【アルバム紹介】陰陽座、妖怪ヘヴィメタルに魂を捧げ続けるバンド

 妖怪ヘヴィメタルに魂を捧げ続ける4人組バンド。1999年に大阪で結成されて黒猫(Vo)、瞬火(Ba,Vo)、招鬼(Gt)、狩姦(Gt)のラインナップで20年という長きを乗り越えて活動中。

 王道的なヘヴィメタルに日本古来の妖怪や物語を組み込んだ【妖怪ヘヴィメタル】というコンセプトの徹底。独自の音楽性はブレることなく、長きにわたってファンベースを築き上げています。

 2023年2月現在までにフルアルバム15枚をリリース。また全国都道府県ツアーを2度(3度目途中で一時活動休止)完遂するなど生粋のライヴバンドとしても知られます。

 本記事は現在、1stアルバム『鬼哭転生』~15thアルバム『龍凰童子』、ミニアルバム『封印廻濫』の全16作品について書いています。

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アルバム紹介

鬼哭転生(1999)

 1stアルバム。全10曲約49分収録。本作と次作がインディーズ作品となります。衣装は和装で統一。日本に古来から伝わる【妖怪】とオーソドックスな【ヘヴィメタル】にこだわりぬいたスタイルを初期から提示しています。

 ”この世に不思議なことなど何もない”というセリフからスタートする#2「眩暈坂」で広がる異世界。タイトル通りに#3「鬼」、#7「鬼斬忍法帖」、#8「百の鬼が夜を行く」と鬼たちのざわめきが聴こえてくる。

 伝統的なメタルサウンドと男女ツインヴォーカルを軸に組み立てられ、ツインリードやプログレッシヴなアプローチも盛り込まれます。歌詞は日本語詞を貫き、語りを入れている曲が多い。

 初期は人間椅子が引き合いに出される妖しさとおどろおどろしさを醸し出しており、とにかく”あくが強い”ですね。京極夏彦氏へのリスペクトに加え、また山田風太郎氏に敬意を表した忍法帖シリーズもデビュー作から登場し、それは現在まで続いている。

 ライヴで演奏頻度の高い前述の#7や#8、初期の名曲であるメロディアスな疾走メタル#9「陰陽師」を収録。バンドを司る瞬火兄上のメイン・コンポーザーとしての資質は初期から異彩を放っています。

 アルバムの最後はお祭りソングで締めるという約束事も示しており、バンドの原点を味わえる作品。

メインアーティスト:陰陽座
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百鬼繚乱(2000)

 2ndアルバム。全10曲約61分収録。妖怪ヘヴィメタルのコンセプトを体現した初期の傑作です。能パートから一気に雪崩れ込むスピードメタルの佳曲#1「式を駆る者」をあいさつ代わりに、1stからの飛躍を伺わせます。

 和と妖怪とメタルの滑らかな接合を施す中、さらに増したおどろおどろしさは襖の向こう側に魂を連れていき、一方でメジャー以降に通ずるメロディとキャッチーさが育まれている。

 特に#2「桜花の理」は疾走感の中に哀愁とドラマ性を備えており、男女ツインヴォーカルが桜のような儚い美しさを添えています。

 その上で怪奇な和のドゥーム#3「塗り壁」や#5「八咫烏」、招鬼氏のデス声を含めたトリプルVo体制と複雑な展開が繰り広げられる#7「帝図魔魁譚」、9分を超える中で黒猫さまの歌唱と演劇的表現が重苦しい痛さを伴う#9「奇子」等を収録。

 前作よりもバリエーションが広がった曲調からは妖怪たちがひしめきあい、主張し合う様子が目に浮かぶ。1stと3rdの中間というイメージが湧く玄人好みではありますが、妖怪ヘヴィメタルという屋号が最もしっくりくる作品です。

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煌神羅刹(2002)

