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聴く涅槃。OM

 伝説のドゥーム/ストーナーロック・バンド、Sleepのリズムセクションを務めるベーシストのAl Cisneros、ドラマーのChris Hakiusによって2003年に結成されたドゥーム・バンド。バンド名は、宇宙の自然な振動を指すヒンドゥー教の”オーム”の概念に由来しているそうな。音楽的には、世界中に溢れる音楽、哲学、宗教をドゥームロックのもとで統合していくような形で、ベースとドラムが主体でありながらも、様々な楽器が絡み合い不思議な陶酔感を誘います。

 2005年にリリースした1stアルバムから2007年リリースの3rdアルバムまでは、先述した体制が続く。2008年1月にChris Hakiusが脱退し、後任としてGrailsのドラマーであるEmil Amosが加入。同年6月に行われた奇跡の来日ツアーはこの2人体制で行われました(私も今池のHUCK FINNにて目撃)。

 その後は2012年までに2枚のアルバムをリリース。以降はフルアルバムを発表しておりません。ただ、いつの間にか2018年にTyler Trotterというギタリストが加入しており、トリオ体制に移行しています。本記事では5枚のアルバムについて追っていきます。

目次

Variations on a Theme(2005)

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  2005年リリースの第1作。ベースとドラムという必要最小限の2人編成であるのだが、そのサウンドはSleepのときよりもさらに奇怪なものとなっています。深き闇を彷徨うドゥームサウンドは、Sleep通過後の涅槃の境地といえるもので新たな一時代を築くヘヴィネス。

 呪文を唱えるように囁く声が恐怖を駆り立て、地面を這うように蠢くサウンドが延々と脳を侵し続ける。とはいうものの、耳を劈くようなものではありません。ギターが存在しないものの音は重厚で、少し丸みをも感じさせる音です。差別化というには十分で、本作の時点で明確にOMらしさというのが発揮されています。

 全3曲45分(#1が約21分、#2,#3が約12分)は永遠に終わりを告げてくれないかのようなドゥーム。決してわかりやすい音楽ではないです。全くテンションが変わらないところもたちが悪く、本当に淡々と儀式を行っているだけのように聴こえまう。終わりなき深淵へ向かう旅。

Conference of the Birds(2006)

   1年という短いスパンで届けられた第2作。前作からあまり変わりはない路線で、職人とも仙人ともいえるようなベースとドラムによって進行する儀式系ドゥーム・サウンド。

 15分55秒の#1「At Giza」を聴いていると奇怪な呪文と不可解なリズムでどんどんと暗闇に押し潰されていくような感覚を覚えます。17分30秒の「Flight of the Eagle」はシンプルな進行ですが不思議と酩酊してしまい、恍惚へと導かれていく。その密度の濃い豊かなサウンドは強烈な圧迫感があり、スピリチュアルな音の響きは精神に深く作用し、確かな戦慄を覚える。

 やっぱり本作も聴いているといつのまにか、”ここではないどこか遥か彼方へ”と飛ばされてしまい、迫り来る影に怯えてしまう。”Omとは一体何者なのか?”。生命の賛歌とはが詰まった作品。

Pilgrimage(2007)

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   プロデュースをスティーヴ・アルビニが務めた第3作。ベースとドラムが奏でる奇怪なリズムとサウンド、背筋が凍える囁きヴォーカル、まるで妖しい暗黒の儀式が繰り広げられているかのようです。深く仄暗い洞窟の中を灯りなしで進んでいくような気分。

 しかしながら、じわじわと酩酊を帯びるベースリフが味わい深く、この手のサウンドが好きな方にはたまらない内容だと思う。スピリチュアルや神秘的という表現もされていたが、確かにその手の宗教めいた感じも受けたし、1曲目なんか聴くとどことなくTOOLっぽいサウンドのようにも感じます。

 べースとドラムだけというシンプルな構成ながらも現実離れした世界観。4曲で約30分とランニングタイムは短め。それに約8分30秒のライブ音源がボーナストラックとして収録。ドゥームといっても柔らかめの印象があり、東洋や西洋の思想と哲学をも反映した音楽にも感じ、その独特性癖になります。

God Is Good(2009)

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  去年からライブのドラムサポートを務めるエミル・エイモス(Grails)を迎えて、新体制では初めてとなる2年ぶりの4thフルアルバム。プロデューサーは前作に引き続いてスティーヴ・アルビニが担当。

 前作でも意識の底から解放されるようなスピリチュアル・ドゥームに堕ちたものだが、本作でもさらなる深化を追求している。Grailsから授かっただろうオリエンタルな彩度が深みをもたらしており、曲から漂う神秘的な薫りも濃厚。その影響からか無に還っていくような感覚が一層強くなっています。

 宗教めいた色も彼等のサウンドからは感じるのだけど、亜細亜圏に近づいた印象があって、仏陀とかそういったような言葉が今作では浮かぶ。酩酊を促す極太で物憂げなベースリフ、屈強ながらも柔らかいニュアンスが滲み出ているドラム、意識を解放へと導く呪文を果てしなく唱え続けるヴォーカル、その3種の神器からなる深淵たる世界観はやはり凄い。

 並大抵のバンドが100年経っても到達しないような領域の音を鳴らし、底の見えない深みも異次元クラス。もはやドゥーム云々のくだりでは解決できない、祈りと覚醒の音楽。心身が麻痺するようなベースリフと読経風ヴォーカルがひたすら悟りの境地を開き続ける19分にも及ぶ#1、意識に染み込む重低音とフルートの音色が新鮮な覚醒をもたらす#2、ハンドクラップも導入した独特の#3と古めかしい色合いがより強まる#4の組曲の全4曲、間違いなく必聴です。

Advaitic Songs(2012)

この世ならざるところへ。前作のデュオ編成はそのままに、前作からさらなる秘境へと歩みを進めていくOmの3年ぶりの5thアルバム。本作のタイトルは、山崎氏執筆のライナー・ノーツによると8世紀インドの賢者アディ・シャンカラが提唱した思想に基づくものだそうだが、もはやロックとかドゥームという範疇では括れない涅槃音楽にゆるやかに侵食されていく。

 初期から脈々と受け継がれるヘヴィ・サウンドに軸足はあるが、Grailsや近年のEarthのようにオリエンタルな嗜好、宗教的でスピリチュアルな要素をさらに深く追求。読経のような歌、ベース、ドラムの反復による酩酊/半覚醒状態への誘いは言わずもがな。音色のひとつひとつが含蓄する妖しさや深み、それを一層の円熟味を増した演奏で精神に揺さぶりをかけていく。加えて、ヴァイオリンやチェロにフルート、タンブーラまでもが共鳴し、独創的な景観を彩っています。

 ヘヴィなサウンドが地を揺らす初期ファンが喜びそうな#2も用意しているが、後半でストリングスの響きを加味してくる辺りに今のOmとしてのアップデートが成されているように感じます。なかでも10分を超える後半3曲(#3~#5)の流れは本作の肝。多種の楽器が奏でる音色によって立ち込めるオリエンタリズム、不穏で妖しげな空気が深く深く精神へと作用する。特に#4「Sinai」はジワジワと新しい思想を切り拓かせていくような”悟りの音楽”とでも表現したくなるほどだ

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