Aussitot Mort、重量感を伴うフランスのポストハードコア

 元APOLLO PROGRAMとAMANDA WOODWARDのメンバーが在籍するフランスの激情ハードコア・バンド。スラッジ/ポストメタルにも肉迫する重心の低さにフレンチ激情精神が結び付き、強靭なグルーヴと魂揺さぶる熱さで人々を魅了している。2008年12月にはheaven in her armsの招聘により、来日ツアーも実施しています。

 本記事では3作品について書いています。

目次

6 songs(2007)

   Amanda Woodward、Apollo Programのメンバーが在籍するフレンチ激情ハードコアバンドの編集盤。LEVEL PLANEからリリースされた4曲入り12インチ音源に加え、スプリット曲と未発表曲をプラスしたタイトル通りの6曲入り。

 音楽性としては、フレンチ激情の最先鋒のDaitroの焦燥感、envyライクな哀愁をまとう展開で編み込まれた楽曲で勝負しています。重厚なリフワークから、ポストロック的な拡がりをみせるフレーズ等を使い分けながら、激しい揺さぶりとドラマ性を湛えている。

 また疾走する場面もあるけれど、基本はどっしりとした重みとうねりを感じさせるもの。しっかりと哀愁~激情を楽曲に注入し、感情がダイレクトに伝わってくる絶叫もまた熱い。オープニングの#1から彼等の美学を感じさせるもので、重厚なギターとリズムの先導から美しい旋律と絶唱が聴き手の感情をもぎ取っていく。

 そしてキラーチューン#2ではDaitro先輩に触発されたような起伏の激しい混沌としたサウンドで畳みかけます。驚きなのは未発表曲の#6でポストロック的な哀愁をまとったインストからフレンチ激情の深淵になだれ込む6分半に痺れます。これは素直にかっこいいと唸ってしまうハードコア、それがAussitot Mort。

Montuenga(2008)

 日本のoto recordsからもリリースされた2ndアルバム(おそらく2nd)。08年12月~09年1月にはheaven in her arms招聘の元で来日公演も行っています。

 スラッジ/ポストメタルにも肉迫する重心の低さにフレンチ・ポストハードコア精神が結び付く。この2ndアルバムはさらに一歩踏み込んだ音造りで奥行きとスケールを拡げています。ストリングスやグロッケンまで用い、さらにポストロック的な意匠を強め、#4のようにアンビエントに寄った楽曲まで登場。そういった効能から曲調や展開に幅が拡がった分、当然のようにスケールの拡張に成功。もはやハードコアという枠組みでは括れない存在にまで成長を遂げている。

 その分、全体的にテンポは抑えられています。ですが、どっしりとしたサウンドからクライマックスに向けてカタルシスを得る感じは以前よりも強まっている。白眉なのは#1。地鳴りのようなグルーヴが這うように押し寄せ、哀愁を纏ったギターとストリングスが丁寧に鳴らされ、壮大なラストへと向かっていく。そのドラマティックな展開にはグイグイと五感を吸い寄せられてしまう。

 アンビエントにヒントを得た#4やグロッケンを多用した#6も新たな開拓へ向かっていることを示唆。新要素を見事に血肉化してみせたバンドの力量に感服します。より独創的に、より深遠に。Aussitot Mortの旅路はこれからも続く。

Nagykanizsa(2012)

   2011年にレコーディングされた全音源を収録した編集盤。heaven in her armsとのSPLIT曲2曲、ADAGIO830リリースの12″、『La ride du lion』収録2曲、新曲1曲の全5曲約35分を収録。

 バンドの核となる部分を磨き、さらなる深化を図っているのが如実に分かる内容。スラッジ勢をも打ち負かすほどのヘヴィなグルーヴに激しさと哀愁が上手くミックス。ミドルテンポでじっくりと進み、ドラマ性を最大限に生かしたつくりで聴き手の感情を飲みこんでいく。

 タメの効いたリズムから突如としてドライヴ感と爆発力を伴った猛烈な音塊を放出したり、アルペジオを中心とした哀愁のメロディの反復で涙腺を刺激したり、感情目いっぱい込めた叫びに胸が熱くなったり。その鉄槌は泣きと破壊力を高めています。

 #3ではスプリットで共演したheaven in her armsのkent氏が語りで参加。悲壮感漂う緊迫とした展開が日本語の語りを得ることで、日本人にはより深い部分に突き刺さってくる。地を揺るがす重低音とリリカルな旋律の向こう側でフレンチ激情精神が花開く#1は特に印象的。初期に比べると落ち着いた作風になっているとはいえるが、みせつけるかのような緻密かつダイナミックな表現は、わたしが彼等に惹かれる理由。

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