 3rdアルバム。全10曲約48分収録。本作からキングレコードよりメジャー発売。陰陽座への入門作として一番手に挙げられる作品です。

 タイトルは”神と鬼、対極にいる様で同一の存在である二つを組み合わせて作った造語”とのこと(wikipedia参照)。強烈なメタル・チューン#1「羅刹」で幕開けを飾ることでいらぬ心配はさせません。

 妖怪度が薄まって、正統派ヘヴィメタルの要素が強まる。ブラック・サバス寄りだったのが、ジューダス・プリーストやアイアン・メイデンの方が近くなった印象。そして、メジャー対応を見越して個性を活かしつつキャッチーさの追求。

 デビュー・シングル#7「月に叢雲花に風」はその理想を体現したハードでメロディアスな疾走曲に仕上がっており、陰陽座の魅力を見事にプレゼンしています。

 プログレチックな展開やおどろおどろしさは控えめになりましたが、正統派なメタルサウンドと共にストレートな聴き心地良さが高まっています。

 そして本作で初めて”組曲”を導入。優しく包み込む「安達ケ原」からメタリックなリフの応酬「鬼哭啾々」まで一秒の油断も許さない#8~#9「黒塚」はそのバンドとして手応えを持っただろう名曲。

 メジャーに行こうがコンセプトはぶれず、前を見て進み続ける。陰陽座の姿勢は初期から一貫しています。

メインアーティスト:陰陽座
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封印廻濫(2002)

 1stミニアルバム。全8曲約37分収録。入手困難であったシングルやオムニバスに収録されていた6曲に2つの新曲「空蝉忍法帖」「土蜘蛛忌譚」を加え、全曲リ・レコーディングしたミニアルバムです。

 冒頭を飾る#1「火車の轍」からエンジン全開といった感じの激しいサウンドと勢いで畳み掛けてきます。続けざまの#2「百目鬼」に#3「窮奇」と頭3曲のなりふり構わぬ突進具合は、寄せ集めだからできることでしょうか。

 後半の#7「侵食輪廻」も加え、ダークでメタリックな要素がしっかりと表現されている。一方で新曲となる#4「空蝉忍法帖」はそれらと中和するようにキャッチーな歌メロが武器。

 2つ目の新曲#5「土蜘蛛忌譚」はドゥーム・パートを序盤と終盤に置き、中は黒猫さまをメインに聴かせたり、いきなり疾走したりと8分30秒の中でかなり展開があります。

 伝統と共に弾けるお祭りソング#6「蠎蛇万歳」やしっとりとしたバラード#8「月姫」も用意。バンド初期の空気感が伝わる好盤となっています。

メインアーティスト:陰陽座
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鳳翼麟瞳(2003)

 4thアルバム。全10曲約48分収録。瞬火兄上が敬愛するジューダス・プリーストの「The Hellion」~「Electric Eye」のオマージュ#1「焔乃鳥」~#2「鳳翼天翔」で幕を開ける本作。

 タイトルは鳳凰と麒麟の二体の神獣の名称を合わせて作られた造語でテーマは”飛翔”。ジャケットが示すように黒猫さまの歌唱をメインに据え、メタル的矜持は譲らずにポピュラリティーの獲得を目指した印象です。

 ポップスとしての機能性・親しみやすさをわかりやすく発揮。幻想的な美しさをさらすシングル曲#4「妖花忍法帖」、メロディアス・ハード歌謡曲#8 「面影」、三柴理が参加してのピアノ伴奏のみの黒猫さまバラード#9「星の宿り」と魅力たっぷり。

 妖怪度はさらに薄まったとはいえ、10分を超えるゴシック色強めのプログレ#5「鵺」で暗黒に染まる新機軸あり。そして#10「舞いあがる」のN〇K E〇レに使われてそう感は異常。

 前作をさらにキャッチーに昇華し、誰も拒まずに温かく受け入れてくれます。

メインアーティスト:陰陽座
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夢幻泡影(2004)

