2021年ベスト映画10選

 ここ数年、映画館で80本ぐらい観ていたのですが、今年は半減しています。理由は単純にこのブログを再開したことです。書くことに時間を費やしました。それでも、週1本観るというルーティーンは守りたいと考えつつも、それでも観れていません。しかしながら一応、40本ぐらいは劇場で観ましたのでその中から選んだ10本をランキング形式で紹介します。

 書いている人の趣向は以下のような感じです。参考までに。

  • ヒューマンドラマを好む
  • 社会的なテーマ性のあるものを好む
  • 小説好き、音楽好き
  • 大作ものはほとんど観ない。アニメもあまり観ない

 では、以下からお付き合いいただければ幸いです。

 

目次

2021年ベスト映画10選

インパクト大賞 SNS 少女たちの10日間

2020 年、1 本のドキュメンタリーが世界を震撼させた。そこは巨大な撮影スタジオに作られた 3 つの子供部屋。幼い顔立ちの 3 名の女優が、“12 歳・女子”という設定の下、部屋に設置された PC を使い SNS で“友達募集”をしたところ、なんと 10 日間で 2,458 名もの成人男性がコンタクトをとり、卑劣な誘いを仕掛けてきたのだ。撮影されているとは気付かず、未成年に対する容赦ない欲望の行動は徐々にエスカレートしていき…

 特別枠として今年のインパクト大賞です。物語として、ドキュメンタリーとして特段優れているわけではありません。上記にあげたメーカー説明文通りです。大量のよくわからんオッサンたちが少女たちにコンタクトを取り、ZOOM?等で話す。ですが、ちょっと話しただけで彼女たちに裸を見せろとか、自分の性器や自慰行為を見せたりしてくる。しかもオレがなんでも教えてやる的な傲慢な態度、オスとしての欲望をまるごとぶつけてくるから余計に怖いですよ。

 観ていたら男性であること自体に恥ずかしさを覚えたし途中で気持ち悪くなることもしばしば。目と口以外をモザイクで隠しているのが余計に恐怖を煽る。トラウマになりそうな体験を何百回と受け続ける少女たちは大丈夫なのかと心配が続く。今回は選外にはしていますが『プロミシング・ヤング・ウーマン』と同様、観ると視点がひとつ変わるという類の作品です。

 子を持つ親は観るべきという声もありますが、男性こそ観るべきですね。わたし自身は今年もジェンダーとか多様性とかテーマにした作品は書籍にしろ映画にしろ、いろいろ触れています。インパクトではやっぱりこれが一番今年きたなと感じてます。

第10位 ロード・オブ・カオス

19歳のギタリストのユーロニモスは、デッドたちとともに「真のブラック・メタル」を追求するバンド「メイヘム」の活動に熱中していた。しかしある日、デッドはショットガンで頭をブチ抜き、自殺…。発見者のユーロニモスは、親友の脳漿が飛び散る遺体の写真を撮り、喧伝することでカリスマ化。“誰が一番邪悪か”を競うサークルを作り、王として君臨。しかし、メンバーのヴァーグが起こした事件を契機に、主導権争いは熾烈化。歯止めが効かなくなった果て、狂乱が待ち受けていた

 上半期に選んでないけど本作も上記の『SNS 少女たちの10日間』もよく思い出すんですよね。ということで年間ベストにランクイン。こちらはR-18指定。『SNS 少女たちの10日間』がR-15指定ですが、逆じゃね?と思う。ちなみにわたしは原作を10年ちょっと前に読んでいます。2段組みで500ページ超えていたと思いますが、それはそれは濃密でした。

 この映画の凄いところは、なぞに美しいところです。ユーロニモスを演じた主演のロリー・カルキン君が醸し出す儚さにあるのか。はたまた物語としての無常感がそう思わせるのか。ブラックメタル黎明期の混沌と史実が入り混じってますが、真のブラックメタルは真実が狂気を超えるのです。

 音楽面よりも”あの時に何が起きていたか”を中心に捉えて物語は進みます。そして、途中でだれが一番悪いことしたか選手権の様相を帯びていく。教会を燃やしてからがブラックメタルの本番なのだと言わんばかりに。ヴァーグ・ヴァイカーネスさんは悪事も女性関係も暴走する。反対にユーロニモスが出てくる言葉とは裏腹に情のある繊細な人間という描かれ方で、その対称性が引き付けられる要因なのかも。ちなみにスカイ・フェレイラがヒロイン役で出ている。

