Mark McGuire、絶妙なギターワークが成すパーソナルな物語

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 オハイオ州クリーブランドの電子音響バンドEmeraldsの元ギタリストによるソロ・ワーク。マニュエル・ゲッチングの美しきミニマリズムの継承と具象化、スティーヴ・ライヒの精神を宿した作品群は実に美しい響きを持って聴き手に迫る。インディー・ロックとエレクトロニック・ミュージックの架け橋のような独自のポジションを確立するともいわれる存在。

 本記事は5作品について書いています。

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目次

Living With Yourself(2010)

 既にアナログ、カセット等で大量リリースを続けていますが、正式なフルアルバムとしては初作。家族をテーマにしたパーソナルな響きとマニュエル・ゲッチングを思わせるギターサウンド、ミニマリズムを体現した見事な作品です。

 音響、フォーク、ミニマル、ポストロック、アンビエント等を絶妙にコラージュした清らかな叙情世界が築かれている。さらにヴォイス・サンプリングやフォーク・ギターが日常的感覚に彩りを添え、身近なものへと変貌させてます。アコギの穏やかな旋律とサンプリングされた子どもの声が懐かしさをこみ上げる#1から充実の先手。ミニマリズムとメロディアスなギターの応酬で瑞々しい響きをもたらします。

 特に素晴らしいと感じたのは#3「Cliuds Rolling In」から#4「Brain Storm」にかけて。#3ではマニュエル・ゲッチングの名曲「Echo Waves」が思わず頭の中を駆け巡るサウンドに先導され、#4で透明感のあるフレーズがループしながら煌めいたパノラマを広げていく。

 #8では親子の会話のサンプリングが懐かしい世界へ引き戻したかと思うと、中盤からはポストロッキンな轟音が炸裂する仕様で驚かせてくれる。こういったダイナミックなアプローチと振り幅を自在にみせてくれる辺りも巧い。人肌の温もりを持って明快に人々の記憶に語りかける本作は、ぜひとも自身の耳で確かめてみてほしい。

核となっているのはディレイ・ギターと穏やかなメランコリーと神聖なるリフレインに音響処理。それらがマーク・マッガイアの心に抱えたセンチメンタルな物語を織り上げていく。#8では親子の会話のサンプリングが懐かしい世界へ引き戻したかと思うと、中盤からはポストロッキンな轟音が炸裂する仕様で驚かせてくれる。こういったダイナミックなアプローチと振り幅を自在にみせてくれる辺りも巧く、ユーモアと破壊力も備えている印象を残す。全8曲の流れは実に素晴らしい。そのギターの音色は深く瑞々しい響きと煌いた叙情を有しており、深い余韻がいつまでも心で響き続ける。

Young Person’s Guide to Mark McGuire(2011)

  2枚組編集盤。これまで4年間でリリースしてきた限定部数のカセットやCD-Rから、本人とEditions Megoのレーベル・オーナーPeter Rehberg(PITA)が厳選した2枚組20曲約145分。アートワークはSUNN O)))のオマリー先生が担当。

 前年の作品同様にマニュエル・ゲッチング~アシュ・ラ・テンペル~スティーヴ・ライヒなどの影響を強く伺わせます。まるで清らかな小川の流れのようであり、空から瑞々しい光が拡散していくかのような感じの楽曲が並べられており、その音楽スタイルを昔から追及し続けて個を確立。

 ファズ、ドローン、ディレイ~リヴァーヴのかかった音色をひとつひとつ吟味しながら重ね合わせていき、空間的なふくらみや独特の浮遊感を得る。また本作では発掘音源からも収録されており、懐の深さも示す。

 サイケデリック/ドローン、ミニマルにアンビエントといった彼を語る上で確実にでるキーワードのみならず、アメリカーナやカントリー風味の曲調もあったり、アコースティック・ギターでノスタルジックな曲で涙腺を緩ませたりと多彩なアプローチとヴァラエティに富んだ楽曲群で応えている。

 ギター・ミュージックの無制限への追及の上で、実験精神を重んじながら自分の個性をいかに習熟・確立・覚醒してきたか、本作ではそれを確実に感じ取ることができます。

Trouble Books & Mark McGuire(2011)