 5thアルバム。全10曲約47分収録。わたしは本作から陰陽座に入ったことが影響して一番好きな作品ですね。タイトルはもののはかなさを表す言葉の喩え。

 舞頸や輪入道、煙々羅と妖怪は登場してもインディーズ期ほど濃く反映されていません。本作ではむしろ”和”の要素が強まり、ヘヴィメタル度も高まっています。

 オープニングは#1「夢幻」~#2「邪魅の抱擁」という王道を貫く疾走メタル・チューン。ですが、サビでそれぞれが別パートを歌うツインヴォーカルが新鮮味とエネルギーを生み出している。

 曲調がさらにバラエティ豊かになっている要因は、瞬火兄上の歌唱パートが増えたこと。兄上のメイン歌唱によるバラード#7「煙々羅」は象徴的。またシリアスな風情が強まり、装いがシックなことがメタル的硬質度の高さに繋がっている。

 アイアン・メイデン風のリフでツインギターが躍動するシングル曲#3「睡」、イン・フレイムスを思わせるメロデス節が炸裂する#5「舞頚」、演歌プログレメタルに開眼した#6「輪入道」、黒猫さまによるヒーリング・バラード#9「夢虫」と聴きどころは多い。

 先人達にリスペクトを掲げつつ、初期からのコンセプトを追求してきたことが実を結んだ1作。

メインアーティスト:陰陽座
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臥龍點睛(2005)

 6thアルバム。全12曲約63分収録。タイトルにあるようにコンセプトは龍。陰陽座の最大のヒット曲にして代表曲#4「甲賀忍法帖」は本作に入っています。

 また2005年のNHK大河ドラマが「義経」が影響したのかはわかりませんが、前年に3カ月連続シングルとしてリリースされた#9~#11組曲「義経」もフル収録。

 曲調はブリティッシュよりもアメリカンな印象が強いのは、珍しくミドルテンポのスタートとなる#1「靂」の影響でしょうか。全体的にも硬派なメタルというより平安ハードポップ的なニュアンスが強め。

 LUNA SEAを思わせる透明感と切なさが揺れ動く#5「不知火」やムード歌謡的な#7「月花」といった曲を含み、曲調のバリエーションは増えています。

 そんな中で一撃必殺と呼べる曲もあり、#8「蛟龍の巫女」はバンド屈指のメロスピ曲として君臨。曲の圧倒的な完成度が前提にあるとはいえ、サブスクでこの曲の再生回数が高いのはパチスロ『バジリスク絆』の影響が大きい。

 本作は妖怪度、メタル度ともに薄めと指摘されるために賛否が分かれていますが、全作中でキャッチーな部類に入るのでライト層に薦めたいですね。

メインアーティスト:陰陽座
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魔王戴天(2007)

 7thアルバム。全10曲約43分収録。タイトルの魔王は”織田信長”を指していますが、信長をテーマにしたものではないとのこと。

 「もはや “最高傑作” という言葉すら生ぬるい!」 というキャッチコピーが付けられたことも話題で、陰陽座の作品では1,2を争うほど激しい部類に入ります。

 降臨した魔王の支配力と容赦の無いサウンドにひざまずく#2「魔王」を始め、直球にメタルをぶつけてくる#4「不俱戴天」、「悪路王」並に攻撃と速度に特化した#8「骸」と強烈な曲が置かれています。スラッシュメタル寄りのスピードと切れ味が重視し、泣かぬなら殺してみようホトトギス的な残虐さが垣間見える。

 それでも、黒猫さまがメイン歌唱する忍法帖シリーズで瞬火兄上が歌う掟破りをした#5「覇道忍法帖」やファンクなお祭りソングの#6「ひょうすべ」など潤滑油は設けています。

 ラストの#10「生きることと見つけたり」は爽快な曲調で、SIAM SHADEのメロコア風楽曲に近い感触を覚えたり。”戦国メタル、アグレッシヴ一刀両断”。激しい陰陽座を知りたい方には本作がオススメです。

メインアーティスト:陰陽座
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魑魅魍魎(2008)

 8thアルバム。全12曲約58分収録。”陰陽座はこれまで妖怪というものを通して人間の心を歌ってきたわけですけど、それを、これ以上あり得ないような次元で投影させた作品にしたかった”とのこと(BARKSのインタビューより)。

