人間味、人間らしい感情の揺れ動き、 人との交流や絆、人生を主題として描いたドラマを意味する“ヒューマンドラマ”というカテゴリ。わたしが普段から一番観ているジャンルの映画です。
よく聞くけれど、どんな作品があるかわからないと思っている人が多いかもしれません。
そこで今回は名作といわれる作品から知られてないけれども強いメッセージが込められた作品、痛みを覚えるような作品まで。各項目ごとに厳選してオススメ映画を選びました。
以前に同内容で作ったことがあるのですが、2023年版としてリライト。これまでとは違った作品が観たい方はぜひ記事をご覧いただけたらと思います。
鑑賞することであなたの充実につながれば幸いです。
・amazonプライムビデオで鑑賞できる日本のヒューマンドラマが知れる
・泣けるではなく、深く考えさせられたりメッセージ性の強い作品が多め
・2017~2022年の新しい作品が多め
※ amazonプライムビデオの見放題対象商品は、時間が経つと入れ替わります。
本記事は2023年8月15日時点のものです。
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家族もの
万引き家族(2018)
生計を立てるため、家族ぐるみで軽犯罪を重ねていくうちに、一層強く結ばれる一家。だがそれは、許されない絆だった。人と人との関係が希薄な今の時代に、『誰も知らない』『そして父になる』など様々な家族の形を真摯に見つめ続けてきた是枝監督だからこそ描ける、真の“つながり”とは何か、を問う衝撃の感動作が誕生した。
第71回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。日本でも大ヒットした是枝裕和監督の代表作。
日本のリアルな貧困と家族像を追及した作品で、実力の俳優たちが深みをもたらしています。
登場人物のひとりにあることが起こってからは急展開で、血のつながりだけが家族なのかを問う。
みなが話すようにラストの安藤サクラさんの演技は圧巻です。
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マイ・スモール・ランド(2022)
幼い頃から日本で育った17歳のクルド人・サーリャ。ある日、家族の難民申請が不認定となり、これまでの日常が一変する。埼玉に住むサーリャは、進学のため父に黙って始めたバイト先で出会った、東京の高校に通う聡太と自由に会うこともできなくなる……。
第72回ベルリン国際映画祭アムネスティ国際映画賞・特別表彰を授与された人間ドラマ。
役中の少年と同じように”クルドってどこ?”という状態で鑑賞しましたが、本作はクルド人一家の高校生長女を視点にして難民問題を中心に描かれています。
家族を実際に演じているのは主演・嵐莉奈さんの本当の家族です。
外国人差別、難民認定率の低さ、ヤングケアラー、パパ活などの諸問題を提起しながらも、あくまで高校生少女の成長物語として真摯さを貫いた傑作。ROTH BART BARONの劇半も素晴らしい。
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朝が来る(2020)
実の子を持てなかった夫婦と、実の子を育てることができなかった14歳の少女を繋ぐ「特別養子縁組」によって、新たに芽生える家族の美しい絆と胸を揺さぶる葛藤を描く。血のつながりか、魂のつながりか──現代の日本社会が抱える問題を深く掘り下げ、家族とは何かに迫り、それでも最後に希望の光を届ける感動のヒューマンドラマ。
辻村深月さんの小説『朝が来る』を映画化。ドキュメンタリーのようなタッチで描かれていく本作は、産みの親と育ての親、特別養子縁組、不妊治療、望まない妊娠など重いテーマを内包します。
加えて、河瀨監督の大自然マジック(光・海・緑・風等)による輝きと心情への寄り添い。幸福を得る夫婦と喪失感に苛まれて堕ちていく少女。そのコントラストはあまりに鮮明で残酷です。
それでも繋がる2人の母親、子の向けるまなざし、光と救済。本当に引き込まれる作品です。
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洗骨(2018)