 本作はセンチュリーシネマで観ましたが、MAYHEMのTシャツという正装の方もいれば、ほかのメタルTシャツの人もいたし、VMOのメイヘムTシャツの人もいた。ちなみにわたしはすぐ横にある名古屋クアトロで13年前にMAYHEMを観ています。2008年5月に開催されたEXTREME THE DOJO VOL.20の記念回で、豚の頭をああしたり、こうしたりしていました。

第09位 聖なる犯罪者

少年院で出会った司祭の影響で熱心なキリスト教徒となった20歳の青年ダニエルは、前科者は神父になれないと知りながらも、神父を夢見ている。仮釈放が決まり、彼は田舎の製材所に就職することになり、その道中、偶然出会った少女マルタに新任の司祭と勘違いされそのまま代わりを任された。司祭らしからぬ言動や行動に村人たちは戸惑うが親しみやすい司祭として信頼を得ていく。一年前、この村では凄惨な事故があり、この事故が村人たちに与えた深い傷を知る。残された家族を癒してあげたいと模索するダニエルの元に、同じ少年院にいた男が現れ事態は思わぬ方向へと転がりだす…

 司祭のコスプレアイテムを持ってたことで思わず言ってしまった嘘。「マジで、信じちゃったよ、どうしよう」。そこから始まった司祭ごっこは、やがて本物の重みをもつようになります。タバコと酒をガンガンやり、EDMで踊り狂う前科持ち青年・ダニエル。本来なら聖職者になれない彼ですが、その司祭ごっこが見とれてしまう完璧さと感情を持って村人の救いとなり、分断を解決しようとする。

 赦しとは何かを信者に語りかける。”赦しとは忘却ではなく、赦しとは愛ではある”というのは本作に出てくる一説。一方で、自身は同じ少年院で過ごした人間に出くわしてしまって全てをバラすと脅される。以降の緊迫感はなかなかで、バラされるという不安の中で聖職者として目覚めた本能が彼を突き動かす。エグい作品だけども、見る価値は十分だし、面白い。偽神父であろうと、誰かの救いになることはあるのです。

第08位 Arc アーク

SF作家ケン・リュウの短編集「もののあはれ」所収の「円弧(アーク)」を実写映画化。『愚行録』『蜜蜂と遠雷』などの石川慶が監督を務めた。近未来、放浪生活を送っていたリナ(芳根京子)は人生の師となるエマ(寺島しのぶ)と出会い、遺体を生前の姿のまま保存できるように施術(プラスティネーション)する「ボディワークス」という仕事に就く。一方、エマの弟で科学者の天音(岡田将生)は、この技術を発展させた不老不死の研究に打ち込んでいた。30歳になったリナは不老不死の処置を受け、人類で初めて永遠の命を得る。やがて、永遠の生が普通となった世界は人類を二分し、混乱と変化をもたらしていく。

 SFって苦手なので小説も映画もそんなに触れていない人間です。でも、これは人間と時間軸を描いたものだからこそ響くものがありました。

 人をモノに変質させるプラスティネーションを具現化して見せたことの凄さ、19歳から100歳近くまでを演じ分ける芳根京子さんの見事さが際立ち、その上で静謐だけども深く死生観を問い続ける。若さを保った体のまま、永遠の時間を手に入れるということ。果たして、人間は時間から逃れることができるようになったと解釈できるのか。

 鑑賞後に原作を読みましたが、無限の時間を得たことで生きるを急かす/脅かすが無くなったことが、逆に後悔に繋がっているとの記述もありました。人類は新たなものを得ると、新たな問題に直面するということでしょうか。生と死、個と時間。パンフレットで石川監督は、「円と違って始まりと終わりがあるのが円弧」と仰っていますが、人生はそれがあってこそなのかもしれません。

やりたかったあらゆることを達成することはなく、見たかったあらゆるところを見ることはなく、知るべきあらゆることを学ぶことはなく、だけどひとりの女性として充分すぎる経験をして死ぬのだ。わたしの人生ははじまりと終わりのある、円弧(アーク)になるだろう