 前作に比べると初聴のインパクトこそ劣りますが、じわじわと聴き手を引きずり込んでくれます。ずっしりとしたミドルテンポの#1「酒呑童子」をオープニングに、シングル#4「紅葉」など黒猫さまの魅力的な歌唱を存分に生かした密な曲作りが目立ちます。

 変幻自在の表現力はさすがで、怒涛のスラッシュメタルから幽玄的な美を醸しだすプログレにキャッチーな疾走曲、ベタなメタル・ハードロック、涙を誘うバラード、元気を分かち合うお祭ソングとみずみずしくバラエティに富んでいます。

 12の楽曲を通じて多彩な切り口から妖怪たちのドラマを堪能できる『魑魅魍魎』のタイトル通りの作品。安珍・清姫伝説をベースに物語を編み上げた10分超の#10「道成寺蛇ノ獄」が白眉で、そのままバラードの#11「鎮魂の歌」に移る構成も見事。

 いつも通りの締めであるお祭ソング#12「にょろにょろ」まで陰陽座らしい工夫がなされ、初めてのオリコンTOP10入り(初登場9位)を果たした作品になりました。

メインアーティスト:陰陽座
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金剛九尾(2009)

 9thアルバム。全12曲約61分収録。2009年9月9日に発表する9枚目でタイトルも九にちなむ。ドラ息子の斗羅氏がサポート・ドラマーに戻っての4人編成で制作(ただし、彼はこの時期のレコーディングやライブに参加)。

 LUNA SEAを思わせる壮大なミディアムナンバー#1「獏」をスタート地点に、本作は『臥龍點睛』のようなキャッチーさがあります。

 ドラマティックな泣きの部分が引き立った#4「小袖の手」、両A面シングルとして発表された#7「相剋」~#8「慟哭」辺りもメランコリック。ツインヴォーカルの良さや聴きやすさを引き出している格好で、独特の奥ゆかしさや上品さのようなものも伝わります。

 もちろん王道といえる#2「蒼き独眼」や切れ味の良い#5「孔雀忍法帖」といったメタル・チューンは健在だし、哀愁漂わせるブルージーな#6「挽歌」も効果的な働き。

 最強の妖怪である”九尾の狐伝説”をモチーフにした20分長の#9~#11の組曲『九尾』は本作の象徴。ソリッドなプログレ歌ものからラストではスラッシュメタルへ遷移するという経験に裏打ちされた曲で聴き応えはバッチリです。

 ヘヴィメタルに留まらない上積みと集積による陰陽座というバンドの強さを感じさせてくれる一枚。

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鬼子母神(2011)

 10thアルバム。全12曲約61分収録。“鬼子母神伝説”をベースに、瞬火兄上が結成当初から構想12年の末に書き上げた脚本『絶界の鬼子母神』を原作とした初のコンセプト・アルバム。

 初めてダウンチューニングを採用し、シンセやメロトロンを活用。また忍法帖シリーズは収録されておらず、お祭りソングは入っていても最終曲ではありません。コンセプトとトータリティの両立へ徹底的なこだわりが感じられます。

 とはいえ組曲「鬼子母神」は長編1曲を12曲に分割したわけではなく、それぞれが独立した曲として成立。その連なりで物語が展開していく。”母性”を大テーマとして、人間の善悪・業が描かれていきます。

 曲調自体は、これまでの陰陽座から逸脱していません。正統派メタルからスラッシュ、モダンロック、バラード、お祭りソングまで取りそろえています。ですが、全体的にシリアスで重厚なムードが強く出ているのは特徴と言えます。

 これまでに9枚の作品を重ねてきたからこそ挑めたコンセプト作であり、本作はまさに表現者としての極み。バンドとして集大成にすべく並々ならぬ情熱が歌声や演奏から十二分に伝わってきます。

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風神界逅(2014)