沖縄の離島、粟国島・粟国村に住む新城家。長男の新城剛は、母・恵美子の“洗骨”のために、4年ぶりに故郷・粟国島に戻ってきた。剛の父・信綱は、ひとり実家で暮らすも、生活は荒れていた。家族が一つになるはずの“洗骨”の儀式まであと数日。果たして、彼らは家族の絆を取り戻せるのだろうか…。
ガレッジセールのゴリさんが本名の照屋年之として監督・脚本を務め、奥田瑛二さんが主演した感動のヒューマンドラマ。
沖縄の一部の風習である”洗骨”。洗骨とは死者を風葬し、家族等の縁深き者たちによって4年後に骨を洗い弔う儀式です。
そう聞くと重くてシリアスな内容になるかと思いきや、芸人だからのさじ加減で笑いを交えながらいい緊張感をもって観られるように構成。
洗骨という儀式について、家族のつながりについて、沖縄の風土についてがしっかりと入ってくる内容になっています。
なかでも島の外の人間で風習について何も知らず、笑いを通した緩和の役どころだった鈴木Q太郎さんが良かった。
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星の子(2020)
大好きなお父さんとお母さんから愛情たっぷりに育てられたちひろだが、その両親は、病弱だった幼少期のちひろを治した“あやしい宗教”を深く信じていた。中学3年になったちひろは、一目惚れした新任のイケメン先生に、夜の公園で奇妙な儀式をする両親を見られてしまう。そして、彼女の心を大きく揺さぶる事件が起きる――
いつも病気がちの娘が良くなった!これは神様がもたらした奇跡の水や! とある団体が売り出している水『金星のめぐみ』の効能を信じ切ってしまった両親が宗教にのめり込んでいく。
それを中3の娘視点で描いたのが本作。ああいった大事件が起こってしまったことで、注目を集めるようになった宗教2世を取り扱っています。
今村夏子さんの原作も読んでいますが、映画は映像で表現されるのでさらにリアル。
引っ越すたびに家庭は貧しくなり、両親が公園で行っている水をかけあう儀式はおかしさいっぱい。それでも下がり続ける生活水準の中で、奇跡をもたらす水”金星のめぐみ”だけは変わらずに林家のスペシャルワンであり続ける。
外野からは異常だと言われても、家族のきずなは強い。今、観ておきたい作品です。
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ミステリー/サスペンス
罪の声(2020)
35年前、日本中を巻き込み震撼させた驚愕の大事件。大日新聞記者の阿久津英士は、既に時効となっているこの未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、取材を重ねる毎日を過ごしていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は、家族3人で幸せに暮らしていたが、ある日、父の遺品の中に古いカセットテープを見つける。翻弄される運命。救うべきもの。本当の“罪”とは―いま明かされる、日本中を震撼させた未解決事件の真相!
『報道記者の仕事は”素因数分解”だと訴え、なぜを割り切れない素数までもっていく、そこに真実は存在する。』
2016年の「週刊文春」ミステリーベスト10で第1位を獲得するなど高い評価を得た塩田武士氏のベストセラー小説を映画化。昭和59年に発生したグリコ森永事件が題材。
映像では上記の劇中セリフにあるように、事件の全容を事細かく素数にまで因数分解して真実に迫る。
小栗さんと星野源さんの共演もさることながら、宇野祥平さんが見どころ。骨太で芯の通ったミステリーとして見応えバッチリ。
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騙し絵の牙(2021)
「罪の声」などで知られる作家の塩田武士が大泉洋をイメージして主人公を「あてがき」した小説を、大泉の主演で映画化。出版業界を舞台に、廃刊の危機に立たされた雑誌編集長が、裏切りや陰謀が渦巻く中、起死回生のために大胆な奇策に打って出る姿を描く。
塩田武士さん原作小説を続けて紹介。こちらは『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督が手がけています。
廃刊危機にある雑誌編集長(大泉洋)が生き残りのために仕かけまくる2時間。登場人物が次々と登場し、あれよあれよとスピーディに展開していくのでのめりこむように観てしまいます。
