【作品紹介】Wren『Black Rain Falls』

 2012年頃から始動したUKロンドンの4人組。IDIOTEQが2014年に行ったインタビューによるとNEUROSIS、AMENRA、SWANS、GODSPEED YOU BLACK EMPERORからの影響を公言。アトモスフェリック・スラッジ/ポストメタルの領域を開拓しており、これまでにフルアルバム3作品をリリース。

 本記事は2025年2月にリリースされた3rdアルバム『Black Rain Falls』について書いています。

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作品紹介

Black Rain Falls(2025)

 3rdアルバム。全7曲約35分収録。Scott Evans(Kowloon Walled City)が録音とミックスを担当。”この作品は自然の崩壊、人類の衰退、そして創設当初から染み付いている影の亡霊に対する概念的な声の結晶“との言葉がリリース元であるChurch Road Recordsのインフォメーションに載る。

 本作で初聴き。先述したインタビューではNeurosisやSwansの影響を口にしていますが、私が抱いた印象ですと1stアルバム『Celestial』辺りまでの初期ISIS的なスラッジメタルの質感が強いです。殴打型のリフとドラムの牽引を軸にして、アーロン・ターナー総帥に似たヴォーカルの咆哮が入る。

 #1「Flowers of Earth」は約8分に及ぶオープナー。鈍重なミニマリズムの中でGodfleshにも通ずる荒涼としたサウンドを打ちつける。続く#2「Toil In The Undergrowth」では空間の余白を設けてAmenraを思わせる啓示的なムードをもたらしたかと思うと、Chat Pileに迫る攻撃特化の#3「Betrayal Of Self」で一気に急襲。優しさ、甘さ、楽観。こうした要素を排除した冷徹で重苦しい雰囲気に満ちています。

 ただスラッジに全ベットしているわけではなく、短いインタールード#4「Cerebral Drift」を挟んでからの後半戦はポスト系に連なるテクスチャー重視の方向性へと移行。特に#5「Metric of Grief」はオルタナロック寄りの性質に加え、中盤にかけてソフトなタッチが織り込まれています。

 ですが、#6「Precede The Flint」ではクリーンな音色を配しつつも後半はドラムの慌ただしい加速を合図に猛烈な風を吹かせています。全体を通しても肉体と精神に修練を課すような厳しさがある。黒い雨に打たれるとは、ひいてはスラッジを聴くとはそういうことだったのかと改めて思い知る作品です。

メインアーティスト:Wren
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