ケン・リュウ作『円弧』より

第07位 ノマドランド

ネバダ州の田舎町の経済崩壊を受けて、ファーン(フランシス・マクドーマンド)はヴァンに荷物を積み込み、アメリカ西部の広大な景色の中で自由な放浪の旅に出る。道中、彼女はほかのノマド(放浪の民)たちと固い絆を育む。人間の打たれ強さを描いた心揺さぶる希望の物語。

 アカデミー賞3部門受賞。圧倒的に地味な作品ですが、圧倒的フランシス・マクドーマンド作戦で感じさせる圧倒的凄み。悲しみや喪失感を抱えながら、車上生活で土地を転々とする。ハウスレスは本当に自由なのか。格差を描いた作品ではなく、人それぞれの生き方があるという描き方という印象。主人公・ファーンがノマドとして生きる目的は、はっきりとは明かされてませんが、こんな理由だろうなあというのは伝わります。

 本作を観て思ったのは、”自分軸”の重要性です。過酷なはずのノマド生活が美化され過ぎている印象はあったけど、本質的な触れ合い、それこそ五感を通して接する人と自然がもたらす豊かさを改めて教示してもらったように思う。主演以外は基本的に役者ではなく本物のノマドたちを起用しており、リアリティをとにかく感じる。だって生活そのものをみせてくるんだから。

第06位 君は永遠にそいつらより若い

大学卒業を間近に控え、児童福祉職への就職も決まり、手持ちぶさたな日々を送るホリガイは、身長170cmを超える22歳、処女。 変わり者とされているが、さほど自覚はない。バイトと学校と下宿を行き来し、友人とぐだぐだした日常をすごしている。 同じ大学に通う一つ年下のイノギと知り合うが、過去に痛ましい経験を持つイノギとは、独特な関係を紡いでいく。 そんな中、友人、ホミネの死以降、ホリガイを取り巻く日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。

 何冊か読んでいる津村記久子さん小説の初映画化。シスターフッドものという感じは強くなく、恋愛が主軸ではない。男らしさと女らしさの問いかけはあるし、未経験ゆえの葛藤と焦燥を持ったり、生まれ持った身体によるジレンマがあり、それを踏まえた性と生を考えさせる部分はある。とはいえ等身大の大学生を描いているからか、何気ない日常のありがたみを強く感じさせます。

 そう思わせるのはイノギさんが不条理に抱えてしまった痛みであり、ホリガイさんや吉崎君が唐突に遭遇した身近な人・ホミネ君の死。理由なんて無く、人は何かに巻き込まれてしまうことがある。他者を知ろうとする、他人を思いやることは傲慢なのか。孤立感や無関心が広がっていく現代に向けての想いがあり、誰かは誰かの救いに必ずなっていると本作は伝えている。

 映画版では、イノギさんを通して見つける”新しい自分”というのが立体的な形で表出しているように感じられました。そして小説には書かれてなかったホリガイさんの児童福祉司として勤務する姿が、ホンの少しだけ描かれている。これが追加されたことで、悩みながらも一歩でも半歩でも生きて前に進んでいくことの尊さがにじむ。

 U-NEXTでは配信されてるみたいなのでぜひ。

第05位 街の上で

下北沢の古着屋で働いている荒川青。青は基本的にひとりで行動している。たまにライブを見たり、行きつけの古本屋や飲み屋に行ったり。口数が多くもなく、少なくもなく。ただ生活圏は異常に狭いし、行動範囲も下北沢を出ない。事足りてしまうから。そんな青の日常生活に、ふと訪れる「自主映画への出演依頼」という非日常、また、いざ出演することにするまでの流れと、出てみたものの、それで何か変わったのかわからない数日間、またその過程で青が出会う女性たちを描いた物語。

 ここ2年ほど今泉監督の作品は映画館に毎回観に行ってます。今年は『あの頃。』『街の上で』『かそけきサンカヨウ』の3本をそれぞれ劇場で観ています。劒さん原作のあややの物語から始まって、窪美澄さんの原作を映画化。どれも味わい深い人間物語として昇華されているし、それこそがわたしの観たい今泉映画なのかもしれません。ちなみに『かそけきサンカヨウ』は主演・志田彩良さんの舞台挨拶付きで鑑賞しました。

 本作は去年の5月公開の予定でしたが、新感染症の影響で約1年延期。男1人に女性4人という構図から桂正和先生のマンガ『I”S』的な恋愛モノを想像してしまったのですが(だって萩原みのりさんがいるんですよ)、全然違いました。下北沢という街を舞台とした人の連なり、会話劇。すべてを観ているわけではありませんが、誰が観てもすんなりとおもしろいと思えるもの。今泉作品で一番おもしろい作品(テーマ的にはhisが個人的にはベストですが)。