原作では大泉洋さんをあてがきしたとのことですが、映画版はそこまででもないかもしれません。むしろうさんくさいけどやり手感が凄い。
ラストはこう来たかっていうもので、出版業界も生き残るためにあの手この手を尽くしていかなきゃならんのだなと。
わたしが長年好きなインスト・バンド、LITEが劇半を務めていることもうれしい。スリリングな展開に彼等のサウンドがぴったりでした。
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さがす(2022)
大阪の下町に暮らす父と娘。父の原田智は中学生の娘、楓に指名手配中の連続殺人犯を見たことを告白する。冗談だと思う楓をよそに、翌朝に父は姿を消してしまう。孤独と不安を抱えながら父を捜そうとする楓だったが、警察でも相手にもされない。ある日、日雇い現場に父の名を見つけ、楓は「お父ちゃん!」と呼びかけるが、振り向いたのは知らない若い男だった。失意のなか、楓は指名手配チラシに日雇い現場で見た男の顔を見つける。
誰もが重い一撃を喰らうだろう『岬の兄弟』を撮った片山慎三監督作。佐藤二朗さんを主演に迎えたヒューマンサスペンスです。
連続殺人犯を追って姿をくらました父(佐藤二朗)、探しにいく娘(伊東蒼)。そこに絡んでくる殺人犯。二転三転するストーリーはスリリングでグロい描写も多いです。
大阪を舞台にしたことでのコメディタッチが少し柔らかさを出してますけど、佐藤二朗さんが狂人と化し、清水尋也さんのサイコパスぶりに唖然。
それでも物語の核心に迫っていくと人間の怖さとエグさが増します。下の『空白』にも出演している伊東蒼さんの迫真の演技に目を奪われ、ラストはとにかく家族愛が感じられて切ない余韻を残す作品です。
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空白(2021)
スーパーで万引きしようとして店長に見つかり、追いかけられた女子中学生が、逃走中に車に轢かれて死んでしまう。娘のことなど無関心だった少女の父親は、せめて彼女の無実を証明しようと、店長を激しく追及するうちに、その姿も言動も恐るべきモンスターと化し、関係する人々全員を追い詰めていく。やがて父親は関わったすべての人々をのみこみ、関わった人々の表と裏、愛と憎しみ、信念と真実が絡み合いながら露になる。
吉田恵輔監督によるヒューマンサスペンス。
一番ショッキングな交通事故シーンは生々しいのに、作品の肝となる万引きは行われたのか、起きてなかったのかわからない曖昧さ。誰が悪いのかを観客にはっきりとジャッジさせずに物語は進みます。
そんな本作は、現代社会は誰もが被害者と加害者になる可能性があることを伝える映画です。
人間を卒業したぐらいに怒りまくってるモスンター父こと古田新太さんの役は強烈ですが、寺島しのぶさんが演じたおせっかいおばさんも怖すぎる。
見ていると人間が信じられなくなる(苦笑)。さすがの吉田恵輔監督作。
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神は見返りを求める(2022)
イベント会社に勤める田母神とユーチューバーのゆりちゃんは合コンで出会う。再生回数に頭を悩ませるゆりちゃんを不憫に思った田母神は、見返りを求めずに彼女のYouTubeチャンネルを手伝うようになる。人気は出ないが、前向きに一緒にがんばっていく中で、2人は良きパートナーへ。しかし、あることをきっかけに田母神が見返りを求める男に豹変。さらにはゆりちゃんまでもが容姿や振る舞いが別人のようになり、恩を仇で返す女に豹変する。
こちらも吉田恵輔監督作。今度はYouTuberを題材にして人間の表と裏を描きます。
主演のムロツヨシさんと岸井ゆきのさん、序盤の仲良しプロモーション・ビデオ的な平和と友好はいずこへ??ってぐらいにすぐ関係がこじれ、壊れていきます。
善悪と人間性、ビジネスライクのドライな人付き合い、コンテンツとしての異常な消費スピード。YouTuberならではの見つけてもらうまでの大変さ、見つけてもらってからの大変さ。一時のおもしろさは善悪のリミットを簡単に狂わせちゃいます。
ムロさんの豹変ぶりは必見。そしてYouTuberは売れるとバブル経済のようにウハウハなのか。人間の嫉妬心と承認欲求の際限のなさを描きつつ、エンタメ度も高くておもしろい作品です。
