8m インタビュー ~其のインスト、流水の如し~

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  中学の気心の知れた仲間とtoeのコピーバンドみたいなところから始まり、インストゥルメンタルの醍醐味を表現していくようになった東京の5人組バンド、8m(エイトメーター)。誰しもが経験するだろう環境の変化ゆえに長期の活動休止を挟むも、2004年の結成から10年以上にわたって活動を続けています。00年代のインスト・ポストロックの流儀にならいつつ、エモーショナルかつメロディアスなインストを鳴らす彼等の特徴は、やはり各パートから歌心を感じさせるところでしょうか。テクニカルな展開があるものの春風のように爽やか、かつ喉ごしも滑らか。それは初の全国流通音源となる5曲入りのミニアルバム『in the dew』から感じ取れます。

 今回はギタリストの照井氏にメール・インタビューを敢行(一部を細野氏が回答)。これまでのバンドの歴史、10年以上かけて初となった1stミニアルバム『in the dew』についてじっくり話を伺いました。あくまで自分たちのペースで活動を続ける8mを知り過ぎることのできる内容になっていると思います。是非ともご一読を。

8m ‐ Interview

―― 最初に8m(エイトメーター)の結成について教えて下さい。合わせて、バンド名の由来についても教えていただけますか?

自分とギターの細野、ベースの沖村の3人が中学の部活で一緒だったんです。何年かぶりに集まったら楽器をやってるって話になったので、じゃあバンドでもやるか!と。ドラムの水野は、細野と高校と大学が一緒で仲良かったので連れてきた感じで、最初はスタジオに入ったりして遊んでただけでしたね。

数年間活動した後に、ドラムの水野がキーボードを入れたい!と言いだして連れてきたのが山田でした。メンバーとしても「キーボードが入る事で表現の幅が広がる」という事ですんなり受け入れられて、何より彼がおもしろい人間だったのでそのまま馴染みましたね。現在は山田が東京にいないので、サポート・キーボードにカベナオコさん(from ネス)を迎えて活動しています。

バンド名は、自分の友人が「8bit」って名前を勝手につけて、僕らも深く考えずに一度はじゃあそれでいいかとなりました。ですが、検索したら同名のヒップホップアーティストがいたんです。なので単位を変えようという話になり、8mになった…そんな経緯だったと思います。

―― 結成当初からインストゥルメンタル・バンドとして進んでいこうと決めていたのでしょうか。

結成して間もない頃に、toeのライブをメンバーで見に行ったんです。その時に衝撃を受け、最初はtoeのコピーバンドみたいな事をしてました。その延長として、インストゥルメンタルで曲を作るようになりました。歌が必要だと思えば歌ありの曲を作ろうと思っていますが、インストならではの表現ができるように、というところは意識しています。

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―― 2004年の結成から10年以上が経過している中で、08年から長期の活動休止に入って13年に活動を再開されています。長い沈黙期間があり、普通なら解散という道を選んでも不思議ではありません。それでも8mとして活動を続ける原動力はなんでしょう?

08年からの長期活動休止の後にキーボードが加入したりして、ほんの少しだけライブ活動を再開していました。それが2012年くらいだったかな。その後レコーディングを始めてから、またライブ活動は止まっていました。長期の休止期間をとった理由は何も重い理由は無くって、生活上の理由です。平たく言えばメンバーが会社員になったので、予定が合わせられなくなったからですね。再開できる時にまたやろうか、という感じでお休みしていました。休止期間も8mとして活動したい思いはそれぞれありましたが、できないものは仕方がないという感じでしたね。生活優先というか。活動できないからといって解散という発想も特にありませんでした。

続ける原動力というか、続けられているのはそういう肩の力が入ってないところのおかげかなと思います。「天下取ってやる!」とか思うなら現実と乖離してしまって辛いと思いますが、そういうバンドではないですから。歌も無いですしね(笑)。大きい場所でライブしたい!とか 色んな人に聴いて欲しい!という気持ちはもちろんありますが、「生活の一部としてバランスをとりながら、自分たちにできる限りの良い音楽を作る」という目標設定にしているおかげで続けられています。続けるための環境を整える事ができてるのは、とても幸運だと感じています。