 Netflixで配信が始まっています。観返しながらこれを書いていますが、若葉君と中田青渚さんのシーンは何度も観てしまう。

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第04位 空白

「ヒメアノ~ル」の吉田恵輔監督によるオリジナル脚本作品で、古田新太主演、松坂桃李共演で描くヒューマンサスペンス。女子中学生の添田花音はスーパーで万引しようとしたところを店長の青柳直人に見つかり、追いかけられた末に車に轢かれて死んでしまう。娘に無関心だった花音の父・充は、せめて彼女の無実を証明しようと、事故に関わった人々を厳しく追及するうちに恐ろしいモンスターと化し、事態は思わぬ方向へと展開していく

 今泉監督と並んで吉田恵輔監督も毎回観に行ってる。自身の長年にわたるボクシング経験から生まれた『BLUE/ブルー』も良かったのですが、やっぱりこちらですかね。モンスター化していく古田新さん、正義の押し売りおばさんの寺島しのぶさんのインパクト。どうやっても話が通じない、会話にならない人間は存在する。

 具体的に万引きしたシーンは描かないことで(最後までしたかしてないかわからない)、鑑賞者にずっと考えさせ続けるつくり。その割に交通事故の凄惨なシーンはしっかりと見せてくる。事件のエンタメ化と消費。もはや全員が加害者であり、被害者である様相。観ているだけでキツい。

 でも、ちゃんと優しさと希望はある。「空白」ってダブルミーニングだったのかと思わせる瞬間もあって、観終えるとホッとはします。内側に渦巻くものは残りますけど。

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第03位 ボクたちはみんな大人になれなかった

作家・燃え殻による小説が原作、森山未來が主演を務める。 物語は、ある朝の満員電車の中で、昔の恋人に間違えてフェイスブックの友達申請を送ってしまった主人公「ボク」の混沌とした1日から始まる、過去と現在をSNSが繋ぐラブストーリー。

 燃え殻さんのサイン本を3冊ほど所持しているのもあるけど、映像化された本作はとても良かった。伏見ミリオン座で公開直後に観たのですが、もう1回観たくなってNetflixに加入して数度観返す。そして、2回ほど読んでいた原作をさらに読み込む。後に再びのミリオン座で森監督と燃え殻さん舞台挨拶があったのでリピート鑑賞するという。今年、一番観た作品です。

 ただ、映像化にあたっては燃え殻先生の影が消えていて、ちゃんと森山未來さんが演じる佐藤の物語になっている。原作からはわりと大きく改変。46歳となった20年の今から95年の21歳へさかのぼっていくストーリーなのですが、大人の懐古としてしみじみと響くものがあります。

 自分はオザケンなんてまるで聴いてないし、東京生まれ東京育ちでもない。けれども、佐藤の歳に近づいてきて(それでも10歳下ですが)、わたし自身も時間を巻き戻して自分とシンクロさせるように本作を観ていたからこそ、ここまでハマれたのかもしれません。あと、伊藤沙莉さんがとにかく素晴らしいので。

 実際に舞台挨拶の時に森監督が自分事として捉えられるように作ったと話していた。ということで、受け手のバックグラウンドが本作の評価にはかなり影響すると思う。わたしは人生うまくいってないし、輝かしい思い出なんてない。でも、ちょっと佐藤に重ねたい想いがある(苦笑)。自分の人生を肯定したくなるもんだ、人間は。

舞台挨拶後のサイン会でパンフレットと小説にお二方のサインをいただきました。

第02位 サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ

メタル・ドラマーのルーベン(リズ・アーメッド)は、恋人のルー(オリヴィア・クック)とバンドを組み、アメリカ各地のライブハウスを回るツアー生活を送っていた。そんなある日、ルーベンはひどい耳鳴りに襲われて急速に聴力を失っていく。“音楽も人生も失ってしまう”―不安や絶望に押しつぶされそうになるルーベンだが、ルーの勧めで聴覚障がい者の支援コミュニティーに参加することに。徐々に新たな環境に適応する一方で、元の生活に戻ることを諦めきれないルーベンは葛藤する。

 amazon primeビデオで2回鑑賞。11月に名古屋でも劇場公開されたので映画館でも鑑賞しました。

 五感のうち、どれかが機能不全になることを想像しただけでも恐ろしい。まず考えさせられるのがその点です。それによって人生を諦めることになる。音楽を生業としているルーベンであればなおさらです。GISMのTシャツを着てたし、バッキバキの肉体は力強さと瞬発性を兼ね備えたドラミングのためであったと思う。そこまで人生を懸けていたし、それがオレのすべてだと主張するように。