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青春もの
街の上で(2021)
今泉力哉監督が、変容する “カルチャーの街” 下北沢を舞台に紡ぐ、古着屋と古本屋と自主映画と恋人と友達についての物語。下北沢の古着屋で働いている荒川青。基本的にひとりで行動し、たまにライブを見たり、行きつけの古本屋や飲み屋に行ったり。そんな彼の日常生活に、ふと訪れる「自主映画への出演依頼」という非日常。出てみたものの、それで何か変わったのかわからない数日間。またその過程で青が出会う女性たちを描いた物語。
下北沢を舞台にそこで生きる人々を描く。今泉監督お得意の会話劇、そして恋愛模様。若葉くん演じる荒川青の絶妙なボンクラ具合、巻き込まれまくって進むストーリー。
笑いを誘発するやり取りだったり、その町が醸し出す風情だったりが絶妙。人々の温度を直に感じるようで、愛おしい。何度も観たくなる、噛み締めたくなるような良さがあります。若葉君と中田青渚さんのシーンは必見。
今泉監督作の中でもトップ3に入るくらい万人にオススメできる作品です。
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佐々木、イン、マイマイン(2020)
俳優になるために上京したが、目の出ない27歳の悠二。別れた彼女のユキとの同棲生活も未だに続き、彼女との終わりも受け入れられない。そんなある日、高校の同級生・多田と再会した悠二は、高校時代に絶対的な存在だった “佐々木”との日々を思い起こす。 佐々木とその仲間たちの過去と現在を通して、観る人すべての心の中にいる“ヒーロー”を甦らせ、青春時代特有のきらめきと愛おしくも戻らない日々への哀愁をストレートに描き出す。
男子には人気があって女子からは煙たがられる、お調子者の佐々木。佐々木コールを繰り返せば、彼はアキラ100%からお盆を抜いた状態(つまり全裸)になり、クラスを盛り上げる。誠実ですごくいい奴だけど、女性には圧倒的に奥手という性質。
学生時代にそんな忘れられないヤツがひとりやふたり、誰の中にもいるでしょう。それを自分に置き換えて青春を思い出したくなる。佐々木、イン、マイマインはそんな映画です。
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君は永遠にそいつらより若い(2021)
大学卒業を間近に控え、児童福祉職への就職も決まり、手持ちぶさたな日々を送るホリガイは、身長170cmを超える22歳、処女。バイトと学校と下宿を行き来するぐだぐだした日常をすごしている。同じ大学に通う一つ年下のイノギと知り合うが、過去に痛ましい経験を持つイノギとは、独特な関係を紡いでいく。そんな中、友人であるホミネの死以降、ホリガイを取り巻く日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。
芥川賞受賞作家・津村記久子のデビュー作で第21回太宰治賞受賞作を映画化。わたしは津村さん小説は何冊か読んでいますが、これが初映画化作品。
シスターフッドものという感じは強くなく、就職するまでの大学生に日常を切り取っています。
理由なんて無く、人は何かに巻き込まれてしまうことがあります。他者を知ろうとしたり、他人を思いやること。それは傲慢なのでしょうか。
孤立感や無関心が広がっていく現代に向けての監督の想いがあり、誰かは誰かの救いに必ずなっていると本作は伝えます。
原作には書かれていなかったホリガイさんの児童福祉司として勤務する姿が、少しだけ描かれている。これが追加されたことで、悩みながらも一歩でも半歩でも生きて前に進んでいくことの尊さがにじみます。
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志乃ちゃんは自分の名前が言えない(2018)
人気漫画家・押見修造氏が自身の体験をもとに描いた代表作の映画化。高校一年生の志乃は上手く言葉を話せないことで周囲と馴染めずにいた。ひとりぼっちの学生生活を送るなか、ひょんなことから同級生の加代と友達になる。音楽好きなのに音痴な加代は、思いがけず聴いた志乃の歌声に心を奪われバンドに誘う。文化祭へ向けて猛練習が始まった。次世代を担う十代の実力派女優 南沙良×蒔田彩珠 ダブル主演!
