【アルバム紹介】Beach House、ドリームポップへの甘き誘い

 パリ生まれのボーカルのヴィクトリア・ルグラン、ボルチモア出身のアレックス・スカリーによる男女ドリームポップ・デュオ。唄、ギター、オルガンで優しく丹念に紡ぐ美しいドリームポップが世界各地で絶賛されている。2010年初頭にリリースされた『Teen Dream』は、Spinner誌で2010年間ベストアルバム第1位に選出されたのを始め、軒並み上位を獲得。2011年にはフジロック・フェスティヴァルに出演しました。

 本記事は3rd『Teen Dream』、4th『Bloom』の2作品について書いています。

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アルバム紹介

Teen Dream(2010)

 3rdアルバム。全10曲約48分収録。SUB POP移籍後では初となるフルアルバム。発売当初から各所で絶賛されていて、2010年のベストアルバムでも軒並み上位にランクインしている本作は、それを証明する儚くも甘い一級品のドリーム・ポップです。

 オルガンとギターを中心にミディアムテンポで丹念に織り上げるサウンド。そこには甘美な響きがありますが、ギターがサイケ調の色合いを強めたり、小鳥のさえずり等のサンプリングを交えたりもして、不思議な魅力をも醸し出しています。

 全体的にも淡いサイケ感の誘惑と陶酔、注がれるデリケートなメロディにも自然と引き込まれていく。先行シングルとなった#3「Norway」はシンセ&ギターによる白昼夢のようなサウンドに柔らかなヴォーカルが全編に渡って冴えわたります。

 そんな中、核になっているのは間違いなくヴィクトリアのヴォーカル。時に母性的に、時にひどく感情的に胸に迫る歌声が、たおやかに美しく世界観を仕上げている。フレンチ・ポップのような上品な軽やかさもまた良いアクセントとなっています。

 練られた重層的なハーモニーが幻想的という印象を残す中、Fleet Foxesのような多幸感を感じたりもします。優しい夢の世界へと誘う本作は、息を呑むほどの感動をもたしてくれる。

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Bloom(2012)

 4thアルバム。全10曲約60分収録。ビルボード7位を記録し、商業的な成功を収めた作品です。過去2年間のツアー中に得たアイデアをもとに書かれた楽曲たちを収録しており、#6のアウトロでは日本で録音したという蝉の鳴き声が入っていたりする。

 音楽としては前作からの延長線上。ミドルテンポの中で丁寧にメランコリックに織り上げられていく楽曲群は、微笑みかけるかのように優しく、しっとりと響きます。

 幻想的なギターとキーボードの音色の上を泳ぐ、包容力のあるヴォーカルはバンドの生命そのもの。その落ち着いたサウンド・デザインの中で甘いサイケ感をしのばせつつも、美しいハーモニーが包み込む。それでいて緻密なアレンジが鬱蒼とした森林から色鮮やかなお花畑までを脳内にイメージさせます。

 これぞビーチ・ハウスともいうべき優しくカラフルな世界が広がる#1に始まって、美しいメロディと相まって彼女の唄の持つ力にハッとする#2「Wild」、流麗なハーモニーがただただ心地よい#5「The Hours」など。らしい感性を貫きながら、琴線に触れてくる。

 そして物語は進み、どこかエキゾチックで官能的にも聴こえる#9「On The Sea」が胸を締め付け、幻想の世界へと連れ出す#10「Irene」で締めくくり。世界中のファンを魅了する材料のそろった素敵な作品。

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プレイリスト

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