 本作においてメタル・ドラマーとしての活動は序盤のみ。主人公・ルーベンの一人称で物語を追い、タイトルのメタルより”聞こえるということ”にフォーカスしています。彼を通したドキュメンタリーのようなつくり。実際に耳が聞えなくなっていく過程がリアルで、その音響・聞こえ方を鑑賞者にわかりやすく提示してくれます。モゴモゴと濁った音になり、終いには音自体が聞えなくなってしまう。

 これまでとこれから。今まで通りの生活が送れない苛立ちの中で、ろう者のコミュニティーに入って生活を刷新していく。静寂が支配した世界で暮らす中で得た気づき。生まれる過去の日常を取り戻すべきか?の葛藤。その中でルーベンは自分にとって大切なものを得るべきか手放すべきかを考えながら行動していく。ラストのノイズと静寂の対比は、健常者である我々にとっても意味深い問いかけを行っています

第01位 由宇子の天秤

“正しさ”とは何なのか? ドキュメンタリーディレクターの由宇⼦は究極の選択を迫られる――三年前に起きた⼥⼦⾼⽣いじめ⾃殺事件を追うドキュメンタリーディレクターの由宇⼦は、テレビ局の⽅針と対⽴を繰返しながらも事件の真相に迫りつつあった。そんな時、学習塾を経営する⽗から思いもよらぬ“衝撃的な事実”を聞かされる。⼤切なものを守りたい、しかしそれは同時に⾃分の「正義」を揺るがすことになる――。果たして「“正しさ”とは何なのか?」常に真実を明らかにしたいという信念に突き動かされてきた由宇⼦は、究極の選択を迫られる…。

 3年前の高校生いじめ事件のドキュメンタリー作品をつくるフリーの作家・由宇子(瀧内公美)のドキュメンタリーを観る。どういうこと?と思われますが、それは彼女自身に学習塾を経営する父(光石研)の過ちが降りかかるから。仕事を通した事件、プライベートの事件。2つの事件をドキュメンタリーという形でみせる。この入れ子構造が本作の肝となっています。98%ぐらいは彼女視点で綴られ、その心情の揺れ動きを天秤として表現しています。

 真実を追う作品ではあるんですが、白か黒かの断定をしたいわけではなく、白から黒までのグラデーションの中で人は生きていることを示唆する。由宇子を通して、自分ならどうするかを幾度も幾度も考えさせられる。結局のところ思うのは、それが自身の立場に置き換わると正しさだけでは判断がつかなくなること。「正論が最善とは限らない」という由宇子のセリフが本作を代弁する。

 春本監督の魂まるごと乗り移った重厚作であり、必見。何を言ってもネタバレに迫るので、ぜひ観て由宇子と同様に考えてほしい作品。

終わりに 劇場で鑑賞した作品リスト

以下を観ました。ベストにあげた作品は省略。来年はもっと観よう。

  • タイトル、拒絶
  • Swallow スワロウ
  • パリのどこかで、あなたと
  • 私をくいとめて
  • ヤクザと家族 The Family
  • ミセス・ノイジィ
  • 花束みたいな恋をした
  • すばらしき世界
  • あの頃。
  • あの子は貴族
  • 野球少女
  • ミナリ
  • まともじゃないのは君も一緒
  • 夏時間
  • アンモナイトの目覚め
  • BLUE/ブルー
  • 騙し絵の牙
  • 茜色に焼かれる
  • 猿楽町で会いましょう
  • 17歳の瞳に映る世界
  • アメリカン・ユートピア
  • 最後にして最初の人類
  • プロミシング・ヤング・ウーマン
  • イン・ザ・ハイツ
  • うみべの女の子
  • 全員切腹
  • 君は永遠にそいつらより若い
  • コレクティヴ 国家の嘘
  • かそけきサンカヨウ
  • 悪なき殺人

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