【アルバム紹介】割礼、ゆれつづけるサイケデリック

 1983年に名古屋で結成された、サイケデリック・バンド。ニューウェイヴ~パンクを経て、スロウに怪しげに奏でられるその音楽は、現在ではサイケデリックの雄と評される。40年を数えるキャリアの中でオリジナルアルバムを7作発表しています。

 本記事は1stアルバム『PARADAISE K 』と5thアルバム『星を見る』について書いています。

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アルバム紹介

PARADAISE K(1989)

 1stアルバム。現実と幻想の狭間で揺れ動く感覚、どこか生気が抜けおちた低血圧な作品というのがまず聴いて印象に残りました。

 歯切れがよいのにどこか妖しげでねっとりとした感触をもったギターに、粘り気の強いヴォーカル、ゆれるように蠢くリズム。それらが連なり・重なり合いながらゆったりと摩訶不思議な螺旋を描いている。

 もたらされるのは独特の浮遊感による心地よさ、そして強烈なサイケデリックによる三半規管の陶酔と麻痺。のっぺりとまとわりつきながら底なし沼へとじわじわと引きずられていきます。

 メロディにしてもシニカルな感触をもっていて、世間とは距離を置いているように感じられるところがまた独特の味わいがある。どことなく危く不安定、けれどだからこそ妙に魅力的に感じてしまう。

 不穏な効果音を合図にいきなりスロウなサイケデリックチューン#1「きのこ」からもうクラクラ。視界すらも歪む幻惑とまどろみ。それがまたねっとりと湿っぽい。

 けれども、うってかわった焦燥感を募らせて前のめりに突っ走るパンク的な#2や#6といった曲では割礼の蒼さが感じられるのがおもしろい。本作を発表したころのインディーズ時代はパンク/ニューウェイヴからサイケへの移行期とのことですが、若さも老練さも備えた楽曲のバラエティは素直に楽しめます。

 スタジオ音源をさらにスロウにして呪術度と妖しさを倍加させた#10「ゲーペーウー (slow version)」、17分にも及ぶサイケ暗夜行路の旅#11「溺れぱなし (live)」と2010年のリマスター再発盤はボーナストラックも充実。

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星を見る(2010)

   6thアルバム。実に約7年ぶりとなるフルアルバムです。結成から27年が育育むーク・サイケデリックの意匠。90年代からライヴで演奏されており、音源化が待ち望まれていたという15分に及ぶ大曲#1「リボンの騎士」でスタートする説得力がまず半端じゃない。

 湿り気を帯びたサイケ・ギターが極端にスロウなリズムに共鳴して、ゆるやかな変相を遂げながら聴き手の意識をまさぐり、酩酊感を与えていく。少し密教的な感じがしますが、唄と演奏による空間の編み方が巧みで、時空に歪みをもたらすギターソロも印象的。

 気付けば、ねっとりとした空気と果てない闇の中を歩いているかのような感覚に陥る。「リボンの騎士」これ1曲で老かいな構成力を示しています。滋味深いギターが一層のサイケ感と酩酊感を召還してしまう11分越えの#5「ルシアル」にしても凄い。聴けば聴くほど深みにハマってしまいそうな効能がある。

 また、#2「マリブ」や#4「星をみる」といった曲では、負のベクトルを内包したギターがアングラっぽい雰囲気を先導する中で、Vo.宍戸氏の哀愁がこぼれるナイーヴな歌声に耳がいく。うねりのあるサウンドによって、現実を溶かしていくかのような感覚や憂いの感情をふくんだダークな世界観はもちろん強烈。

 しかし本作は、退廃的であるがゆえの美しさや人間らしい情緒的な部分にも凄く惹かれる部分がある。仄かに温かく微笑ましい雰囲気をつくっていく優美な#6「革命」で終末を迎えるのがまた何とも味わい深い。

 6曲約54分の覚醒盤!という言葉がとてもしっくりと感じられる作品であり、 割礼の音楽は27年間の時を経ても深い霧に覆われていることを証明している。

メインアーティスト:割礼
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