あとは、メンバー同士の仲が良いので一緒にいて楽しいし、8mで作ることや演奏することが面白いというのが土台にあります。やっぱりバンドをするのはエネルギーを使いますし、楽しさやおもしろさを共有できないと環境は良くてもモチベーションが続かないですね。

―― 活動再開に際してキーボードの山田さんが加入しました。彼の加入は、復活の際には新しい自分たちをアピールしたいと考えていたからでしょうか。それとも偶発的なものなのでしょうか。

偶発的なものですね。アピールって意図はないです。
音色的にキーボードが欲しかったというところに尽きます。

 

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―― そして、5曲収録の1stミニアルバム『in the dew』がリリースされました。以前にデモ音源、親交の深いstereo typeとのスプリット作品を発表はしていましたが、単独の流通作品としては初となります。自身での完成の手応えや周りの反響はいかがでしょう?

ろくにライヴをしていない状態でいきなりのリリースでしたから、何の反響も無いかもしれないなと思いながら作ってました。今回の音源は、以前に発表したスプリットと同じくstereo typeの芹澤くんが主催している、further platonics recordsからのリリースになります。実際にリリースしてみると流通や店舗展開をしっかりしてもらえ、いろんなところで反響をいただけてとてもうれしく思っています。further platonics recordsの実績と、芹澤くんの人徳のなせるワザですね。感謝しています。

完成の手応えは、自分達にしては頑張ったなと思います。とても時間がかかってしまいましたし、反省点ばかりですけど、自信を持って聴かせられるところまで持っていけました。でも、70点くらいの自己評価ですけどね(笑)。

―― ジャケットデザインとイラストレーションを中村至宏さん大槻香奈さんが担当されていますが、彼等に依頼した理由について教えて下さい。またこのイラストについてもわかる範囲でいいのでお応えいただけると嬉しいです。 ※ この質問はギタリストの細野氏が回答

音楽はwebにアップすれば事足りる時代なので、CDを作るなら現物だけが持つ魅力を少しでも、と考えていました。とはいえ、僕らのデザイン能力は皆無。困っていたところに知人を通じて、こんな美術作家さんがいると教えていただき、単純に良いなと思って依頼をしました。音楽に対して絵をのせるという意味合いで、それができそうな幅のある方にお願いしたくて。同年代の方だったというのも大きいです。なんとなくですが、共有しやすいかなと。

”5曲のイメージを包括して欲しい”みたいな依頼になってしまったので、無茶振りだったと思います。特定の曲のイメージに寄せてもらうか、という議題もあったんですが、ひとつの曲に寄せるのも難しいという判断になり…。悪く言えば「丸投げ」なんですが、お二人ともすごく良い絵を描く方なので、それこそがやってみたかったことでした。

大槻香奈さん(彼女について詳しくはこちらのインタビューを参照してください)の絵は、瞬間的には「キレイ」とか「かわいい」表現も多いんですが、それだけで終わらない、毒っぽかったり、どことなく寂しそうな要素を合わせ持つところが魅力的だと思います。今回のジャケットも、すぐにスっと腑に落ちるんですが、眺めていると想像力を掻き立てられるところがすごく気に入ってます。本末転倒ですが、このジャケットのイメージから曲が作れそうですね(笑)。大槻さんは他のイラスト作品を含め全て、ひとつひとつアナログで書いてるそうです。やっぱり実際に筆をとった作品だと、熱量がすごく伝わってくるな、と思います。

中村至宏さんは、ちょっと現実感の薄い空気みたいなものを表現するのが、すごく上手な方だと思ってます。今回は全体デザインとCDの中側・盤面のイラストを作成いただきました。こっちの勝手な想いですが、中側デザインの方がストレートにバンドとしての8mっぽいのかなと思います。少し男っぽいところがあるので。CalmLoopという音楽ユニットで活動もされている方で、どことなくバンドの勢いみたいなものに対する理解があるのかもしれません。

正直、お二人とも我々よりよっぽど世間的に実績のある方で、8m側は知識ゼロなのでいろいろと恐縮しながらのやり取りでした。絵そのものにストーリーとか裏テーマはありませんので、この辺は特に語れることがないですが、トータルではすごく良いデザインになったと思っています。お二人に作成していただけたことが豪華ですし、是非とも眺めて欲しいですね。

―― ミニアルバムの制作はどのようにして進められましたか?

