリフレイン、そこから4分40秒辺りからのラストスパートには痺れます。

 ラストに待ち構えるのは10分に迫る表題曲#5「Scraps of the Final Lights」。シューゲイズ風味のギターを皮切りに遅速と静動を緊迫する展開でつなぎ、”最後の光の断片”をインストゥルメンタルで模索する。前作からブレることなく自身の音楽性を進化させた作品であり、巨石建造物のごとき迫力と厳格な美が備わっています。

メインアーティスト:Juneau
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MUSIC VIDEO

Juneau – ‘Observer’

来日公演情報

詳しくはこちらをご覧ください。私も参加予定。

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