【作品紹介】RÝR『Dislodged』

 ドイツ・ベルリンを拠点に活動するインストゥルメンタル・ポストメタル3人組。2018年にギタリストのMarius Jungを中心に結成されました。バンド名のRÝRはアイスランド語で”不毛、まばらな”といった意味合いを持つ。これまでにフルアルバム3作品をリリース。

 本記事は2025年4月にリリースされた3rdアルバム『Dislodged』について書いています。

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作品紹介

Dislodged(2025)

 3rdアルバム。全5曲約40分収録。Suffocate For Fuck Sakeのメンバーがオーナーを務めるMoment Of Collapse Recordsと新たに契約してのリリース。本作で初聴きですが、RÝRはインストゥルメンタルのスラッジ/ポストメタルを主軸にするバンドです。

 MUSIC VIDEOが公開されている冒頭の#1「flung」からスタイルは明白で、ヘヴィなリフによる蹂躙とアンビエンスの緩和を組み合わせます。1曲平均8分を数える尺の中でドラマティックなクレッシェンド構造には依存しないですが、その音像から受ける印象は限りなく重厚で漆黒。ギター、ベース、ドラムのシンプルなキットのみを用いて出力を最大化しています。

 For Fan of Russian Circles? Cult of Luna? そういった側面も当然ありますが、近いのは既に解散している同郷のOmega Massif。そしてイタリアの重音リーサルウェポンのLentoでしょう。Denovali Recordsが00年代終盤~10年代早期にリリースしていたポストメタルのアーティスト群を彷彿とさせる(この説明で伝わる猛者はいるのか)。最近でいうとCodespeakerがインスト化したらRÝRと最も近い存在になると思います。

 RÝRはその中でメリハリのある展開、虚と実の質量コントロールに巧さがある。Lentoを思い出させる重量感とアンビエンスの混交である#2「winded」、クリーントーンとトレモロを中心とした静のパートからねじふせる系リフの制圧にあう#3「dislodged」といった曲が作品に並びますが、とりわけ9分を超す#4「lapsed」に彼らの特徴が最も表れています。

 展開のバリエーションや音色の多彩さといったものを削ぎ落し、三位一体のシンプルさを研ぎ覚ませる。そういった点ではSUMACやRussian Circlesと通ずるものがあります。ヘヴィなインストゥルメンタルの中にアーティスティックな品があるのも本作に惹かれる要因。

メインアーティスト:rýr
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MUSIC VIDEO

rýr – flung (Official Video)
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