なんだかんだでレコーディング開始からリリースまで2、3年くらいかかりました。と言っても半分以上の期間は、メンバー個人の事情で何もできてない時期です。途中で挫折しそうにもなりましたが、完成できてホッとしています。レコーディングを見切り発車で始めてしまったので、煮詰めきってない各楽器のフレーズをレコーディングしながら詰めていった箇所も多いです。効率が悪く、エンジニアの方には色々と迷惑をかけてしまいました。特にドラムの録音は、なかなか納得のいくできにならなくて苦労しましたね。

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―― インストという制約の中ではありますが、#1「shizuku」から#5「polo」までいずれも曲のタイプが違い、幅のある作品だという印象を受けます。この点は意識して制作されましたか? また、全体を通してこういう作品にしようというイメージ/コンセプトを持って制作されましたか?

聴いた人がどう思うか幅が生まれるのがインストゥルメンタルの良いところだと思っていて、人によって明るくも暗くも聴こえると良いなと思いますね。自分達としては8mの曲は、若干暗めの色合いが強い印象です。各曲の通奏低音として流れている雰囲気も孤独とか記憶のフィードバックとかそういったイメージが多め。ですが、比較的新しい「polo」については根底に流れるテーマはそのままで明るい曲になったので、そこで幅ができたかなと思いますね。明るく終われるアルバムになりました。

コンセプトが先にあったわけではないので、ある曲の中から自信のある順に曲を録音していってこの5曲になった形です。作っていくうちにイメージが固まっていきました。何年も前からやっている曲もあるので、今までの活動の集大成的な音源になれば!と思って作っていましたね。

――  楽曲制作の上でこだわりはございますか? また、8mとしての音楽的な特色はどこにあると自身では考えていますか?

新曲を作る時は、既存の曲に無い要素をなるべく入れようとは考えています。例えば比較的新しい「polo」はキーボードが入って最初に作った曲で、キーボードをメインに据えて作ってみた曲です。曲は大抵ギターの細野かドラムの水野が原案を持ってくるのですが、「ここは夕焼け」「ここは星空」とか、どんな情景を描くかって話をしながら作る事が多いです。ストーリーを考えたりしながら、その後の展開を作ってく事が多いですね。

インストゥルメンタルって言葉による情報が曲名くらいしかないので、言葉でイメージを限定されない特徴を活かし、色んな捉え方ができるような曲になるようにとは思っています。敢えて言えば色々な捉え方ができるのが特色になるかもしれません。

‐‐ ここでセルフライナーのような形で全曲解説していただけますか?

1. shizuku

かなり古くからある曲で、今回のアルバムだと1番古いかな。自分達としては代表曲です。演奏をしていて、とても気持ちが盛り上がる曲でもあります。曲名からして「水」のイメージかな。アルバム名も「in the dew」ですし、この曲ありきのアルバムかもしれないです。思い返せば8mは水のイメージが入っている曲が多いかも知れませんね。

2.slow dance

8mはライブが結構激しいので、ゆるやかな曲がないと自分達の体力がもたない、という事で作った曲です。なので原案タイトルは「箸休め」でした(笑)。比較的新しい曲です。後半部分が難産だった印象がありますね。というか8mは基本的に曲が難産なんですよ。困ったもんです。danceと言ってもいろんなdanceがあると思うので、それぞれどんなdanceかを思い描いて聴いてもらえたら嬉しいです。

3.untitled

これもかなり古い曲ですね。「shizuku」と同じ時期に作った曲です。8mの中ではスタンダードな曲です。ギターのアルペジオや複雑なドラム、気だるい雰囲気、後半の盛り上がり方なんかがとても自分達らしいなと思います。