青春映画、エモいという言葉を添えたくなるぐらいに。
吃音症である志乃、ミュージシャンを志すも音痴である加代、この2人がひょんなことから仲良くなり、音楽デュオを結成して文化祭での演奏を目指す。若さゆえののぶつかり合いや心の共有からはすごく人間味を感じます。
90年代後半が舞台のようですが、彼女たちが路上で演奏するミッシェル・ガン・エレファントの「世界の終わり」やブルーハーツの「青空」。なんとも清々しく心地よい響きで作品に華を添えています。
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わたしは光をにぎっている(2019)
両親に代わって育ててくれた祖母・久仁子の入院を機に東京へ出てくることになった澪。都会の空気に馴染めないでいたが「目の前のできることから、ひとつずつ」という久仁子の言葉をきっかけに、居候先の銭湯を手伝うようになる。昔ながらの商店街の人たちとの交流も生まれ、都会の暮らしの中に喜びを見出し始めたある日、その場所が区画整理によりもうすぐなくなることを聞かされる。その事実に戸惑いながらも澪は、「しゃんと終わらせる」決意をする。
好きな映画監督のひとり、中川龍太郎監督作。監督は詩人でもあり、人や風景を含めての情緒や奥ゆかしさの表現が上手いです。本作はキーとなっている光や水の魅せ方が美しい。
物語は松本穂香さん演じる澪が新しくできた友人や銭湯の仕事を通して明るくなり、成長する様を描いています。と同時に区画整理で消えていく街並みに憂いと寂しさを覚えながらも、大切な思い出は残っていく。
人々の優しさが溢れる終盤は必見です。言葉は残る。言葉は心。心は光。
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SF
Arc アーク(2021)
生まれたばかりの息子と別れて放浪生活を送っていたリナは、遺体を生きていた姿のまま保存できるように施術する<ボディワークス>いう仕事に就く。エマの弟・天音はこの技術を発展させ、遂にストップエイジングによる「不老不死」を完成させる。リナはその施術を受けた世界初の女性となり、30歳の身体のまま永遠の人生を生きていくことになるが・・・。
ネビュラ賞・ヒューゴー賞・世界幻想文学賞の3冠を制覇する世界的作家ケン・リュウの短篇小説を、『愚行録』(17)『蜜蜂と遠雷』(19)で世界から注目を集める石川慶監督が映画化。
19歳から100歳近くまでを演じ分ける芳根京子さんの見事さが際立ち、静謐を貫くなかで深く死生観を問い続ける物語です。時間というものを考えさせるSFで、ぜひ観てほしい作品です。
若さを保った体のまま、永遠の時間を手に入れるということ。果たして、人間は時間から逃れることができるようになったのか。鑑賞後にケン・リュウ氏の原作を読みましたが、下記のセリフが印象に残りました。
やりたかったあらゆることを達成することはなく、見たかったあらゆるところを見ることはなく、知るべきあらゆることを学ぶことはなく、だけどひとりの女性として充分すぎる経験をして死ぬのだ。わたしの人生ははじまりと終わりのある、円弧(アーク)になるだろう。
ケン・リュウ作『円弧』より
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PLAN 75(2022)
少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度【プラン 75】が国会で可決・施行された。 様々な物議を醸していたが、超高齢化問題の解決策として、世間はすっかり受け入れムードとなる。 夫と死別してひとりで慎ましく暮らす、角谷ミチ(倍賞千恵子)は78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇される。住む場所をも失いそうになった彼女は【プラン 75】の申請を検討し始める。
日本を再生するために【75歳以上の高齢者が自由に生死を選べる】国策を打ち出した近未来を描いた物語。
安楽死や尊厳死については個人に委ねられるものだという思いはありますが、本作で描かれているのは貧困の先に待っている死というイメージ。国が率先してやると歪みが生じるのが伝わります。
人が生きていくことの美しさと残酷さを同時に突き付ける倍賞千恵子さんの演技が素晴らしい。生きることを深く考えさせてくれます。
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ロマンス
マチネの終わりに(2019)
世界的なクラシックギタリストの蒔野聡史は、公演の後、パリの通信社に勤務するジャーナリスト・小峰洋子に出会う。ともに四十代だが出会った瞬間から、強く惹かれ合い、心を通わせた二人。洋子には婚約者がいることを知りながらも、蒔野は洋子への愛を告げる。しかし、それぞれをとりまく目まぐるしい現実に向き合う中で、2人の間に思わぬ障害が生じ、決定的にすれ違ってしまう。別々の道を歩む2人が辿り着いた、愛の結末とは-
「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです」 という本作を象徴する台詞は福山雅治さんがいうとキまりまくる。
小説自体を3回読むぐらいにはハマって映画化に期待していましたが、小説の持っていた上質さや上品さがそのまま引き継がれて映像作品としてアップデート。実在の曲ではなかった「幸福の硬貨」は映画の核としてしっかり製作されています。
また東京・パリ・ニューヨークの街並みや風景が美しく映し出され、演じた役者陣の魅力も十二分に伝わります。演奏場面は素敵で、余韻を残すラストシーンも必見です。大人のロマンス作品としておすすめ。