 11thアルバム。全12曲約57分収録。『雷神創世』と2作同時発売。風神・雷神という対にテーマを扱っているものの、それぞれ単独作として制作されています。

 本作は”風”をキーワードに全曲レギュラー・チューニングで制作。冒険の書をスタートするようなRPG風SE#1「風神」を終えると、陰陽座の印籠を振りかざす疾走メタル・チューン#2「風神」が一陣の風のように吹き荒れます。

 続く#3「然れど偽りの送り火」や#6「飆」、#11「故に其の疾きこと風の如く」といった曲で顕著ですが、後述する『雷神創生』と比べるとメロディアスで疾走感の強いメタル・サウンドが多め。

 陰陽座というバンドのイメージに近い仕上がりです。それでも、瞬火兄上が”優しいそよ風から凶悪な暴風まで”と語る通りに曲のバリエーションは広い。

 #5「蛇蠱」と#9「眼指」のように黒猫さまの歌唱を心置きなく堪能できる歌謡チューンがあり、#10「雲は龍に舞い、風は鳳に歌う」では壮大にして繊細なシンフォニック・サウンドを繰り広げます。

 ラストには#12「春爛漫に式の舞う也」をストレートにファンへの感謝を歌う。『鬼子母神』を超えて新たな世界に向かっていこうとする陰陽座が刻み込まれた作品となっています。瞬火兄上による全曲解説はこちら

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雷神創世(2014)

 12thアルバム。全12曲約62分収録。『風神界逅』と2作同時発売でこちらが12枚目。”雷”をキーワードに全曲ダウン・チューニングで制作されています。

 どっしりとメタリックな印象は本作の方が強い。オープニングとなる#1「雷神」がヘヴィなミドルテンポの楽曲で余計にその印象を強めています。

 スピーディかつメロディアスな曲は『風神界逅』の方が多いですが、それぞれが単独作というように陰陽座らしい曲調の広さは担保。

 過去曲で言えば「悪路王」に匹敵するアグレッシヴさを放つ#4「人首丸」、ブルージーかつファンキーな#7「天狗笑い」、”累ヶ淵”の物語を題材にした13分に及ぶ濃厚で重たいドラマ#9「累」などバラエティ面では『雷神創生』に軍配が上がります。

 加えて妖怪重金属度も上。#5「夜歩き骨牡丹」なんてどこの演歌みたいな黒猫さまも堪能できますし、陰陽座としての王道を貫きつつ深化を示した2作同時発売といえます。瞬火兄上による全曲解説はこちら

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迦陵頻伽(2016)

 13thアルバム。全13曲約61分収録。迦陵頻伽(がりょうびんが)とは、”この世のものとは思われない美しい姿と声を持つ半人半鳥の生物”のこと。

 それは陰陽座で言うならば、もちろんヴォーカルの黒猫さま。冒頭を飾るキャリア初の表題曲#1「迦陵頻伽」から細部は全体を説明するかの如しで、黒猫歌謡祭と呼べそうなぐらいに彼女の歌にフォーカスしています。

 様々な曲調・アプローチによって黒猫さんの表現力を最大限に引き出しています。リリック・ビデオが公開されている和風ハード&ポップチューン#4「刃」、ピアノ伴奏を中心とした上質なバラード#11「絡新婦」などがその筆頭。

 また、いつも以上にピアノやキーボードの活躍が多くて、和のフレーズやシンフォニックな味付けが匠の技。さらに曲によっては初となる7弦ギター&5弦ベースを導入。

 妖怪と手を取り合いながらオンリーワンのメタル街道を歩み続け、自身の作風を深化させてきましたが、本作はキャッチーさとメロディの充実によって一層コクが出てきたかなと感じます。入門編といえるほどに聴きやすくバランスがいい。

 特にインパクトがあったのは#12「愛する者よ、死に候え」。バンドを一躍有名に押し上げた代表曲「甲賀忍法帖」との関連性を持った楽曲で、ドラマティックなストーリー展開、歌謡性抜群の男女ツインヴォーカルの情緒に心打たれます。

 ちなみに13枚目にして、当時のオリコン最高位を更新する7位を記録。継続は力なりということ、そして彼等のファンベースが強固であることが伺えますね。瞬火兄上による全曲解説がこちら