4.resentiment

原案タイトルは「うるさい」で、とてもうるさい曲。演奏するとドッと疲れます(笑)。こういう曲があると「slow dance」みたいな曲が欲しくなるんですね。各楽器が動き回ってる上に音量も大きい曲なので、ライブだと何やってるかわかり辛いだろうなと思っていました。音源だとそういう部分が細かく聴けるのがいいですね。キーボードが入って、四人で演奏してた時よりもグッと良い曲になったなという印象です。鬱屈した気持ちみたいなものが存分に入ってる曲ですね。まさにルサンチマン、という感じです。曲を名付けたのは山田だったと思います。酔っ払っていたのかもしれません(笑)。

5.polo

物語がハッキリしてる曲ですね。ドラムの水野がほとんどの原案を作ってきました。キーボードをメインフレーズにして作って、最初はどうなるかと思ったんですが、意外とすんなり作りきれました。自分達の新しいカラーを出せたかなと思います。

―― ちなみに曲名やアルバム・タイトルはどのようにしてつけていますか?

名前が先に来る事はあまりないですね。できた曲に対してメンバーで案を出しあって決めています。
曲名が曲の聴き方を限定してしまう事もあると思いますので、慎重に名付けてるつもりですが、何の意味もない名前にして煙に巻いてしまう時もありますね。

―― アルバムからは最後を飾る#5「polo」のMusic Videoが公開されています。この曲を選んだ理由とMVの内容について教えて下さい。

1番新しい曲だったのと、原案を作った水野の頭の中でイメージが固まっていたのでそれを映像化しよう!という話でこの曲にしました。5曲の中では比較的とっつきやすい曲かなと思います。MVの内容については、あまり多くを語らない事にしておきます。内容の解釈についてもそれぞれの捉え方で楽しんで欲しいですね。ちなみにMV制作は数人の友人と手作りでした。初めてのMVだったのもあって、撮影も楽しかったですし、完成した時はうれしかったですね。曲の展開に併せてMVも前後半で別れているので、演奏しているメンバーが現れる後半まで是非見て欲しいです。

―― 最後に今後の予定を教えて下さい。

8mは昨年の11/23のレコ発ライヴが数年ぶりのステージだったので、これからライヴ活動を再開していきます。現在決まっているのは1/11の下北沢ERA、2/13の渋谷club乙、3/20の大阪・難波Rocketsが決まっています。平行して曲作りをしながら、次の音源の構想を練りたいと思っています。今度はあんまり期間を空けずにリリースしたいですね(笑)。音源を聞いて気に入ってくれた方は、月並みですが、ライブを見に来て頂ければ嬉しいです!

8m ‐ DISC GUIDE

in the dew

in the dew(2015)

 バンド結成から10年以上が経過し、初の全国流通音源となる5曲入り1stミニアルバム。toe以降のインストゥルメンタルという枕詞をやはり使うところだが、エモーショナルかつテクニカルな各楽器陣から感じる歌心とともに聴き手を魅了する。代表曲と自負する#1「shizuku」におけるツインギターの有機的な絡み、#4「resentiment」のマスマティックな攻撃性、キーボードをメインに据えて作り上げた#5「polo」のストーリー。ある風景とそこに投影される情緒などを切り取り、音で表現する彼等の真骨頂が本作に凝縮されています。

8m ‐ Information

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2016/01/11(月・祝)@下北沢ERA
下北沢ERA presents「MEAN TO YOU」

・8m
・Camping Trailer
・コハクノアカリ
・オウルモウル
・The White Waltz
・blum
・わさらぼ

OPEN/START 17:00 / 17:30
ADV/DOOR ¥2000 / ¥2300

※8mの出演予定は19:15です。

2/13(土)@渋谷club乙-kinoto-

sanoon proudly presents
「L’Heure Bleue」- sanoon 30th birthday special day1!!!-

・8m
・Teenagers Bloody KillinG
・Sams
・arrival art
・shepherd
・Plot Scraps
・ワタナベケン(ex.SHELTER)
・カナタ(広島)
・The Depth of Sad Dreaming
・太田哲宇
…and more

OPEN/START 未定
ADV/DOOR ¥2500 / ¥3000

3/20(日)@大阪・難波Rockets

本公演の詳細は後日発表予定。

8m ‐ Links

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OFFCIAL SITE : http://8mofficial.com/
Twitter : https://twitter.com/8m_info
Facebook : https://www.facebook.com/8mweb
Bandcamp : https://8mweb.bandcamp.com/

 

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