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his(2020)
春休みに江の島を訪れた男子高校生・井川迅と、湘南で高校に通う日比野渚の間に芽生えた友情は、やがて愛へと発展する。しかし、迅の大学卒業を控えた頃、渚は突如別れを告げる。出会いから13年後、迅は周囲にゲイだと知られることを恐れひっそりと一人で田舎暮らしを送っていた。そこに、6歳の娘・空を連れた渚が突然現れる。戸惑いを隠せない迅だったが、いつしか空も懐き、周囲の人々も三人を受け入れていく…
こちらも今泉監督作品。男性同士の恋愛の“その先”を描いたドラマ。LGBTQを取り扱った恋愛ものですが、ゲイの恋愛だけではない多様性が描かれます。
女性が働きに出て男性が主夫する形だったり、それゆえに子育ての仕方がわからない女性側の苦悩であったり、はたまた男性カップルによる子育てとか。家族の形は決してひとつではないということを伝えています。
わたしとしては、鈴木慶一さん演じた緒方さんの「誰かに出会って影響を受ける。それが人生の醍醐味」というセリフが胸に残っています。
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ドライブ・マイ・カー(2021)
舞台俳優であり演出家の家福(かふく)は、愛する妻の音(おと)と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう。2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去を抱える寡黙な専属ドライバーのみさきと出会う。悲しみと“打ち明けられることのなかった秘密”に苛まれてきた家福は、みさきと過ごすなかであることに気づかされていく――。
ボクの後悔と苦悩を抽出する村上春樹イズムを、濱口監督がうまく膨らませてる感じはありました。
3時間近い尺も納得する内容で、喪失からの再生が見事に描かれています。静かに物語を咀嚼する感じ。観ながらいろいろと考えを張り巡らす。
西島さんは言わずもがなとして、三浦透子さんの朴訥としつつも芯の強さを感じる演技が好印象。フジロッカー岡田将生くんの本役における絶妙な空っぽ感もなんだか良かった。
第94回アカデミー賞国際長編映画賞受賞作。見逃せません。
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特に観てほしい作品
ケイコ 目を澄ませて(2022)
生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコは、再開発が進む下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ね、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。嘘がつけず愛想笑いも苦手な彼女には悩みが尽きず、言葉にできない思いが心の中に溜まっていく。ジムの会長宛てに休会を願う手紙を綴るも、出すことができない。そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知る
聴覚障害のある元プロボクサー・小笠原恵子さんの『負けないで』を原案に三宅監督が映画に落とし込んだ、”耳が聞こえないプロボクサー”を描いた作品です。
語らずとも雄弁に。耳が聞こえない代わりに目が語る。ボクシングという大枠はあるにせよ、汗臭いスポ根ものではありません。
練習風景や普段の仕事、映し出される東京下町などを通して淡々と描かれているのは、ひとりの人間が持つ心情と生活感。
ボクシングを続けることへの葛藤がある中、終盤に読み上げられていくケイコがつけてきた日記。”生きていくことは積み重ね”だと実感します。そして、物事に向き合い続けることの大切さをこの映画は教えてくれます。
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由宇子の天秤(2021)
“正しさ”とは何なのか? ドキュメンタリーディレクターの由宇⼦は究極の選択を迫られる――三年前に起きた⼥⼦⾼⽣いじめ⾃殺事件を追うドキュメンタリーディレクターの由宇⼦は、テレビ局の⽅針と対⽴を繰返しながらも事件の真相に迫りつつあった。そんな時、学習塾を経営する⽗から思いもよらぬ“衝撃的な事実”を聞かされる。⼤切なものを守りたい、しかしそれは同時に⾃分の「正義」を揺るがすことになる――
3年前の高校生いじめ事件のドキュメンタリー作品をつくる、フリーの作家・由宇子(瀧内公美)のドキュメンタリーを観る映画です。「正論が最善とは限らない」という由宇子のセリフが本作を代弁します。
ネタバレ厳禁の構成なので、物語を再生してあなたも由宇子を追ってほしい。スリリングな展開の中で、正しい判断が何か一緒に悩んでほしい。主演の瀧内公美さんは素晴らしく、春本監督の気持ちがまるごと乗り移った必見の作品なので。
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まとめ
日本のヒューマンドラマをいろいろと紹介してきました。深く考えさせられる作品を多めに入れております。
ぜひじっくりとご覧いただければ幸いです。
まだまだ紹介しきれてない作品もたくさんありますので、amazonプライムビデオから探していただけるとおもしろい作品が見つかると思いますよ。
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【amazonプライムビデオで観る 音楽映画】についての記事もオススメです。
こちらの方がスカっとする作品を取り揃えています。