  オハイオ出身の3人組フォークトロニカ・バンド、Trouble Booksとのコラボレーション作品。本作の土台となっているのはMarkのギターの方で、お得意のディレイ・ギターの反復による昂揚で聴き手を夢見心地に誘う。

 その上にTroble Booksが滋味深いフォークの味わいや哀感を持った優しい女性ヴォーカル、それに粒立ちの綺麗なシンセをもたらしていき、心の琴線に触れる。職人肌の2つの個が十分にお互いを引きたてながら、心地よいハーモニーを奏でます。

 特に#4は美しきミニマリズムと女性ヴォーカルが儚げに揺れ動きながら聴き手の胸を打つ佳曲。また、#2や#3、#5辺りもノスタルジックな聴き心地と淡い色彩感、それにふわふわとした浮遊感が同居した楽曲で、しんみりと染みてきます。どこか素朴さや懐かしさを残し、いい意味でのゆるい脱力感と涼やかな聴感があるのもポイント。

 実験的な面もありますし、立体的な音像からは凝っているという印象も受けます。ですが、聴いているとのどかで懐かしい時間がゆったりと流れているような感覚に陥る。ポップというニュアンスも繊細な筆のタッチで描き出している所にも天晴れな見事なコラボーレション。

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Get Lost(2011)

  企画盤やコラボ作を除くと『Living With Yourself』以来となるオリジナル・アルバムとしては。ここにきて新しい方向性を見出そうというのが意図的に見える作品です。ついに導入されたヴォーカル曲(#3,#5)や草原から届いてくるようなコーラスが乗り(#2)、軽やかで光沢のあるシンセが絶妙に絡み合って心地よく聴き手を包み込んでくる。

 ギター・ミュージックを重んじながら、その海を越えていこうとする独自性の開拓を忘れていない。もちろん、マニュエル・ゲッチングからの影響が顕著なギターが軸で、それがミニマリズムの中でセンチメンタルな情緒や優しい浮遊感をまといながら昇華されていくのは流石。

 それが、唄ものを導入したことで艶やかな色彩の獲得とより感情的な響きを聴かせるようになっています。特に#1「Get Lost」におけるトリップ感を醸し出すサイケデリックなギターと柔らかなシンセの絡みは、これまでに無かった昂揚感をもたらしてくれています。

 滋味深いフォーキーな音色と共にセンチメンタルな歌声が溶け合って琴線をつつく#3「Alma」もまた惹かれてしまう曲。19分にも及ぶラストの#6「Firefly Constellations」はギターとシンセに独創的なレイヤーと共にチルアウトしていく佳曲。自身のパーソナルな面をギターに託した『Living With Yourself』からさらに踏み込んだ作品を創り上げています。

Along The Way(2013)

  Emeraldsの解散後に行われた5月の来日公演ツアーで先行発売もされた約1年半ぶりとなるフルアルバム。その来日公演では、本作からの楽曲を多く披露していたが、これまでの作風と比べても少し様相が違います。自身のパーソナルな詩情が一応の1stアルバム『Living With Yourself』よりも大きく反映されていて、4つのパートで壮大な旅の物語を展開。

 さらにピアノ、シンセサイザー、パーカッション、マンドリン等の多彩な楽器を用いることで、移り行く季節・ノスタルジックな景色を情感豊かに表現しています。楽器のひとつのようであったり、単純に歌という武器にまで昇華されているマークの歌声も新鮮な感触を与えていて、自身の言葉を通しての訴求力も高められました。

 エレガントな電子音とギターの艶やかな連携に彼の茫洋とした声が重なる#3、独自のミニマリズムから弾きまくりのギター・ソロが非常に印象的な#7、ひたすらドリーミーなエレクトロニカを展開する#9と楽曲も粒揃い。多彩なギター・ワークを新しい方法論と結びつけながら自身の音楽性を拡張させていく術が、ここに表現されている。

 Emeraldsの解散もどこ吹く風。Mark McGuireはさらに音楽探究を続けていく。

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