覇道明王(2018)

 14thアルバム。全10曲約54分収録。前作『迦陵頻伽』では黒猫さまの麗しきヴォーカルをバラエティに富む楽曲群とともにお送りする、しなやかさと麗しさを持った作品でした。

 その反動から”剛なるヘヴィメタル”としての力強さと勢いに特化したのが本作。同じ作風で言えば7th『魔王戴天』を思い返しますが、当時から10年を超える経験値と作品を重ねたことで進化/深化をはっきりと感じさせます。

 ダウン・チューニングを採用した剛健さ、作品を通しての速遅コントロール、決して聴き手を置き去りにしないメロディの配分。全10曲収録というかつての基本に立ち返り、バラードはあえて無し。剛という言葉とともに”潔さ”もまた本作を象徴しています。

 #1「覇王」から#2「覇邪の封印」で重厚かつ流麗なメタル・サウンドを轟かせ、バジリスクと蜜月が関係続く#4「桜花忍法帖」のキャッチーさもアクセントとしてこの上なく、明王のご機嫌を取る。

 豪快にねじ伏せようとする中でも爽快な聴き心地を与える瞬火氏の計算高さ。それにラスト#10「無礼講」に至るまで、一気に聴かせる勢いが最後まで貫かれているのも特筆すべき点でしょう。

 陰陽座は覇道を歩み続ける。その信念をなお新たにした強力作。陰陽座の中でヘヴィな作品を聴いてみたい方にオススメ。瞬火兄上による全曲解説はこちら

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龍凰童子(2023)

 15thアルバム。全15曲約71分収録。黒猫さまの療養から4年半ぶりの発表は過去最長。また全15曲収録と単独作としては過去最多曲数。

 タイトルは瞬火兄上いわく「陰陽座の家紋のうしろに描かれている“龍”と“鳳凰”に、強力な鬼を示す“童子”を加えた”龍鳳童子”は、陰陽座を名乗っているのとほぼ同じ」とのこと。

 セルフタイトルゆえのオールスター感謝祭というべき楽曲群の豊かさは、陰陽座が24年歩んできた妖怪ヘヴィメタル道の総決算といもいうべき内容。

 #3「鳳凰の柩」や#5「茨木童子」は勇壮に突き進む新たな代表曲として君臨するだろうし、#7「滑瓢」にて禍々しいグルーヴに沈めつつサビでは弾ける歌メロを配し、#10「白峯」ではたおやかなバラードが一転して目まぐるしい展開が続く11分の組曲式大曲を堪能できます。

 結成時からの己の武器を研ぎ澄まし、経年と共に武器を増やしながら磨き込み、貫き続けるヘヴィメタル愛とともに日本古来の妖怪や風習を歌い上げる。それが陰陽座にとっての覇道であり、曲げられない信念。

 #4「大いなる闊歩」や#12「覚悟」の詞にその想いは表れ、 “ときめき”と読む#15「心悸」ではアニソンに通ずる軽やかさで生命の喜びを歌う。

 これこそが陰陽座というものが『龍凰童子』には余すことなく詰めこまれており、歴史を凝縮しながらも新規ファンの魂を揺さぶる器量を持った秀作に仕上がっています。

どれを聴く?

読んでいたら陰陽座に興味を持ったけど、どれから聴けばいいの?

入りやすい・聴きやすい3作品を挙げてみました。

陰陽座・入門オススメ

・04th『鳳翼麟瞳』:「焔ノ鳥」~「鳳翼天翔」で誰しもを陰陽座の世界に連れていく
・13th『迦陵頻伽』:黒猫さまの歌唱を全面に押し出し、キャッチーでバラエティに富む
・15th『龍凰童子』:セルフタイトルを冠すとともにの歴史の総決算となる秀作

ぜひ、陰陽座の音楽に魂を揺さぶられてみてください。

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瞬火兄上による陰陽座入門プレイリスト

お読みいただきありがとうございました!
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