2024年に観た映画一覧③
ルックバック
鑑賞する2日前にkindleでマンガを買い、2回読んでのぞみました。適切な映像化という印象。無理やり引き延ばしたりすることなく、劇伴の大きさ以外は過剰な演出もなく。小学生の頃から夢に向かって惜しみなく時間と情熱を注ぎ続ける。何かを生みだすことは苦しいが尊い。
河合優実さんと吉田美月喜さんというメインキャストの声の良さに惹かれる。正直、話題になってるから観ましたがとてもよかったですよ。
『ルックバック』amazonプライムビデオ見放題で配信開始しております。
カリガリ博士
初めて大須シネマへ行き、初めてのサイレント映画、初めてのピアノ生演奏付き鑑賞(演奏:鳥飼りょうさん)。そして初めてのカリガリ博士。初めて尽くしの体験の映画。ようやくcali≠gariの由来となった作品をちゃんと知ることができました。
当時としては前衛的とされた104年も前の作品を眼で追いかけ、その意味を考える。無音とはいえ、場面ごとに表情付けするピアノを補助輪に楽しむことができました。結局はカリガリ博士 is 狂気みたいな感じだと思っていたらそれに自分も飲み込まれる。
終演後にトークコーナーが30分~40分。ここで映画が生まれた日付、1895年の12月28日を覚える。ドイツ表現主義について、サイレント映画について、楽士について、カリガリ博士の深堀など演奏してくださった鳥飼りょうさんの解説の下でとても勉強になりました。ちなみにカリガリ博士はamazonプライムビデオ見放題で観れます。
あんのこと
タイトル通りに”あん”という女性を描いた作品であり、取材を基にして丹念に物語を構築している。ここには2020年のコロナ禍の記憶を残しておきたいという監督の意図も込められています。それは当時に監督自身も友人を亡くしていることが関係している(舞台挨拶時のQ&Aにて)
しんどい。積み重ねても積み重ねても糸が切れる時は一瞬。安易な救いには持っていかず、起こってしまった現実の残酷さから目を背けさせない。それ自体が実在したひとりの人間を映画にしたことへの責任感なのかもしれません。観ててものすごく消耗しました。でも、”観るべき映画”だということは伝えておきます。
上映後舞台挨拶にて入江監督が本作について多く語ってくださいました。ひとつの新聞記事をもとに実在の人物を描いており、”あん”という女性への責任をもって映画にしたこと。今でも”あん”という女性についてわからないから考え続けていると話していたことがすごく印象に残っています。
『あんのこと』、2024年9月13日よりamazonプライムビデオ見放題で配信開始しております。
ありふれた教室
校内で起こる盗難事件を解決するために下した判断が負の逆噴射になって主人公の新任教師に返ってくる。生徒や保護者、同僚の先生、校長との板挟みに加え、正義感が強いがゆえの行動がまた事態を悪化させる。教員のなり手不足を加速させる99分でした。スリリングで負の切れ味抜群。
人間の境界
ベラルーシとポーランドの国境で起きた「人間兵器」とも呼ばれた難民の押し付けあい。それをシリアから亡命しようとする難民家族、ポーランドの国境警備隊、支援活動家など複数の視点から映し出した作品。英題は『Green Border』で”ポーランド・ベラルーシ間にある森林地帯”にある国境線のことを指しています。
かつて観た『異端の鳥』と同じくらいか、それ以上の絶望感に抉られ続けた152分。ドキュメンタリーテイストですが、実話をベースにした劇映画。2021年の出来事を2023年3月に24日間で撮り終えて、同年に公開されている。ポーランドで上映した際は政府から凄まじい嫌がらせを受けたという。
知らないところで悲劇はたくさん起こっているのを思い知らされる。ご存知のように日本も難民認定をほとんどしない国だということを忘れてはならない。これについては『マイスモールランド』をみてほしい。
悪は存在しない
『ドライブ・マイ・カー』でもタッグを組んだ音楽家・シンガーソングライターの石橋英子さんと濱口竜介監督による共同企画として誕生した映画。ミニシアター限定上映。わたしはシネマテーク改めキネマ・ノイにて鑑賞。
長野県の自然豊かなある町に、政府からの補助金目当てで計画されたグランピング場建設計画が持ち上がる。町側と建設側、双方のやり取りが主だった内容になっているはず。
田舎と都会、市井の人と資本家、人間と自然。そういった対比がありつつ、生きていく上でそれぞれの立場・目線での正しさがあるという解釈でいいのか。衝撃のラストは自然の怒りか。町の総意か。ムズいです。未だによくわかってないですが、観て良かったとは思う。ただ『偶然と想像』の方が好きですね。
朝がくるとむなしくなる
一時期に全女の敵と化していた気がする唐田えりか様を主演に、彼女の学生時代からの友達である芋生悠さまを起用したシスターフッドもの。タイトルから連想する鬱々としたものではありません。
広告営業をしていたものの激務で会社を辞め、コンビニバイトする唐田さんのミニマムな日常を切り取り、再生を見る映画。何か大きな出来事が起こるわけではありませんが、学生時代は顔知ってる程度の間柄だった2人が大人になって友情を育んでいく点は惹かれるものがあります。あとボウリングシーンの尊さ(笑)。
安倍乙さん演じるコンビニ同僚ギャルの「でも毎朝起きて、こうやって働いているだけでもめっちゃ偉くないですか!」の一言に本作のメッセージが凝縮されている。というかこの一言のために本映画があるぐらいインパクトがありました。
夜明けのすべて
『きみの鳥はうたえる』や『ケイコ 目を澄ませて』が良かった三宅昌監督の作品ということで観に行きました。
先月に原作を読んでるから内容は頭に入っているとはいえ障害や死別など、みなが何かを抱えて生きていることを優しく映していく映画でじわりときた。作中に登場するPMS(月経前症候群)やパニック障害に過剰フォーカスするわけでなく、さりげない温度感で日常を捉えている。
上白石萌音さんのあと10年ぐらい就活生やれる感は異常。
おまけ:2024年ベスト映画5選
個人的に良かったものが以下5作品です(順位づけなし)。
- 夜明けのすべて
- ありふれた教室
- マミー
- 私は憎まない
- どうすればよかったか
ドキュメンタリー多めになってますが、それほど印象的な作品が多かったです。観られる機会があればぜひ。